開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
2020年2月23日。令和の初の天皇誕生日でした。
それと同時にはり師、きゅう師国家試験の日でもありました。
その日の午前中からあじさい鍼灸マッサージ治療院に都内鍼灸マッサージ専門学校の1年生を招いて
勉強会のような、
施術見学のような、
施術体験会のような、
交流会のような、
あやふやな集まりが行われました。
ことの発端はある学生さんが、臨床に即した鍼灸師の施術を見てみたいという要望がありました。
専門学校の実技授業のでは基本的なことをまず行いますから、実際の患者さんを、症状を、前にしたときとは状況が異なります。本当にこの技術が臨床で通用するのだろうか?という疑問があるでしょう。基本的な技術だけだと全体像が見えてないものです。特に1年生ですと初歩的な技術を習いますので。
そうなると、鍼灸院などに行って実際に受けてみることがいいのですが体験はできても技術を俯瞰して客観的に見ることができません。
通常の臨床現場を知りたいと見学を申し出ても、患者さんのプライバシーやら単に邪魔という理由やらで断れることが多いのです。教育機関、例えば大学病院や専門学校附属施術所ならば学生の教育が上位概念なので見学可能になるとは思いますが、一般の患者さんを施術しているところに関係のない学生が立ち入るのは少々現実的ではないでしょう。ベッド数が多い大規模院なら事情が違うのかもしれませんが。
私も、相当な理由がない限り自分の患者さんに見学してもよろしいでしょうか、とは聞けません。いわばその時間を買っている方へ迷惑ですし、知らない人に本音を語りたくないというブレーキがかかって、治療に影響が出てしまうように考えます。
それならば、学生同士がペアになって来院し交互に同じ施術を受けるという案が出ます。
見学と体験を一度に行う。学生同士なので気兼ねなく見学できるということです。妥当なところでしょう。
その場合、料金はどうするのか?という話になります。
正規料金を学生さん達が払うのがすじなのですが、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師誰もがかつては学生で、勉強して経験を積んで現場に立っています。手助けしたいという気持ちにもなるでしょう。
反面、無料にすると経営的に厳しいですし(その時間業務ができないため、収入がないどころか別の患者さんを入れることができませんから実質マイナス)、無料だと考えが甘くなって真剣さに欠ける内容になりかねません。それは学生側も一緒で無料よりも身銭を切って行動した方が学ぶ態度が強くなると思います。将来は自らの施術でお金を頂く立場になる予定ですし。
意見が分かれるでしょうが学生なので無料とはいかないが人情的に割安にしてあげたい。このような葛藤が起きます。
真剣に学ぶ気があるならお金くらい払えるだろ!という考えもあるのですが、金銭的に余裕がない学生さんもいるでしょうし、割安ならと行動に移す学生さんもいると思うのです。反対に経営が十分に安定していて、学生の未来のために一肌も二肌も脱ぎましょう、という院長もいるでしょう。現場はスタッフが回してくれるから久しぶりに臨床に出てみようかな、という方も。
私の場合、色々悩むところですが「学生に対して情報は無料、技術は有料」というスタンスにしようかと考えています。
このネット社会、情報の価値は随分下がりました。得た情報や知識をどう活かすかには価値があると思うのですが、単なる情報そのものにはあまり価値がないかな、と感じています。Googleで検索し、Twitterに質問を投げかけると、情報そのものは即座に手に入ります。その真偽や活用方法は考えるところですが。
そういった理由で座学に関しては学生向けの無料講座を行っています。
技術は鍼灸マッサージ師の直接的な利益を生む源泉ですから、いくらかはもらった方がいいですし、学生さんも払った方がいいと思っています。
それと学生ペア割引を実行するならば、内容にもこだわりたいと考えています。
セミナーや講習会ならば事前にやることが決まって(決めて)います。その内容をみて参加するか否かを判断します。対して、臨床現場ではどのような展開になるか予想できないわけです。予約時に腰が痛いと聞いていても、実際に来院されて話を聞いたら重篤な疾患による腰痛であったり、メンタル面の原因による腰痛であったり、一番の問題は腰痛とは別にあったりと、何が起こるかわかりません。
そのライブ感を見るのは学生ペアだと難しいのかなと。
学生さんはだいたい体に問題があることが少ないでしょうし、あったとしても二人が全く同じとは現実的に考えられません。例えば両方に肩こりがあったとしても、原因や性別、骨格や日常生活動作が異なればアプローチ方法は変わってしまいます。個別にその人に向けた内容にした方がいいのか、受けた技術を見学することを優先して全く同じやり方をするのか。
また学生さんがこのような技術を見たい!体験したい!といった能動的な行動を期待したいのです。
私が教員養成科学生時代にある教員が授業で話していたのですが、海外の鍼灸師セミナーでは全く前情報を与えずに患者役を連れてきて好きなように対処してくれ、ということがあるそうです。予習させずにその人間の実力を推し量るという。ここまでしなくてもいいのですが、学生さんも何を知りたくて何を学びたいのか明確な意志を持ってきてくれた方が勉強になると思うのです。
こちらがそうは思っても、それもよく分からないので現場の先生にお任せします、という学生さんの意見もあるでしょうから何が正解なのだろうと悩むのです。最高学年の3年生にもなれば知識が豊富になってあれを知りたいと能動的になるかもしれませんが、低学年だと鍼灸で何ができるのか、どのような種類があるのかもおぼつかないでしょうし。
そこで学生ペア割引プランを考えた学生さんに来てもらってパイロット版のようなことをして、料金や内容について感想を聞くことにしました。
2月23日の午前中、都内鍼灸マッサージ専門学校に通う1年生4名に来てもらいました。なお私の母校東京医療専門学校の生徒ではありません。
鍼灸科2名と鍼灸マッサージ科2名。今後、鍼灸師になる学生2名と鍼灸マッサージ師になる学生2名ということですね。その内訳も知らなかったのでその場でどうしようか考えることになりました。
まず自己紹介タイムを設けました。
私のこれまでの略歴を話してどのようなスタンスで臨床に臨んでいるのかを理解してもらおうと努めました。あまり知識のない学生さんに、私のやり方が一番!のような印象を持たれたくないのです。続いて学生さん達の簡単な自己紹介をしてもらいました。その内容から体験する内容を話し合うことに。
事前の連絡で、1年生でまだよく分からないことばかりなので内容は決めてください、と意見をもらっていました。鍼灸科の学生には鍼灸のみの施術を、鍼灸マッサージ科の学生には按摩指圧と鍼灸の併用する施術にしようかと頭に浮かんでいました。それと鍼については低周波鍼通電(パルス)を用いたやり方を見せようかな、という思惑がありました。経絡
なり中医学なりは私よりももっとできる先生の手技を見てもらった方がいいです。パルスはまだ授業でやっていないかもしれないので、臨床的なやり方を体験してもらおうと。
話の流れで経絡はどのような疾患に効果的なのですか?という質問をもらい、それならばと東洋医学と西洋医学の違い、東洋医学の中でも中医学と経絡の違いについて説明することに。ちょうど2月1日に学生向けセミナーをしたので資料があったことも幸いしました。この流れでセミナーのような感じになっていきました。
授業カリキュラムの関係で鍼灸科は既にパルスを授業で習っていて、鍼灸マッサージ科は習っていないとのことでした。それならば敢えて鍼灸科の学生に按摩指圧と鍼灸を組み合わせた内容、鍼灸マッサージ科の学生にはパルスを体験してもらうということになりました。
前半の鍼灸科の学生さんには、主訴(体の辛いところ)を聞いてその治療を行うことにしました。個人的に一番臨床で使っている方法で、按摩指圧で体の状態を把握し話を聞いた上で、それらの情報を加味して鍼や灸を使うやり方です。右肩がやや違和感があるということでした。
学生さん相手ですから逐一解説を加えます。
もう片方の学生さんは右肘が痛いということで肘に対しての按摩指圧鍼灸を行いました。主訴に対して施術する臨床本来の形にしたので個々で内容が変わってしまいました。見学と体験が別々に。
後半の鍼灸マッサージ科の学生には腰部の脊柱(背骨)際のパルスを行いました。パルスの知識(成り立ち、効能、効果など)を説明して4本鍼を刺してパルスを行います。周波数を変える、クリップの繋げ方を変える、など変化を体験してもらうことと臨床でどのような使い方を私がしているかを解説しました。こちらは2名ともやることが同じで見学と体験が一致しました。
最後に全員で意見交換のための交流会をしました。
学生さん同士もほぼ初対面という組み合わせもありました。学生さん達が卒業後どのような道に進みたいのかという話をしてくれました。先に私自身のことを語っていたので、彼ら彼女らもこれまでの経歴やどこに向かっていきたいのかを饒舌に語ってくれました。その内容を聞いて私も刺激を受けましたし、新しい視点を得ることができました。
将来が楽しみな学生さんばかりで、未来は明るいかもと嬉しくなりました。
その後、皆さんの意見をまとめてもらって、料金体系や内容についてイメージが固まってきました。確定して学生ペア割引を実行に移します。母校東京医療専門学校の齊藤校長は教員養成科卒の院は外部の学校という気持ちでいようと、話をされたので微力ながら鍼灸マッサージ学生の力になれる存在でいたいものです。
甲野 功
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