開院時間
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電話:070-6529-3668
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
本日、あじさい鍼灸マッサージ治療院で非公開の学生向けセミナーを行いました。これは2年前から不定期に鍼灸マッサージ専門学校学生さんに実務レベルのことを伝える活動の一環として行ってきました。決まった学生さんが参加するのですが、前に参加者へどういう話が聞きたいか?と質問したところ、開業した場合の経営やマーケティングの話がいいという要望がありました。そこで少人数で<個人開業に向けたマーケティングの基礎>というタイトルでセミナーを行いました。
鍼灸マッサージ専門学校を卒業後に学生から漏れる不満があります。よくあるものが
・国家試験対策ばかりで臨床で使えることを教えてくれなかった
・経営のことをさっぱり教えてくれなかった
の2つだと思います。
前者の「臨床で使えることを教えてくれなかった」という不満は「国家試験対策ばかり」というものと対になっていることが多いと予想しています。国家試験に合格しなければ臨床現場に立つことはできませんから、国家試験合格は最低限のラインです。程度に差はあれ、国家試が年々難しくなっているため(授業のカリキュラムも増えました)勉強のことで手一杯になっているものです。有益な技術を学ぶ余白が無くなっているとも言えます。そして何をもって「臨床に使える」技術なのかはその人次第になるでしょう。美容鍼を集中的に授業で行ったとしても、スポーツの現場に行きたい人には使えるかは疑問です。訪問介護の分野に進む人にはもっと疑問です。基礎学習や基礎技術を習得してそこから「臨床で使えるであろう」ことを学ぶのは個人の方針によるわけです。このような不満を漏らす学生さんはおそらく学校側が、これはためになるであろうと、学ぶ機会をどんどん作っても、「余計なことをして時間の無駄だ」と結局不満を漏らすように思うわけです。
後者の経営のことについては、鍼灸マッサージ専門学校のカリキュラムに経営はありません。指導要領には経営手法、マーケティングのやり方など載っていません。専門学校が好意で学ぶ機会を与えてくれるかもしれませんが、教える義務はないのです。なぜ経営について教えられなかったと不満を漏らすのというと、我々に開業権があるからでしょう。開業する権利があるから、開業する卒業生(鍼灸師、およびあん摩マッサージ指圧師)が多く、いざそうしたときに苦労するということです。学校では施術に関することを習うのですが、集客方法は(原則として)教えてくれません。私も開業してそこが一番苦労していますし、今も簡単にはいかないです。
参加された学生さんには、まだ在学中であっても経営やマーケティングのことを学ぶ機会を持ちたいという要望があるのは当然のことかもしれません。学生さんと話してみると、専門学校で開業に向けた授業は少しやっているそうです。時代が変わったなという感想です。私が学生の頃はそのような時間を学校側が作ることなど考えたことはありませんでした。時間に余裕があるなら、座学に問題を解く、そして実技練習、という感じでしたから。のちに鍼灸マッサージ教員養成科に進学し、そこで開業手法の授業があって学んだものでした。他は独学。現場や本で学ぶしかありませんでした。
今日は専門学校の授業とは別に個人事業主として開業している実体験とこれまでに学んできたマーケティング手法の知識を説明・解説することに。またワークショップのように学生さんにも頭と手を動かしてもらうようにしました。
マーケティングと言いましても、以前も書きましたがマーケティングの定義そのものは明確になっていません。アメリカ・マーケティング協会の定義も年代によって変わっていますし、日本のマーケターと呼ばれるマーケティングを専門に行う人でも定義が微妙に違います。何が正解なのかまだ定まっていないのが実情であるようです。私はこれまでに読んだ本や資料から一番納得できた、“マーケティングとは製品やサービスを売るために行う全活動のこと”、という意見を採用しました。これは市場調査や営業、広告を出すということに留まらず、商品開発(サービス内容も含む)、価格を決める、店舗を見つける、接客、会話、会計など、売り上げに関わることは全てマーケティングという考えです。もう何でもかんでもマーケティングですね。そう考えると割り切れると思いました。
巷には色々な○○マーケティングが溢れています。過去に体験型マーケティングやSNSマーケティングについて書いてきましたが、すごく広い意味で捉えた方が学生さんにはいいのではないかと考えました。というのも私もそうでしたが、こういうチラシが効果的、このようなターゲット層に向けた方が有利、ビジネスモデルはどうだ、など具体的な施策に目が向きがちです。しかし根っことなる大元がしっかりしていないと何をしても不完全で効果に結びつかなかったのです。木に例えるならば、枝葉のことよりも幹となる部分をしっかりしないと傾く、あるいは折れてしまうのです。枝葉ばかり大きく実らせても重みに耐えられない。学生さんに一番伝えたかったことは、卒業したあとにどうありたいのか?、ということでした。こういう自分でいたい、こういう風になりたい、という妄想でも願望でもいいので理想像を持ってほしい。その理想像に向けて現実に何をするかに落とし込んで、具体的に利益に結び付ける方法を考える。どうありたいのかという理想がはっきりしないのに、テクニック的なものを知っても効果が薄いと思うのです。
私も開業して1~2年は迷走してあれこれ試してみました。有料ポータルサイトに登録したり、有料サービスを契約したり。どれもほぼ利益を出すことなく経費として消えていきました。年間契約なので最低1年間、ときに3年間も無駄なお金を支払い続けました。今となっては厳しい授業料と割り切れますが、当時は本当に失敗したと後悔しました。私自身の考えが固まっていないのに表面的に得になりそうなものに飛びついてしまった。昔も今もマーケティングとして成果が出ているのは自分自身が好きでやりたいと思って取り組んできた施策だけです。
私の考えるマーケティングの基礎とは、自分としっかりと向き合って己を知ることだと考えています。セミナーの後半は私がやって成果のあった方法や現在取り組んでいる案を具体的に紹介しましたが、重要なことは、どうありたいのか、という問いです。専門用語を使えば経営理念だとかミッション、使命、ビジョンなどの言葉で説明されるものです。そこのところが明確で、こうありたい自分、が見えていればそこに向かって勉強や練習を重ねて学校の成績も伸びるものと考えています。今日参加した学生さんはみんな卒業後の姿を真剣に考えていて頼もしかったです。私のときはとにかく国家資格をパスしてから具体的なことは考えようという感じでしたし(こうありたいという目標ははっきりしていましたが)。卒業後に実際に開業するかどうかは分かりませんが、どのような道に進んでもしっかりできる方ばかりだそうなと期待できます。
教えること伝えることは、自らが学ぶことに繋がります。独立してから丸7年経過して、これまでの私を振り返るよい機会になりました。
甲野 功
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