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~保健所登録していない施設を認めない~

東京都防災ホームページより
東京都防災ホームページより

 

前回に引き続き、今回も東京都緊急事態宣言における休業要請において除外施設に「整体院」が入ったことについてです。

 

このことを私が問題視している理由は大きく2つあります。

 

一つはあん摩マッサージ指圧師免許を持たずに徒手療法を行い、それを整体だと称していること

これは以前から「無資格者のマッサージ行為」ということでごく一部で問題視されていました。最低3年間勉強して国家試験を合格したあん摩マッサージ指圧師の職域を勝手に侵食されていることです。法律で禁止されているにも関わらず。それは昭和30年代の裁判によるものなのですが、ここでも繰り返しになるので説明を省略します。

 

もう一つは
有資格者が治療すれば整体院も医療施設に入れる
という解釈を示してしまったことです。
言い方を変えると
保健所に登録しない施設も医療施設になりかねない
ということ。
これは公衆衛生の観点、そしてこの緊急事態宣言下の我が国にとって大きな危険を伴うと考えています

 

分かりづらいですが段階を踏んで丁寧に説明していきましょう。

 

鍼灸院やマッサージ院、整骨院と一般に称しているものは法律用語で「施術所」と定義されるものです。施術所を開設する(開業・開店することと同じ意味)には保健所の検査を受け、かつ保健所と自治体の指導に従わなければなりません。これは法律で決まっています。

 

これが整体院にはありません

 

基本的に「整体院」という屋号・カテゴリーは認められません(※厳密に言えば似たような「整骨院」という名称も違反で正しくは「接骨院」となります)。よって担当保健所が間違って認めてしまったことを除いて施術所で整体院はあり得ないのです。

 

つまり整体院として店舗を構えているところは保健所の指導を受けていないとほぼ等しいと言えます


そして施術所を開設する際には地域の保健所に「開設届」という書類を提出しないとなりません。これは「開業届」とは異なるので注意が必要です。

 

「開設届」は保健所に提出する公衆衛生面を管理するためのものです。開業権のあるあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師は国家試験合格後に厚生労働省の名簿に記載されてその資格免許の効力が生まれます。開設届にはこの名簿登録番号を記入する必要があり、本当に国家資格があるのかを確認します。もちろん名簿登録には本人確認を、その前の国家試験受験でも確認があり、幾重にもチェック機能があります。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 実際に新宿区保健所に提出した開設届
実際に新宿区保健所に提出した開設届

 

このように名簿登録番号を記入する欄があります。また換気設備や消毒設備の有無も確認します。この届を見ながら保健所担当職員が現場をチェックしていきます(臨検)。

 

対して、「開業届」は税務署に提出するもので、これから営業をしますというものです。この開業届から確定申告、納税のチェックがされます。本当に国家資格を持っているかは確認しません。自己申告のみ。個人事業主であればとても簡単に書いて提出して終わりです。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 四谷税務署に提出した開業届
四谷税務署に提出した開業届

 

 

開設届」と「開業届」。よく似た名前ですが、大まかに公衆衛生と金銭で目的が異なります。

 

整体院は保健所に「開設届」を出しません。というより出しても受理されません。理由は既に述べた通り施術所の分類に整骨院がないからです。
よって例えば理学療法士が〇〇理学療法院という施術所を開設したいと保健所に開設届を出したとしても受理されません。作業療法士にしてもそうです。言語聴覚士もそうです。そうなると「整体院」として保健所を通さずに開業することになるのです。
そして保健所を通さない「整体院」で商売をするとした場合、税務署に「開業届」は出します。もぐりでやるならば別ですが、店舗を構えて宣伝して行うならばさすがに無理でしょう。
その際に保健所の指導を受けないので衛生設備面の不備があっても、誰が開業しているのかも保健所は管理することができません。そのことは前回書いた通りです。

 

 

ここから理屈をこねくり回すと、有資格者(医療系国家資格保持者)が「整体院」と開業してしまえば医療施設として認められてしまい、休業要請はされないという考えが生まれるのです。


どういうことかというと、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師の資格を持つ(有資格者)である私が場所を借りて「整体院」として開業します。表向きは「整体院」ですが中身はキャバクラであったとしても外からは分からないということです。

極端なことですがこういうことです。

 

私が6年前にあじさい鍼灸マッサージ治療院を開業する際に東京都新宿区の保健所に相談に行ったときに、鍼灸院の届け出を出しておきながら実態は風俗店だったという事例があると言われました。東洋一の歓楽街歌舞伎町を有する新宿区らしいエピソードです。同じようなことを、この状況ではやりだす人間、組織はあるかもしれません。

 

もっと言えば税務署への開業届には厚生労働省の名簿登録番号を入れる必要が無いので本当に有資格者かは判断できないでしょう。有資格者が治療していますよ、と謳ってしまえば分かりません。保健所のチェックはないのですから。あるいは本当に資格を持つ人間の名前を借りて始めてしまえばどうにでもなるでしょう。

 

はたしてそのようなこと実行できるのか?すぐにばれるのではないの?という疑問があると思います。

風俗店でも接待を伴う飲食店でもなんでもいいのですが、秘密を守れる常連客に連絡してこっそり営業すればいいでしょう。今の日本の状況では秘密を守り高いお金を支払う層は一定数いると予想できます。政治家がセクシーキャバクラに行ったという報道もありましたし。

たとえ営業していることがばれたとしても、表向きベッドなどを置いて「整体院ですから」と言い張れば言い逃れできるでしょう。

 

万一利用者がそこで新型コロナウィルスに感染したとしても体が不調で整体院に通った結果だと言い訳できます(なんせ医療施設と定義されているし)。つまりいかがわしいことをするならばバレた時の心理的ハードルが下がり集客しやすくなります。

 

なぜこのようなことを考えるかというと整体院、リラクゼーション店、エステ店という場所が風俗の隠れ蓑になっているケースがあるからです。既に書いたように新宿区では保健所を通して開設した施術所ですらそうだったのです。整体院と称して実態は風俗という。

 

緊急事態宣言の対象地域、全都道府県に拡大へ…首相調整

緊急事態宣言は全国に出されて仕事が困難になる人はより増えるでしょう。保健所が管理できない状態で施術をするのはとても危険です。「整体院」という看板を隠れ蓑に違法行為に繋がらないようにしてもらいです。もっと言えば違法だろうが何だろうがそれは横においてもよくて、とにかくクラスター化を防がないといけません。「整体院」では立ち入り検査も指導もできない状況になりかねません。


くどいようですが緊急事態宣言が出ているとても危険な状況です。厚生労働省の対策班は対策を全く取らない場合、重篤患者が約85万人にのぼり、半数が亡くなる恐れがあると試算しています。

「対策ゼロなら40万人死亡」 厚労省クラスター対策班

保健所が管理できない医療施設は危険です。

 

甲野 功

 

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