開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
前回のブログを投稿したあとの4月17日19:00に緊急事態宣言における休業要請施設一覧が一部変更になりました。
東京都防災ホームページ
東京都緊急事態措置に関する情報 > 対象施設FAQ(令和2年4月17日19時00分)
それにより、医療施設のカテゴリーから「整体院」が消えました。それと同時に医療施設の備考欄に「国家資格有資格者が治療を行うもの以外の施設は使用停止の要請の対象とする。」と変化が見られました。
この文言をそのまま捉えると、医療施設の中には国家資格有資格者が治療を行わない施設があるのでしょうか?、という気になります。それはさておき、有資格者が治療する医療施設の中に「整体院」が含まれないという判断に変わったと言えるでしょう。
毎回こだわる「整体院」はどうなったのかというと、商業施設の分類に入りました。サウナ、エステ、ネイルサロンらと同じ並びです。
しかし※とあり、備考欄に
「※主として利用者が身体機能の維持を目的として利用する施設は、要請の対象外とする。」
となっています。どういうことでしょう。身体機能の維持を目的として利用するとは?
この表記の裏には
理学療法士
柔道整復師
鍼灸師
などが整体と称して手技療法を行っている現状があり、そこに配慮した形だと推測しています。
理学整体院、整骨整体院、鍼灸整体院など無理にくっつけて「整体院」としている。これはあん摩マッサージ指圧師の職域を侵す行為であるのですが、それはもう横に置いておいておきます。
整体院という保健所を通さない商業施設の分類でありながら、「医療系国家資格保持をうたってあたかも治療行為ができますよ」という立ち振る舞いをすることが問題です。
繰り返しますが法律で認める施術所、今回の休業要請除外にあたる医療施設は必ず保健所の審査を通します。かつ法律の広告制限がかかってきます。「医者でも治せなかった症状を一発で改善します!」とか「末期がんの患者が奇跡の回復!」といった誇大表現の広告文句を出すことは許されません。それが保健所を通さない整体院には保健所や厚生労働省からの規制がかからないためやりたい放題であります。
問題は整体院という商業施設であるにも関わらず医療施設のような立場を保とうとすることです。例え術者が国家資格を持っていてもそれを発揮する現場(法的な意味での医療機関、施術所)に立っていないのに、「国家資格を持つ整体院です」という矛盾を堂々と打ち出してしまう。
そしてそのようなやり方をする人間が増えてしまい、今回の整体院が医療施設から外れたのに「※主として利用者が身体機能の維持を目的として利用する施設は、要請の対象外とする。」という注釈を入れさせたと思われます。
このことで「整体院」の立場が不鮮明になり、別の問題が起きています。
商業施設の分類でかつ濃厚接触となってしまう整体院に休業要請が出るのは当然の判断であるわけです。エステ、ネイルサロンに休業要請が出ているわけですし。それがくだんの注釈が入ってしまったことで
①<うちの整体院は“利用者が身体機能の維持を目的として使用しているから”休業しません>
という運営側の解釈が出てくるわけです。
反対に
②<私はおたくの整体院を“身体機能の維持を目的として来院しているのだから”休業するのはおかしいでしょう>
という利用者側の解釈が出てくるのです。
これでなにが起きるかと言いますと、①の運営側は続けられるという判断をしても、従業員が休みたいというケースです。
通勤で公共交通機関に乗る、不特定多数のお客に触る、不特定多数のお客が出入りするという環境を避けたいスタッフがいたとしても店側が閉めないのであれば、あるいは来店してくるお客さんがいるならば出勤しなくてはなりません。知事が自粛要請を出してくれれば堂々と休めるのに、という気持ちがあります。
医療施設にあたる多くの施術所の場合、オーナー=院長=国家資格保持者である場合が多く、自ら現場に出ているため公衆衛生の基礎が分かっています。病院の場合、経営は医師ではない場合がありますが、開設するためには高いハードルがあるため完全な素人だけで病院を始めるというのはかなり難しいのです。
しかし整体院の場合、オーナーや出資者が別業種の人間(つまり業界の素人)であることが少なくないので、現場のことは知らないが休業しなくていいなら店をあけておいた方がいくらか収入の見込みがあるからいいだろうと考えてしまうかもしれません。テナント料を考えるととにかく開けておけ、という指示を出したくなるものです。店によりますが完全歩合制にして売上ゼロならばスタッフへの支払いゼロにしている所も少なからずあり、店を開けておいた方が得なことが多いわけで。これは過去に整体院に勤めていた私の実経験の話です。
休業要請が出たので休業してスタッフやお客さんの健康を守りたい、あるいは休業補償金をもらいたい、と考えている整体院からすると困ることでしょう。誰が「主として利用者が身体機能の維持を目的として利用する施設」なのかを判断するのでしょうか。曖昧なことこの上ないのです。
次に②の利用者が休業するのはおかしいと判断する場合。
東京都から休業要請が出ているので休業しますという整体院に対して、「身体機能の維持を目的として利用しているのだから勝手に休むな」という声が出てくる可能性があります。
もう少し言うと、ある大手リラクゼーション店で回数券の払い戻しトラブルが起きているのです。まとまった金額の回数券(数万単位)を買ったお客が、そのリラクゼーション店が休業になったので払い戻しをお願いしたところ、事務手数料、その消費税などの金額を引いた分しか返金しないと発表し、返金希望者から苦情が出ているそうです。極端な話、一度も利用していないのに払った回数券の金額より少ない額しか返金されないということになります。
お店側は東京都から休業要請が出る緊急事態ですのでその分しか返金できませんと釈明したところですが、「東京都の休業要請からは除外されているだろう!」と反論される要因になり得るわけです。この休業要請の注釈のせいで。
更に昨日のワイドショー番組(バンキング)では、4月になり売上が激減している個人整体院が休業して給付金支給を申請したかったが、東京都の通達で整体院が休業要請から外れているので給付金対象外になると嘆いている、というニュースがありました。
ここの場合、少し調べたのですが厳密に言えば休業要請に入る整体院ですがネットにはゴッドハンドとか、30秒で改善するとか、辛さ・痛みからの解放とか、普通の生活ができる幸せとか書いているので「主に利用者が身体機能の維持を目的とする」施設と判断されてしまうでしょう。
このように東京都の出した整体院への指示は今後更なる混乱を招きそうです。
厚生労働省・保健所の管轄ではないのに、治療・医療ができますと平気で宣伝し周知させてしまえる状況。それによって慰安、リラクゼーション目的で運営していた方も影響を受けてしまうという。
一体なぜこのようなことになっているのでしょうか。原因は昭和時代の裁判まで遡るのですがそこまで説明するのは控えておきます。近年の状況を説明しておきます。
わが国には総務省の統計分類で用いる日本標準産業分類というものがあり、職業・職種を国が分類しています。
それには大分類がA~Tまであり、
A:農業、林業
B:漁業
略
O:教育、学習支援業
P:医療、福祉
Q:複合サービス事業
R:サービス業(他に分類されないもの)
S:公務(他に分類されるものを除く)
T:分類不能の産業
となっています。
大分類Pが医療、福祉に関することで、大分類Pには中分類83:医療業があります。この中分類は「医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所が分類される。」と定義されています。
中分類83の中に更に「835:療術業」があり、その中には8351と8359があります。
療術業の区分
835 療術業の区分
●8351:あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所
あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師及び柔道整復師がその業務を行う事業所をいう。これらの者が出張のみによってその業務を行う場合も含む。あん摩業;マッサージ業;指圧業;はり業;きゅう業;柔道整復業
●8359:その他の療術業
温熱療法,光熱療法,電気療法,刺激療法などの医業類似行為を業とする者がその業務を行う事業所をいう。これらの者が出張のみによってその業務を行う場合も含む。太陽光線療法業;温泉療法業;催眠療法業;視力回復センター;カイロプラクティック療法業;ボディケア・ハンドケア・フットケア・ヘッドセラピー・タラソテラピー(医業類似行為のもの);リフレクソロジー
見ての通り8351は厚生労働省認可資格免許の施術所です。今回の休業要請除外にあたる医療施設が入ります。
対して8359は厚生労働省が管轄しないもの全てが入ります。8359分類は厚生労働省が管轄しない内容にもかかわらずなぜ<大分類P:医療、福祉>の<中分類83:医療業>に入っているか?という疑問はさておき、この8359分類には「整体」という文字は無いのです。近いものではカイロプラクティック療法業、ボディケア・ハンドケアといったところでしょうか。
そう、誰もが知っている「整体」という言葉は職業分類で療術業に入っていないのです。
なお、「リラクゼーション業」は<大分類N:生活関連サービス業、娯楽業>の<中分類78:洗濯・理容・美容・浴場業>の<789:その他の洗濯・理容・美容・浴場業>、<7893:リラクゼーション業(手技を用いるもの)>に分類されています。エステティック業、ネイルサロン業と同じ並びなっています。
リラクゼーション業からエステ、医療行為、風俗、は除外しています。
つまり医療>療術業の分類にも生活関連サービス業>リラクゼーション業にも、「整体」というカテゴリーがないのです。職業区分が無いということいかようにも解釈できてしまうことでしょう。
なお総務省ホームページには
『
※1 日本標準産業分類は、統計の結果を表示するための分類であり、個々の産業を認定するものでありません。したがって、助成金等の対象となる産業の指定については、当該業務を所管する機関にお問い合わせ下さい。
』
とあり、日本標準産業分類はあくまで統計上の区分であり、個々の産業を認定するものではないと断っています。そうだとしても総務省の統計による「整体」の定義はなされていないことになります。
いかようにも解釈できて都合よく使ってきた「整体」、「整体院」という言葉。
あん摩マッサージ指圧師免許を持たない人間はリラクゼーション業から治療行為まで解釈を広げるために「整体院」という言葉を用いてきました。
同じくあん摩マッサージ指圧師を持たない医療系国家資格保持者は保健所のチェックや広告制限から免れ、かつ徒手療法を使うために「整体院」という言葉を用いました。
各々が都合の良い解釈で「整体院」を使った結果、今回の緊急事態宣言による休業要請という非日常的な状況において、どっちつかずの状況に陥ったと言えるでしょう。
感染予防、クラスター化を防ぐという意味では保健所の指導がない危うさ。
そして注釈付きで休業要請除外になってしまったので休業したくても金銭的メリットが低いため休業することにブレーキがかかる。
公衆衛生面でも経営面でもあやふやな状態を生みつつあると私は考えています。
この大変な状況が「整体院」を厚生労働省管轄の「施術所」に入れるのか、リラクゼーション業に分類される「商業施設」に入れるのかをはっきりさせないといけないのではないでしょうか。
甲野 功
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