開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
今日は午前中にインタビューを受けました。
Twitter上で、開業鍼灸師に一般人としてインタビューしてみたい、という声を見つけて引き受けましょうということに。時間が空いたのですが、今日当院にいらっしゃいました。
この方は身内に鍼灸マッサージ専門学生がおり無事に今年国家試験を終えました。近い人が鍼灸の世界に足を踏み入れたことで鍼灸の世界に対して興味がどんどんわいてきて個人的に調べるようになったのです。
若い女性で、Twitterやホームページ、YouTubeなどから情報を得ています。それだけでは分からないこと、もっと知りたいこと、身内のためにプラスになる情報を得たい、という気持ちから行動に移しました。
色々と質問や相談を受けました。最後にとても勉強になりましたとおっしゃってくださったのですが、私の方も大いに勉強になりました。目から鱗が落ちるといいますか。鍼灸師でも鍼灸専門学校生でもない、世間の方の素直な声というものがどれだけ重要なことか身に染みたのです。
私は専門学校に入学してから、いや受験をした時から数えれば15年以上鍼灸の世界にいます。国家資格を得て臨床現場に出ても10年以上。あまりに当たり前になり過ぎていて、鍼灸を利用しようとしている世間の方はそういうことに引っかかるのか!?という気持ちで聞いていました。
例えば<体の調子が特に悪くないけれど鍼灸院に行っても良いのでしょうか>という疑問。
これはあらゆる鍼灸師が「未病を治す」といって症状が出る前の状態からアプローチできることを訴えていると思っていました。あるいは「予防」「養生」といったワードを使って、病気になってから対処する西洋医学(現代医学)と違う点、すなわち鍼灸の有利な点を鍼灸師はくどいほど訴えてきたと。それこそ日本人に「日本の首都は東京ですが、実はその前は京都が首都でした!」と言われるような。誰でも知っていることだろうと感じてしまうのですが、決してそのようなことは無いのだと再認識しました。
我々の常識は、世間ではそうとは限らないのだなと。
他にもたくさんの疑問を受けて、そういうところが困っているのか、分からないのか、と内心驚くことの連続でした。
そういうことはすぐに聞いてくれれば1秒で解決するよ、という気持ちになりました。つまりそれだけ知らない人が多いのかなと感じたのです。特に、今日訪れた方はそもそも鍼灸に興味がある方であるわけで自ら情報取集をしているのです。それでも分からない・悩むというのはこちら側の問題があるなと反省しました。
嬉しいことに周りのお友達も鍼灸に興味がある、受けてみたいと思っているそうです。しかしどこに行ったらいいのか分からない、効果が不明、何をされるのか不安、といった声があり、是非ともたくさん聞いてくれと言われてきたそうなのです。ニーズがあることを知ることができるのは良い情報ですが、広報に難があるというのは課題です。
今日いらっしゃった方はTwitter、サイト、ホームページ、YouTubeとネットから情報を集めています。そうすると人によって意見が180°異なる、ちょっとどうなの?という表現がある、大切なことが分からない、などの不満・不安が出てくるといいます。丁寧にお話を聴いていくと課題が浮き彫りになってきます。
鍼灸師個人でポリシー(鍼灸に対するスタンス)が異なるため統一性がない。
分かりやすい表現にしようと文面を簡略化しすぎて、なぜ良いのかその根拠が乏しい(というより書いていない)。
困っている症状にヒットする鍼灸院がない。
女性鍼灸師にお願いしたいと思っても美容系しか出てこない。
などでした。
私は何度かふれていますが鍼灸というのは適応範囲がとても広く、技術も千差万別。考え方も人それぞれ。標準鍼灸というものがほとんど無いと考えています。基準がないので、よそとここが違います!とアピールしても、何がどのように違うのか鍼灸師でないと理解できないのではないかという懸念があります。実際に私にも知らない鍼灸の技術、知識は山の様にあって網羅できません。専門としている側がこれですから、世間の人はもっと分からないことでしょう。
また検索の仕方しだいできっと希望する鍼灸院や鍼灸師は見つかるとは思うのですが、SEO(簡単にいうと検索順位のシステム)により知りたい情報が上位に出てこないのだと思います。前に学生さんに聞かれたのですが、「美容をメインにしていない女性鍼灸師を紹介してくれませんか」とお願いされて、今回の話も一緒で、そうか美容ばかり出てきてしまうのかと思いました。
「しんきゅうコンパス」さんをはじめ、見つけやすいサイトもいくつかあるのですが、まず相談できる鍼灸師あるいは業界関係者がいるといいなと思います。コンシュルジュやソムリエのような困ったときに気軽に相談できて、適したものを提案できる存在。あるいは業界のマップのようなアイテム。けっこう取りこぼしている患者さんや希望者がいるのではないでしょうか。
というのも、「このようなことを聞いても失礼ではないかと思って」という枕詞が出てきました。こちらの想像以上に、気を使ったり抵抗があったりと気軽に質問ができないのだと思いました。連絡してくれればすぐに答えるのに、と私は思ってしまうのですが敷居が高いようです。
あるネット番組で弁護士事務所が「もっと気軽に相談してほしい」と訴えていたのですが「弁護士に相談などハードル高いよ!」と内心思う自分がいて、立場が変わればそれが当然なのかと考えを改めました。
最近よく考えることは、どんどん鍼灸学生や新卒・若手鍼灸師と話をしないといけないということ。私が資格取ったときと時代が変わっていますし、環境も変わっています。
同程度のキャリアがあるひとやベテランの先生と技術的な交流や業界状況の情報交換も大切なのですが、利用する患者さんの感覚(あるいは常識)とどんどんずれているような気がしてきました。その溝を埋めるために新卒や学生さんの意見や考えを受け止めて意識を修正しないといけないなと感じています。学生向けセミナーを行うのもそういった理由があります。
そこから更に当院に来たことがない一般の人の声を聞くことはとても大切なことだと今回の件で思いました。ホームページを見て予約を取る方は少なくとも私の鍼灸なり按摩指圧なりの施術を受けることを認めた方々。その前の段階で、鍼灸を受けてみたいけどどうしたらいいの?という層の声を聞くことが今後に役立つことでしょう。
今日の経験はとてもためになりました。どうもありがとうございました。
甲野 功
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