開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
史上初の非常事態宣言が東京都他、各県に出されました。
初めての事態ですので世間が混乱しています。店舗を占めるのか営業を続けるのか。難しい選択を迫られている人が多くいるでしょう。
この新型コロナウィルスに対して、店舗やイベント主催者といった施設側が徹底しないといけないことに換気と消毒が挙げられるでしょう。
「3密」という言葉が一般用語になりつつあり、密閉空間・密集場所・密接場面を避けることを首相官邸および厚生労働省が喚起しています。
この3つの密を避けるためにできることの一つがきちんと換気できること。換気ができない密閉空間そのものに近づかない方がよいわけです。加えていまや換気が十分にできる屋外でも密集し密接するのは危険だと言えます。
もちろんウイルスを減らすために消毒をすることは大前提として必須事項でしょう。
新型コロナウィルス流行がはじまって、各施設が消毒を徹底するために消毒用アルコールが品薄状態になり、それまで生産していなかったメーカーも生産することになりました。急に消毒を徹底しなければいけない状況が訪れて消毒用品が手に入らなくて苦しんでいる団体・個人ともにいると思います。
まるでこのような状況を想定していたかのような対処を鍼灸院開設において厚生労働省及び保健所はしていました。
鍼灸院を開設する(始める)にあたって保健所の職員が臨検といって現場を視察するのですが、換気設備と消毒はチェック項目に入っており、しっかりと実態を確認していきます。書類で済ませる、ということはしません。きちんと職員が鍼灸院まで訪問して確認するのです。
実際は担当する職員によってかなり差があるようです。中には現場に来ないという話も耳にしましたが、原則は臨検を行うことが定められています。細かいチェック内容は担当職員によるで、そのような細かいところまで見るのですか?(困惑)、ということもあります。私の実体験でもありますが。
さて、換気と消毒についてなぜきちんとチェックをするのでしょうか。それは法律に明記されているからに他なりません。
「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」、通称「あはき法」と称される法律に規定されているのです。法律の文面は小さいカタカナ、平仮名を大きく表示する慣例があったので、マッサージがマツサージ、きゅうがきゆうと表現されています。
あはき法から関係する個所を抜粋してみましょう。
『
≪昭和二十二年法律第二百十七号 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律≫
第六条 はり師は、はりを施そうとするときは、はり、手指及び施術の局部を消毒しなければならない。
第八条 都道府県知事(地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項の政令で定める市(以下「保健所を設置する市」という。)又は特別区にあつては、市長又は区長。第十二条の三及び第十三条の二を除き、以下同じ。)は、衛生上害を生ずるおそれがあると認めるときは、施術者に対し、その業務に関して必要な指示をすることができる。
第九条の五 施術所の構造設備は、厚生労働省令で定める基準に適合したものでなければならない。
2 施術所の開設者は、その施術所につき、厚生労働省令で定める衛生上必要な措置を講じなければならない。
第十条 都道府県知事は、施術者若しくは施術所の開設者から必要な報告を提出させ、又は当該職員にその施術所に臨検し、その構造設備若しくは前条第二項の規定による衛生上の措置の実施状況を検査させることができる。
』
とあります。
第6条では鍼師は鍼を行う際に消毒をしなければならないとしています。
第8条では鍼灸院を管轄する土地の都道府県知事は衛生上害を生ずるおそれがあると認めるときには、鍼灸師(施術者)に対して必要な指示をすることができるとしています。
第9条の5では鍼灸院(法律の文面では施術所)の構造設備は厚生労働省が定める基準を満たさなくてはならず、その措置を鍼灸院は講じないといけないとしています。
そして第10条では開設者(基本的に鍼灸院の代表者)は保健所に必要な書類を提出しなければいけないし、保健所職員は臨検という実地調査を行うことができるとしています。
さらにあはき法施行規則には具体的な条件が明記されています。関連する部分を抜粋します。
『
≪平成二年厚生省令第十九号 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律施行規則≫
(施術所の構造設備基準)
第二十五条 法第九条の五第一項(法第十二条の二第二項において準用する場合を含む。)の厚生労働省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 六・六平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
二 三・三平方メートル以上の待合室を有すること。
三 施術室は、室面積の七分の一以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない。
四 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。
(衛生上必要な措置)
第二十六条 法第九条の五第二項(法第十二条の二第二項において準用する場合を含む。)の厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一 常に清潔に保つこと。
二 採光、照明及び換気を充分にすること。
』
とあります。
これが厚生労働省令で定める鍼灸院(施術所)の基準です。
少し分かりやすい表現に変換してみましょう。
・床面積6.6m²以上の専用施術室(鍼灸を行う専用の部屋)があること。
・床面積3.3m²以上の待合室があること。
・施術室は床面積の7分の1以上の大きさの外と解放する窓があること。なければそれに代わる適切な換気装置を作る。
・鍼灸に用いる器具、術者の手指や患者の身体を消毒する設備があること。
・鍼灸院は常に清潔を保つこと。
・採光、照明、換気を充分にすること。
いかがでしょうか。換気と消毒について細かく規定していることが分かります。
消毒設備は鍼を刺すのだから当然と思いますが、換気設備もしっかりしないといけませんよ、というのが興味深いところです。あじさい鍼灸マッサージ治療院では施術室は2面窓がある十分な換気ができる状態にしております。もちろん床面積7分の1以上の大きさがあります。
消毒設備も開業するにあたり器材用消毒液と身体用消毒スプレーおよびジェルを用意しました。院を続けるにあたり消耗品である消毒用アルコールは必須なので数リットル単位のタンクで購入していましたから、今回の騒動が起きても問題ありませんでした。
このように消毒設備も換気機能もしっかりあったので新型コロナウィルス流行にもあまり動じることがありませんでした。基本的に一対一で施術を行うため、待合室に人が溢れることも、同時に複数名の患者さんが施術室に入ることもありません。2つの窓を開けば換気が容易にできます。消毒用アルコールは十分あります。
法律に準ずる、保健所のチェックを受ける、ということで標準装備していた換気と消毒が今回の件でとても助かっています。まるで見越したかのように。
これが保健所の指導のもと開設する(開業する)ということでしょう。反対に保健所の指導を受けないリラクゼーション施設や美容エステ施設は苦慮したのではないでしょうか。十分な消毒設備も用意していないでしょうし(必須ではない)、まして換気という点でも。密室ということが求められる部分がありますし。私がいた頃のリラクゼーション業界では換気や消毒などほとんど意識していなかったです。
厚生労働省認可の国家資格を持つということは、業務の最低限の公衆衛生が求められ保健所の指導をあおぐことになるのです。そのことが我が身や患者さんを守ることに繋がる。今の状況がそのように実感させます。
甲野 功
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