開院時間
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11月18日に朝日新聞デジタルで以下のような記事が出ました。
「やせプログラム」「全国1位」根拠なし 接骨院MJG 森治文 2019年11月18日19時34分
以下本文
『
全国で接骨院を展開する「MJG」(東京都、木崎優太社長)が自社ホームページで説明した「やせプログラム」の施術効果などに根拠がないとして、埼玉県は18日、景品表示法違反(優良誤認)で違反の事実を公表し、同社に取り消すよう命じた。朝日新聞の取材にMJGは「深く反省し、指摘通りに修正する」などと話している。
県によると、MJGは少なくとも昨年11月から今年10月にかけ、「やせプログラム」を受ければ食事指導なしで体脂肪の減少と全身の引き締め効果が得られるかのようにホームページでPR。県が裏付けの資料を求めたが、合理的な根拠を示すものは得られなかった。患者や医師の評価が「全国1位」との宣伝も、客観的な調査に基づいていなかった。このため県は、事実に反して優良と誤認させ、不当に顧客を誘引したと認定した。
MJGは、人気女性アイドルをイメージキャラクターに起用し、ホームページによると、首都圏を中心に177院を展開している。一方、埼玉県の消費生活支援センターなどには同社の高額な施術メニューの解約などの相談が54件寄せられている。(森治文)
』
以上本文終わり
措置命令の対象になったのは株式会社MJGという整骨院グループ。業界でも最大手に入る企業です。
株式会社MJG
●景品表示法とは
ここで景品表示法について軽く説明しましょう。景品表示法とは正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といって不当表示や不当景品から一般消費者の利益を保護するための法律と説明されます(消費者庁資料より)。簡素に言えば誇大広告はいけませんよ、というものですね。
簡素に言えば誇大広告はいけませんよ、というものですね。不当表示があれば罰するという法律でその「表示」には広告、チラシ、ホームページ、メール、看板、CM、セールストークなどあらゆるものが対象になります。この法律において具体的な用語として「優良誤認表示」と「有利誤認表示」があります。優良誤認表示とは商品・サービスの品質、 規格、その他の内容についての不当表示であり、有利誤認表示とは商品・サービスの価格、 その他の取引条件についての不当表示を指します。今回の措置命令では前者の「優良誤認表示」が問われることになりました。
●罰則はどうなるのか
景品表示法違反と判断されると消費者庁は措置命令および課徴金納付命令を出すことができます。措置命令は違反した企業の情報を周知させる文書が出され、受けた企業は措置命令を受けた旨を一般消費者に周知させなければなりません。不当表示によって得た売上金が高額の場合(所定の基準を超えたもの)は課徴金納付命令が出て応じた金額を納めないといけません。
●埼玉県が措置命令を出した
現在は消費者庁だけでなく、地方自治体にも措置命令を出す権利があります。今回の件は埼玉県が出したものになります。埼玉県のホームページを確認すると以下のように詳細が出ています。
埼玉県ホームページ 県政ニュースより
接骨院を経営する事業者に対する措置命令について
以下、内容を整理して表記
『
部局名:県民生活部
課所名:消費生活課
担当名:事業者指導担当
担当者名:平田・齋藤
内線電話番号:048-830-2934
直通電話番号:2932
Email:a2930-05@pref.saitama.lg.jp
埼玉県は、令和元年11月18日、株式会社MJGに対し、同社等が経営する店舗で提供する役務(以下、「本件役務」という。)に係る取引について、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号優良誤認)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき措置命令を行いました。
同社は、自社で運営するウェブサイトにおいて、本件役務のうち「やせプログラム」と称する役務を一般消費者に提供しており、「やせプログラム」と称する役務を受けるだけで食事指導等を必要とせず容易に体脂肪の減少と身体の全体的な引締め効果が得られるよう表示していました。
しかし、実際には本件役務の効果について合理的根拠はありませんでした。
県内では消費生活支援センター等の窓口に、本件役務に関する相談が令和元年11月18日までに54件寄せられています。
行政処分の概要
1 被処分事業者
(1)名称 株式会社MJG(エムジェージー)
(2)所在地 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号新宿三井ビルディング36F
(3)設立 平成24年3月2日
(4)代表者 木﨑 優太(きざき ゆうた)
(5)業態 接骨院の経営等
2 措置命令の概要
(1)対象役務
同社及び同社のフランチャイズチェーンに加盟する事業者が経営する店舗を通じて供給する役務
(2)対象表示
ア 表示の概要
(ア)表示媒体
同社が運営する公式ウェブサイト
(イ)表示期間
別表1から別表2のとおり
(ウ)表示内容
a
本件役務を一般消費者に提供するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、例えば、遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間、「全国の患者様から選ばれてNo.1お客様『評価』★★★★★」、「全国の接骨院でMJG接骨院は三冠達成!」、「第1位痛みが辛い患者様が選ぶ全国の接骨院技術部門」、「第1位安心安全な骨盤矯正全国の患者様が選ぶ骨盤矯正」、「第1位むち打ち治療に強い接骨院全国の医師が選ぶむち打ち治療」等と表示するなど、あたかも、本件役務について顧客や医師からの評価が非常に高いものであるかのように表示していたこと。
実際には前記の表示は、平成30年10月に、同社が調査会社に委託しインターネット上で収集した同社を含む整骨院10者に関するイメージ調査の結果であり、無作為抽出方法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されているとはいえないものであった。また、当該調査は、腰痛等の痛みが辛い患者を対象とする調査や、医師資格を保有するか否かの確認をしたうえでの調査ではなかった。さらに、10者のうち同社を除く9者の中には、同社の関連の者が2者含まれている。
b
本件役務のうち「やせプログラム」と称する役務(以下「やせプログラム」という。)を一般消費者に提供するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、例えば、遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間、あたかも、「やせプログラム」を受けるだけで食事指導等も必要とせず容易に体脂肪の減少と身体の全体的な引締め効果が得られるかのように表示をしていたこと。
埼玉県が「やせプログラム」の内容について、景品表示法第7条第2項の規定に基づき、同社に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料の提出がされた。しかし、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められなかった。
(3)命令の概要
ア 景品表示法に違反する表示を行っていたことを一般消費者に周知徹底すること。
イ 再発防止策を講じて、これを同社役員及び従業員に周知徹底すること。
ウ 今後、同様の表示を行わないこと。
別表1
表示期間
遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間
表示内容
「全国の患者様から選ばれてNo.1お客様『評価』★★★★★」、「全国の接骨院でMJG接骨院は三冠達成!」、「第1位痛みが辛い患者様が選ぶ全国の接骨院技術部門」、「第1位安心安全な骨盤矯正全国の患者様が選ぶ骨盤矯正」、「第1位むち打ち治療に強い接骨院全国の医師が選ぶむち打ち治療」
別表2
表示期間
遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間
表示内容
「やせプログラムとは?」、「『やせプログラム』では、『複合高周波EMS』を用いて、鍛えにくい身体の奥の筋肉『インナーマッスル』をはじめとする全身の筋肉を、楽に、しっかりとトレーニングします。」
「腹筋6000回の効果?特許取得の複合高周波『ダブルインパクト波形』」、「『ダブルインパクト波形』は、従来の複合高周波をさらに進化させた驚異の波形です。EMS初の50万ヘルツという高周波で、より深くまで通電。『インナーマッスル』をしっかり鍛えるとともに、アウターマッスルにも同時に強く働きかけ両方をトレーニングできます。」
「数字に見る、楽トレ後のサイズダウンの変化」、「※高周波EMSの『楽トレ』で筋肉量を減らすことなく脂肪燃焼と筋肉自体の引き締めが行われた結果、体重の変化は少ないにもかかわらずバランスの良いサイズダウンと体脂肪量の減少という、健康的なシェイプアップに成功しました。」
』
このように詳細に発表することになります。
●突然調査に入るわけではない?
現在、整骨院はごまんとあるのですが、なぜMJGに措置命令が出たのでしょうか。そして全国展開しているグループでありながら埼玉県から出たのでしょうか。それは埼玉県の消費者生活支援センター等に54件の相談が寄せられていたことが関係しそうです。これだけ多くの整骨院に目をつけて調査に入るのはちょっと非現実的かと想像できます。消費者生活支援センターに相談が多数寄せられることで埼玉県が調査に動いたのではないでしょうか。
●調査には合理的な根拠があるかどうかを確認
埼玉県の調査により「合理的根拠は認められなかった」と判断されました。また「顧客や医師からの評価が非常に高いものであるかのように表示」していた件について調査した結果が記されています。『平成30年10月に、同社が調査会社に委託しインターネット上で収集した同社を含む整骨院10者に関するイメージ調査の結果であり、無作為抽出方法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されているとはいえないものであった。また、当該調査は、腰痛等の痛みが辛い患者を対象とする調査や、医師資格を保有するか否かの確認をしたうえでの調査ではなかった。さらに、10者のうち同社を除く9者の中には、同社の関連の者が2者含まれている。』裏取りをしっかりしていることが分かります。
●あくまで広告内容についての処分
さて、世間の人には整骨院はダイエットや骨盤矯正を行う場所というイメージがあるでしょうか。柔道整復師免許を持つ人間にはとても違和感を覚えるはずです。専門学校で習うことは外傷の勉強と処置についてです。脱臼、骨折、捻挫、打撲、挫傷について学び応急処置方法を習得します。整復(骨折や脱臼をした際に骨の位置を正常に戻す操作)は習ってもいわゆる骨盤矯正だとかダイエットなどの勉強はしません(少なくとも必須カリキュラムには入っていません)。本筋と大きく離れた内容です。
柔道整復師が養成機関で習い行う内容と違ったことをしているのですが、その業務内容については触れていないのが重要です。いまや整骨院は何でもありという感じになってしまっています。もちろん全てとは言いませんし、きちんと外傷をみている先生もいらっしゃいます。ただ世間のイメージでは整骨院は外傷の応急処置をすることがメインでは無くなってきています。実際に私が会ったサイト業者の話やネットの記事からもうかがえます。資格免許の範囲を逸脱した業務内容が問題視されている現状で、広告違反という形で処分が下ったことが大きな出来事だと私は思っています。
●なぜここまで至ったのか
今回は広告違反という形の報道です。そして対象が個人整骨院ではなく多店舗展開するグループ整骨院。ことが大きくなる前に歯止めが効かなかったのでしょうか。
これは組織が大きくて目が行き届かなかったのではないかと想像しています。
11月14日に広告検討会が行われて広告ガイドラインの方向性が示されたばかり。柔道整復師(整骨院・接骨院)だけでなくあん摩マッサージ指圧師(マッサージ院)、鍼灸師(鍼灸院)にも大きな影響を受けることになりそうです。このタイミングで大手整骨院グループに措置命令が出たのは、とても象徴的な出来事に思います。当院も状況をしっかりと見定めながら対処しないといけません。
甲野 功
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