開院時間
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私は中学校2年生の時にプロレスにはまってからずっとプロレスを見続けています。中学から高校までが一番熱心に観戦していて、大学、社会人と年代が上がるにつれて段々と別のことへの注目が移っていきましたが、現在地上波で放送している新日本プロレスはずっと見てきました。
思春期真っ盛りの中学2年生からですから、プロレスとの付き合いは長いです。当時は故ジャイアント馬場氏が健在だった全日空プロレスを中心に、全プロレス団体をチェックしていました。プロレスというスポーツともショーともとれる曖昧で特殊なものを好きになったことでたくさんのことを学びました。鬱屈として中学生時代を救ってくれたのはプロレスというジャンルのおかげです。
プロレスを見始めてから四半世紀。この25年間でも浮き沈みがありました。
90年代初め、ジャイアント馬場氏が一線を退き、アントニオ猪木氏が最初の参議院議員になった頃。ジャイアント馬場氏が創設した全日本プロレスでは四天王、アントニオ猪木氏が創設した新日本プロレスでは闘魂三銃士、と各々呼ばれる若手選手がスターになっていく、黄金期に差し掛かる時期でした。そこから紆余曲折を経て現在は新日本プロレスの独り勝ち状態となっています。
いまは新日本プロレスだけが地上波で中継しているプロレス団体となり、東京ドーム興行を行える唯一の国内プロレス団体となっています。3度目といえる新日本プロレス黄金期に突入したといえるでしょう。
毎年恒例となっている1月4日東京ドーム大会。今年は1月4日、5日の二連戦という初の試み。深夜ながら同日2日間連続で地上波放送が実現しました。2000年代後半は暗黒期と言われて落ち込んだ新日本プロレス。当時から比べれば奇跡的な盛況といえるでしょう。
いま新日本プロレスの裏側で何が起きているのでしょうか?。最近発売された現新日本プロレス社長メイ氏の著書を手に取りました。
百戦錬磨
新日本プロレスリング代表取締役社長兼CEO ハロルド・ジョージ・メイ著
時事通信社刊
本書を読んでハロルド・メイ氏が優秀な、そして至極まっとうな人物だということが分かりました。
本屋で目にしたのはプロレス・格闘技コーナーに陳列されていました。プロレス系の書籍というと、自叙伝か暴露本(過去の事件を取材したものも含む)というのがほとんどです。たまに写真集、筋トレ、図鑑的資料があるという感じ。私はそのような類のプロレス関連書籍をたくさん読んできたので、本書も新日本プロレスのフロント側から書いた暴露的な本かと思っていました。
いざ読んでみると結構しっかりとしたビジネス書籍だったのです。
私はこれまで様々なビジネス書籍を読んできました。そういった本と比べても遜色ない内容です。表紙は新日本プロレス色を全面に出しているので勘違いしていました。新日本プロレスに関することはむしろ少ないくらいです。よく知る、それこそ25年前からみてきた企業の経営側の視点が垣間見えて、大いに勉強になりました。ファン目線と経営者目線の両方から読み取ることができるのです。
一番に感じたことは、ハロルド・メイ氏が優秀であるということ。
これだけの人物がよく新日本プロレスの社長になってくれたものだという感心と驚きと関心。少年期を日本で過ごしたオランダ人。オランダ語、英語、日本語の3か国語を操り親日家でありプロレスファン。世界的にも有名な国内外の企業を渡り歩いた経歴。アメリカでは消防団に所属し、プロ同様の働きをした。
出来過ぎたような人物ではないですか!
ここまで賞賛するのは、プロレス会社の社長というのは、だいたいが問題児ばかりというのが定説です(失礼)。
日本のプロレス界の祖は故力道山氏であることは間違いないでしょう。北朝鮮出身で日本人として力士となり、のちに廃業。プロレスに転向し戦後最大のスターと言われるようになります。
力道山氏が設立したのが日本プロレスで、トッププロレスラー兼社長でした。ビジネスマンとしても有能だった力道山氏は多くの事業にも進出し経営規模を拡大しますが、暴力団とのいざこざで腹部を刃物で刺されます。その傷がもとで帰らぬ人になるのです。
力道山を師事し正当な後継者とされたのが故ジャイアント馬場氏。読売ジャイアンツに所属した元プロ野球選手。脳腫瘍や風呂場での転倒によるケガにより野球界を去り、プロレス界入り。力道山死後は全日本プロレスを旗揚げします。
ジャイアント馬場氏のライバルだったのがアントニオ猪木氏。力道山死後一度別のプロレス団体を旗揚げするも失敗して日本プロレスに出戻り。その後日本プロレスを解雇される形となり、再度新日本プロレスを旗揚げします。
日本プロレスが新日本プロレスと全日本プロレスに分裂した形となり、これに国際プロレスが加わり男子3団体時代に。そこから分裂を繰り返して多団体時代に突入。いまでは大小数えきれないほどのプロレス団体があります。
力道山氏にせよジャイアント馬場氏にせよアントニオ猪木氏にせよトップレスラーが社長を務めました。この流れから人前で試合を行うトップレスラーが社長も行うことが慣例化します。
元々プロレスラーは世間一般とは違う人種ですし、またそうでないとスターになれないと言われています。それはもちろんのことで、パンツいっちょで人前で戦うのですから。
経営がしっかりできるかとリングの上で輝けるかはまた別の話です。
新日本プロレスを創設したアントニオ猪木氏については
「レスラー・アントニオ猪木は最高、人間・猪木寛至は最低」
という言葉が業界内でささやかれていました。
猪木寛至とはアントニオ猪木氏の本名。プロレスラーとしてリング上に立つ姿は素晴らしいが、人間としてはいかがなものか、という評判です。プロレス興行で儲けたお金を個人事業につぎ込みクーデターを起こされたことは歴史的事実です。2000年代の新日本プロレス低迷期の原因はアントニオ猪木氏にあるとみる見方もあります。
故ジャイアント馬場氏はファンをとても大切にする人物でしたが身内に厳しいという意見がありました。また全日本プロレスは一代限りと話していたようで、死後は後輩に譲渡して全日本プロレスは畳む腹積もりだったと、側近の証言が出ています。現実にジャイアント馬場氏の死後、数年でほとんどのレスラーが全日本プロレスを去ることになりました。
個性の塊のようなプロレスラーをまとめるにはリング状のカリスマ性が必要ということでしょうか。経営者としてよりもプロレスラーの面が強い場合が多かったように思います。
プロレスラーではない人間が社長になればいいのか、というとそうでもないのがプロレス界。詳しくは書きませんが、大小さまざまな事件、事故がありました。一筋縄ではいかぬプロレスラーを相手にするので致し方無いのかもしれませんが、過去の事件を追った取材本を読むと非常識なことがまかり通っていたようです。プロレス自体が非日常体験でありますが、経営も同じようでは困ります。この手のスキャンダル本が出るのですが、私も好きで買って読んでしまします。
このような流れで本書も同じようなテイストなのかと思ったのですが、中身は真逆。メイ氏の半生からビジネスの教訓、新日本プロレスが取り組んできた施策、今後の展望などが書かれており過去の暴露や悪い意味での裏話は一切ありません。これほど優秀な人材が居てくれることに、いちプロレスファンとして感動すら覚えます。
新日本プロレスは世界第2位のプロレス興行団体になりました。
1位はアメリカのWWE。かつてWWWF、WWFという名称でしたが、アメリカ国内のライバル団体だったWCWを退け圧倒的世界一を誇っています。世界的にWWEの一人勝ち状態で、新興団体が規模で勝負にならない状態です。
一方、日本ではどん底まで落ちてから一般企業ユークスの傘下に入ることで生き残りをはかった新日本プロレス。そこからまた別の一般企業ブシロードに譲渡され、何名かの社長を挟んで現在のメイ氏になりました。今や国内では規模において敵なし状態になっています。そしてアメリカ進出も着々と進めており、世界最大のWWEに対抗する団体になろうとしているのです。
メイ氏はマーケティングに長けて他企業での経験も実績もあります。語学力も国際感覚も優れています(オランダ人ですので)。それでいて日本の文化に精通して日本人特有の面倒くさいところを熟知。外国人が求める・期待する「日本」も分かっている。
よくこれだけの人材が新日本プロレスという上場もしていない一興行会社に来てくれたものだと思います。プロ経営者に分類される第一線で活躍ビジネスマンなのです。他の外資系企業にいれば収入も高いだろうと邪推してしまいます。
メイ氏は本書で、プロレスが好き、新日本プロレスが好きだと書いています。またキャリアは新日本プロレスで最後であろうと。日本に来て言葉が分からない時も、テレビで見たプロレスが楽しかった。プロレスは言葉が分からなくても楽しめた。そして日本が好きだった。そのようなパーソナルな部分で経営を引き受けている。私も中学時代にプロレスに助けられた人間なので、このエピソードに感動します。
メイ氏によって新日本プロレスの海外戦略は加速しています。ファン側から見ても分かります。海外からのファンが増えてアメリカ本土でも興行を打つことができるようになりました。WWE一強時代に、海外のファンは対抗馬となる新日本プロレスを歓迎しているように思います。
国内の人気も上昇傾向で女性ファンも本当に増えました。世間に届くプロモーションを多数行っている印象です。トップレスラーのオカダカズチカ選手が有名声優と結婚したことも世間に響いたニュースになりました。
これからも新日本プロレスの動向に注目です。ファンとしても個人事業主としても。
甲野 功
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