開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
11月14日に東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科で特別授業をしてきました。これは開業鍼灸師の立場でSNSをどのように活用しているのかを、教員養成科の後輩たちに伝えるものです。一緒に行う関東鍼灸専門学校の内原先生が専門学校教員という立場で語るのと対になっており、具体的には集客(敢えてこう書きますが)に関してSNSをどのように使っているかを話すものです。
昨年は講義内容を再現してブログにしたのですが、今年は同日に行われた厚生労働省の「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」において大きな動きがあり、今後状況が大きく変わる可能性が高くなりました。授業で話した内容が実情にそぐわないことになりそうですので、今年は講義内容を残すことを控えることにしました。個人的には1年間をかけて作成した発表内容だったので、一切残さないというのも残念なものです。そこで発表した内容の一部を再構成してここに投稿します。内容は「差別化とコモディティ化」について。
私は鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の免許を取り、臨床経験を重ねて、それなりに患者さんをみる力はついたと思っています。ところが開業するとなると臨床能力に加えて経営全般の能力が必要になります。看板を掲げれば勝手に人が来てくれるようなことはないわけです。開業するにあたり、そして今現在もそうですが、経営に関する書籍をたくさん読み、ときに経営セミナーにも足を運んで勉強しています。実家が商売をしているわけでもなく、大学で経営学を学んだわけでもないので、とにかく手探りで学びながら見切り発進で開業した感じです。臨床同様にまだまだ経営というものが理解できていません。それでも実経験と勉強を含めて分かったことは経営やビジネスの根幹にあるものは差別化だということです。
経営関連の本や記事を読むとほぼでてくる差別化という言葉。当初は”他と違うことを打ち出すことでしょう”と単純に思っていましたが、段々と咀嚼できてきてお客が選ぶ理由とイコールだと分かってきました。自らに置き換えれば「他ではない、あじさい鍼灸マッサージ治療院を選ぶ理由を作り打ち出すこと」にあたると。患者さんが他ではなく、うちを選ぶ理由があって来院する。その理由を自ら作り、知らしめて、決断させること。それが経営やビジネスの根幹にあるものだと分かるようになってきたのです。
差別化=選ぶ理由であるので、それが何にあたるのでしょうか。立地、価格、技術、人柄、設備、システム?他との違いを明確にして当院を選ぶ理由(決めて)を作る、見せていく、周知させていく、納得させる、といった一連の行動が差別化ということなのでしょう。特に技術は実際に受けていただかないと実感できないものですから、よく耳にする<技術があれば自然と繁盛する>というのは半分嘘でしょう。世の中に誰一人その存在を知らない院だったらどれだけの技術があっても人は訪れませんから。
話を変えて、差別化の反対は何でしょうか。これも経済や経営の書籍、記事を読んでいるとよく目にする言葉あります。それがコモディティ化です。横文字で受けつけつらいところもありますが、製品・商品の性能が均一化してどれでも一緒になってしまう、といった意味合いです。例えば歯ブラシ。電動歯ブラシを除けば、どれもだいたい似通ったものになります。ブラシ部分、ヘッド部分、持ち手部分、素材、と研究しつくされた感があり、1本10,000円の歯ブラシはありません。あったとしても日用品であり消耗品である歯ブラシとしては恒常的に売れるとは思いません。芸術品だとか有名人が使用したなどプレミアがついたものならば別ですが、コンビニで売られるような日用品にはならないでしょう。そうなると歯ブラシはどのメーカーもだいたい似たような製品となり、値段くらいしか差がなくなってしまいます。そういった現象がコモディティ化というものです。他社製品と差別化ができないため、価格が安い、販売網がある(スーパー、コンビニに置いてある)などでしか買う理由が得られません。ただ見方を変えると差別化することはできるかもしれません。例えば歯ブラシに有名アニメのキャラクターを入れることで小児用歯ブラシとしての差別化はできかもしれませんね。
差別化とは逆の状態であるコモディティ化。こうなると経営は厳しくなります。どれでも同じということですから。コモディティ化に陥らないように工夫することが経営の基本的な課題になるとも言えるでしょう。鍼灸においても同じことが言えて、「鍼灸なら何でも無条件にOK、誰の鍼灸でも受け入れます」という患者さんは一見喜ばしいですが、誰でもいいということは鍼灸をするところならばどこでも良いということですから、他のところに行ってしまう可能性が高いのです。これでは鍼灸業界としては良いことですが、いち経営者としては厳しいものがあります。よく鍼灸師の口から「鍼灸の良さをもっと知ってもらいたい!」とか「受診率をもっと上げたい!」という声が聞かれます。確かにそうなのでしょうが鍼灸がコモディティ化すると、「どこに行っても誰にやってもらうのも一緒」という状況になりより安いところかより近いところにしか患者さんは選択しなくなります。
例を挙げると、相当な理由がない限りセブンイレブンでもファミリーマートでもローソンでも大差がなく、近いところにあるコンビニエンスストアに行くのが通常の消費行動になるのです。鍼灸がコンビニエンスストア化するとは考えられませんが、メジャーになるということはコモディティ化のおそれがあるということです。
ではその差別化を図るにはどうしたらいいのでしょうか。「鍼灸の差別化」と言ったときに、大きな範囲の差別化と小さな範囲の差別化の2つに分けられます。
大きな範囲というのは、他の医療サービスと比べた鍼灸の差別化です。何か体の不調があった場合に人はいくつもの選択肢があります。病院にいく、薬を飲む、マッサージを受ける、他の民間療法を受ける、休息をとる、温泉に行く、など。そこに鍼灸を受けるという選択肢が入るようにすることが大きな範囲の差別化です。病院に比べてよく話を聴いて親身である、薬を飲むよりも副作用が少ない、などが差別化の一例でしょう。
小さな範囲の差別化は、鍼灸に興味があるもしくは鍼灸を選択肢に入れている患者さんに対して、当院を選んでもらうことです。鍼灸業界内の差別化といいますか。このようなやり方をしていて、同じ鍼灸のジャンルの中でも他と(良い意味で)ここが違うという売りです。
二つの意味で差別化を図らないと、特に開業鍼灸師は、いけないわけです。業界全体としては大きな範囲の差別化が進むことが望ましいのですが、個々で小さな範囲の差別化ができないと値下げ合戦になり兼ねません。
続いて鍼灸の差別化を図る方法はどうしたらよいのか。ここが一番のポイントです。実は鍼灸というのは比類なきジャンルで最初から差別化されやすいものと言えます。というのも独自の発展をし過ぎて定番というものがありません。この内容は以前投稿しましたが、「世間のひとがイメージする普通の鍼灸院(鍼灸師)」というのが皆無です。
髭を生やした頑固爺さんがいる。
銀座の一等地で美容メインでしている。
美容鍼でビルを建てている。
東大病院に勤務している。
プロ野球のトレーナー。
世間のイメージはどこかで目にした内容によってバラバラです。何をもって普通と言えるのでしょうか。
鍼灸そのものも同じです。西洋医学でいう標準治療がありません。鍼灸師に「普通の鍼灸って何ですか?」と聞いたら困るのではないでしょうか。鍼の種類も使い方も考え方も千差万別です。少なくとも按摩、指圧、マッサージに比べると範囲が広すぎてイメージがわきづらいのです。指圧といって機械を使って押すと考える世間の方はほぼいないでしょう。
このように定番・標準のイメージがないものですと、基準がないため差別化が難しくなります。『ブランディングデザイン講義』の水野学氏によればマーケティングする際に重要なのは「業界の標準(定番)を押さえた上で、どこまで遠ざけるかのさじ加減」だというのです。定番に近すぎたらありきたりのものですし、離れすぎれば誰が得するの?というイロモノになってしまうのです。
鍼灸では標準(定番)がはっきりしませんから、これだけ違うのです!と打ち出しづらい。間違い探しは2枚の絵があってできるもので、1枚の絵だけで間違い探しをするような状態になります。裏を返すと一人一人の鍼灸師が十人十色で差別化されていると言えます。二人として完全に同じ鍼灸を行うことはないでしょう。個人=個性であります。そうなると差別化するのに他の業界、他の鍼灸師と比較することは効果が薄いと言えるでしょう。世間には良くも悪くも鍼灸は特別なもの(=他と違う)という認識がありますし、世間で定番の鍼灸がイメージできなければ「一般的な鍼灸とうちはここが違います」という見せ方ができません。
そこで、できることやることは自らを主張する。そのような結論に私は至りました。
自分自身を知ってもらう。
どのような想いでこの仕事に就いて、このようなこだわりを持って鍼灸をしているのか。
私が行う鍼灸とはこのようなもので、メリット・デメリットはこのようにあります。
こういった意思表明をすることが鍼灸において差別化、すなわちあなたの鍼灸を受ける理由、ができるのではないでしょうか。そのためのツールがSNSであり、ブログ、YouTube、ホームページなのだと考えています。
甲野 功
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