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~鍼灸専門学校の課題を入学希望段階から考える~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 東京医療専門学校学校校舎
東京医療専門学校学校校舎

 

先週の日曜日に行われた鍼灸業界のイベント「ハリトヒト。マーケット」。まだこの話題を取りあげてしまいます。くどいのですがしばしお付き合いを。

 

関東鍼灸専門学校副校長内原先生のパートで司会の鶴田先生から会場に向けて

<あなたが鍼灸学校の経営者(理事長)になったら、どんな学校を作りますか?>

という質問がありました。


 

 

先週の日曜日に行われた鍼灸業界のイベント「ハリトヒト。マーケット」。まだこの話題を取りあげてしまいます。くどいのですがしばしお付き合いを。

関東鍼灸専門学校副校長内原先生のパートで司会の鶴田先生から会場に向けてあなたが鍼灸学校の経営者(理事長)になったら、どんな学校を作りますか?という質問がありました。 この場で鍼灸専門学校に関する活発な意見が交わされました。そこを議事録としての意味も持たせてブログにしたのですが、ここに私自身の発言(意見)を入れていませんでした。書いていてあまりに長くなってしまったので省略したのです。ここで改めて私の考えを書きます。

 

鍼灸専門学校をどうするのかよりも入学する前の段階で動いていかないと理想(と思われる)の学校にはならないということが一番言いたいことです。

鍼灸専門学校では
臨床に出て使い物になる鍼灸師を作る(いわゆる「食っていける鍼灸師」)
国家試験に合格できるようにする
という2つの方向性で相反することが多いのです。

 

前段では、鍼灸専門学校を卒業しただけではが足りない・経営能力がない、など実務に耐えられる人材を作らないと現場に出ることができない、という開業鍼灸師・勤務鍼灸師の意見が主だと言えます
後段はそもそも国家試験に合格しなければスタートラインに立てないのだから、それが鍼灸専門学校の最低限の義務である、という学校側・教員側の意見になりがちです。

 

卒業してしまえば、自らの技術でお金を稼いで生活するということですから「食っているようにする」というのは切実な問題です。国家試験対策ばかりして4択問題が解けるようにしても現場では役に立たないという(鍼灸師免許の国家試験では実技審査が無く、4問択一の座学試験のみ。実技は各学校が定められたカリキュラムをこなすように一任されている。ただしこのブログを書いている段階で、今後変更する可能性はある)。しかし学校側の実情として、国家試験合格率が低ければ生徒が集まらないですし、学校を管轄する文部科学省からも目をつけられます。そして生徒数に合わせた専任教員の数が決まっているので、生徒数が少なくなれば教員が削減されて、最悪閉校になります(実際に閉校する学校は近年増えています)。学校側としても存続するためには死活問題となるのです。

 

臨床側の要望と学校側の現実が対立するというのが大きな議論になるのです。
学校側としても、生徒からは
・国家試験対策をもっとやってほしい
・実力がつくように技術を学びたい
・経営的な手法(マーケティングや流行分野の技術)を知りたい
など要望が多様であるため、良かれと思ってやったとしても必ず誰かの不満が出てしまうという。何より、昨年(平成30年度)からのカリキュラム改訂により必須授業時間が増えて追加で授業を行う余裕が時間的にも人員的にも厳しくなっているのです。そのような条件を踏まえて私の意見です。

 

まず相対する要望があるならば入学時点で選べるようにしたらどうかと。最近知り合いになった鍼灸師さんの母校が兵庫鍼灸専門学校でした。失礼ながらそれまで知らなかったのですが、こちらのコース制度が興味深いのです。臨床に必要な基礎力を養成するAコース(国家資格を取得したい人、鍼灸院で働きたい人向け)と、卒業してすぐに使える臨床力を養成するBコース(開業したい人、専門性を磨きたい人向け)に入学時点で分けて募集しているのです。比較するとAコースの方が、授業時間が少なく学費も安くなっています。このように最初に入り口を分けることにより、入学時点で選択させることになります。言い換えると入学前に本人の方針を決めることになり、覚悟も問われると言えるでしょう。比較検討する材料が提示されています。

 

さて、私が学生だった頃はどうだったのか書いておきます。今から15年くらい前の頃。東京医療専門学校Ⅰ部鍼灸マッサージ科に在籍していました。この当時の母校は「鍼灸界の東大」と言われ国家試験合格率、合格者数、試験点数の3つで全国1位を狙うガチガチの国家試験偏重でした。当時の教員や講師の言い分は「勉強を徹底的に教える。臨床の実力は自分でどうにかするように。」という感じでした。鍼灸専門学校は職業訓練校なのだから技術を磨くのは自ら率先して行うのは当たり前という。私が在学していた頃は水曜日のみ午後に授業があり、他の平日は午前中で授業が終わり。土日祝日は休みで、夏休みも結構長くありました。空いた時間で各自頑張りなさい、学費を稼ぎなさいという風潮でした。

ある別の学校では対照的です。他校なので名前は伏せますが、そこは臨床能力重視の学校でした。鍼灸実技のレベルが高く、より実践的な授業を行うので有名でした。反対に国家試験対策はほぼ行わずに学生任せ。国家試験などきちんと勉強していれば受かるのだから学校が面倒みることはしない。それよりも即戦力となる実力をつけさせることをモットーにする。私の母校とは対照的です。

 

どちらが優れているかという議論はさておき、これらのやり方が通用したのは入学希望者の数が十分にあった時代の話でした。私が入学した時の東京医療専門学校Ⅰ部鍼灸マッサージ科は倍率が20倍だったと後に聞かされました。つまり入学時点で相当な篩(ふるい)にかけているのです。はっきり言えば、黙っていても勉強をするし技術を磨く(であろう)人材が入学していた対照的だと挙げた他校も同じような状況だったと思いますから、入る時点でやる気のある覚悟をもった学生が多かったと推測します(もちろん、全員が全員きちんとした学生だとは言いませんが)。学生の質が担保されている状況で教える学校側は強気でいけます

今はどの学校もほぼ定員割れか定員ギリギリくらいになっています。一クラス5名程度という学校もあるのです。だいたい倍率3倍ないと生徒の質が保てないという話もありますが、今はどの学校もぜひとも入ってくださいという状況です。学校側からすると売り手市場と買い手市場が逆転したと言えます。そうではない学校もあるでしょうが。

 

そうなると手取り足取り指導しないといけない学生が増えてきて基礎学習に力を入れなければならなくなるわけです。当時の東京医療専門学校は4年制大学を卒業し、社会人経験がある学生が多くいたので、「勉強の仕方が分からない」だとか「社会人になる不安がある」といった問題がありませんでした。高校からストレートに進学してきた生徒もいましたが、それ以上にたくさんいる社会人経験者の同級生がサポートできました。それが、生徒の多くが高校の推薦入試が入学すると上で挙げた問題に直面します。また国家試験合格率が私の頃は高かったのです。統計的にも一番新卒を出した時期です。真面目に勉強していればそうそう落ちることはありませんでした。ところが年々合格率は低下していき、前々回の国家試験は過去最低の合格率となりました。なめてかかると合格できない状態です。自ずと学校側は国家試験対策に力を入れないといけなくなっています。このような現状で「臨床で通用する実力」、「食っていける能力」まで手がまわすのが難しいことでしょう。

 

そこで私が考えるのは入学前からきちんと進路相談をする場面を作ることですどの学校も学校説明会やオープンキャンパスを行っているでしょうが、勧誘目的だけではなくその人の人生を一緒に考えるくらいのものにしないといけません。後々生徒も学校側も苦しまないように。必死に生徒集めを強いられる学校ですと、美辞麗句を重ねて高校生やその親御さんを勧誘するところもあるそうです。その場合、入学前の話と入学後の学校の授業内容に大きな隔たりができて、学校に対する不信不満が生まれると言います。例え国家試験をパスしても現場に出てから上手くいかずに業界を去ってしまうケースがあるのは確かです。このような事例があることを踏まえた上で「ハリトヒト。マーケット」で松田先生は「鍼灸専門学校のシステムは詐欺」、「誰もが鍼灸師になれると思うのは間違い」といった発言に繋がっていると私は推測します。

したがって鍼灸師に興味があるという時点できちんとカウンセリングをして本人がやりたいこと、業界環境の現実、費用や勉強内容まで吟味して、本当に入学した方がいいのかを精査する。その上で専門学校選びも助言した方がよいのです。


活躍する卒業生は専門学校にとって「生きた広告塔」です。あの先生と同じ学校に入れば、と思わせることができます。反対に国家試験には合格したものの目が出なくて廃業するとなると、高い学費を払って通った専門学校が無駄になり、それこそ「専門学校は詐欺」と評判がたちかねません。入学前の段階からしっかりと進路相談をして情報収集できるシステムがあることが理想です。

 

そう理想論です

 

実際に各専門学校レベルで行うのは無理があるでしょう。学校側に余裕があったときは、「鍼灸師に向かないからやめた方がいい」だとか、「将来やりたいことを考えたらうちではなく別の○○という学校の方が向いているね」とはっきりと助言できたでしょう。これは生徒が足りないところでは無理があると思います。また一人一人親身に相談に乗っている人的資源も時間もないでしょう。

その絵に描いた餅をなるべく実現できるように個人的に活動しています。私はリラクゼーション業界も鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、更には鍼灸マッサージ教員養成科まで体験しているので進路相談には適した方だと自負しています。実際にこれまで何件か問い合わせがありましたし、度重なるやり取りの末、学校選びから相談をして入学された方もいます。対面して相談したいということで予約を取って来院された方も。鍼灸専門学校がカバーできないところを在野の開業鍼灸師がサポートする仕組みができればいいなと考えています。結果的に業界のプラスになると期待できるので。

 

鍼灸専門学校の課題。入学希望者と学校側のマッチングが上手くできていないことが前提にあると考えています。また入学希望者の段階でしっかり対応できれば入学後、卒業後の問題はいくらか軽減できるのではないでしょうか。専門学校側に変革を押し付けるのではなく、臨床現場の鍼灸師にも手助けしていけばよい方向にいくのではないでしょうか。

 

甲野 功

 

 


このような現状で「臨床で通用する実力」、「食っていける能力」まで手がまわすのが難しいことでしょう。

 

そこで私が考えるのは入学前からきちんと進路相談をする場面を作ることです

どの学校も学校説明会やオープンキャンパスを行っているでしょうが、勧誘目的だけではなくその人の人生を一緒に考えるくらいのものにしないといけません。後々生徒も学校側も苦しまないように。

 

必死に生徒集めを強いられる学校ですと、美辞麗句を重ねて高校生やその親御さんを勧誘するところもあるそうです。その場合、入学前の話と入学後の学校の授業内容に大きな隔たりができて、学校に対する不信不満が生まれると言います。例え国家試験をパスしても現場に出てから上手くいかずに業界を去ってしまうケースがあるのは確かです。


このような事例があることを踏まえた上で「ハリトヒト。マーケット」で松田先生は「鍼灸専門学校のシステムは詐欺」、「誰もが鍼灸師になれると思うのは間違い」といった発言に繋がっていると私は推測します。

 

したがって鍼灸師に興味があるという時点できちんとカウンセリングをして本人がやりたいこと、業界環境の現実、費用や勉強内容まで吟味して、本当に入学した方がいいのかを精査する。その上で専門学校選びも助言した方がよいのです。


活躍する卒業生は専門学校にとって「生きた広告塔」です。あの先生と同じ学校に入れば、と思わせることができます。反対に国家試験には合格したものの目が出なくて廃業するとなると、高い学費を払って通った専門学校が無駄になり、それこそ「専門学校は詐欺」と評判がたちかねません。入学前の段階からしっかりと進路相談をして情報収集できるシステムがあることが理想です。

 

そう理想論です

 

実際に各専門学校レベルで行うのは無理があるでしょう。学校側に余裕があったときは、「鍼灸師に向かないからやめた方がいい」だとか、「将来やりたいことを考えたらうちではなく別の○○という学校の方が向いているね」とはっきりと助言できたでしょう。これは生徒が足りないところでは無理があると思います。また一人一人親身に相談に乗っている人的資源も時間もないでしょう。

 

その絵に描いた餅をなるべく実現できるように個人的に活動しています。
私はリラクゼーション業界も鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、更には鍼灸マッサージ教員養成科まで体験しているので進路相談には適した方だと自負しています。実際にこれまで何件か問い合わせがありましたし、度重なるやり取りの末、学校選びから相談をして入学された方もいます。対面して相談したいということで予約を取って来院された方も。


鍼灸専門学校がカバーできないところを在野の開業鍼灸師がサポートする仕組みができればいいなと考えています。結果的に業界のプラスになると期待できるので。

 

 

鍼灸専門学校の課題。
入学希望者と学校側のマッチングが上手くできていないことが前提にあると考えています。また入学希望者の段階でしっかり対応できれば入学後、卒業後の問題はいくらか軽減できるのではないでしょうか。専門学校側に変革を押し付けるのではなく、臨床現場の鍼灸師にも手助けしていけばよい方向にいくのではないでしょうか。

 

甲野 功

 

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