開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
世の中には
<マッサージでは良くならない症状に効きます>
とか
<マッサージでは良くなりません!>
など、
マッサージを下にして行っている施術方法(独自のやり方も含む)を喧伝する広告があるのです。
見かけるのが鍼灸院で<マッサージでは効果がない凝りに鍼灸が良い>という趣旨の謳い文句。SNSでの鍼灸師個人の投稿にも見受けられることもしばしばあります。
柔道整復師や理学療法士、あるいはどういう原理なのかよく分からない「整体」でも同様のことが。
どうしてこのようなことが起きてしまうのでしょうか。
こういったマッサージを下にして自身の技術を持ち上げる宣伝手法や発言にはパラドックス(逆説)があります。
心の奥底に、前提条件に、マッサージ行為が世間に浸透しており、その状況に憧れがあることの裏返しであると考えられるのです。これらのような謳い文句で宣伝したり、発言している人にあん摩マッサージ指圧師免許を持っている人は皆無だからです。
私のような人間が言うのはまだ納得できるのです。鍼灸師、柔道整復師であり、あん摩マッサージ指圧師でもあります。
あん摩マッサージ指圧師免許を持っており、かつ鍼灸・柔道整復の技術も資格もある人間ならば比較することができるはず。しかしマッサージを下にみるのはあん摩マッサージ指圧師免許を持たない鍼灸師(鍼灸師免許だけ)や柔道整復師(柔道整復師免許だけ、あるいは鍼灸師免許を持つ柔道整復師)であることばかり。
私のように鍼灸とあん摩マッサージ指圧の両方を持っていても、片方しかやらない臨床家が少なくありません。
鍼灸は全くしておりません、訪問マッサージ専門です、という先生。もしくは鍼灸のみであん摩マッサージ指圧は敢えて行いませんという先生。こういう方も結構います。
按摩・マッサージ・指圧という徒手療法と鍼灸という器材を用いる鍼灸術の両方を日常行っている人間でなければ<鍼灸がマッサージより効く>など言えないはずです。
これが反対の立場だったらどうでしょうか?
柔道整復師免許しか持っていない柔道整復師に
<鍼灸では効果はありません!柔道整復師が教える肩こり対象法!>
といった発言を目にした鍼灸師はどう思うのでしょうか?。
どの口が言っているのかと憤慨しないでしょうかね。
話を戻して、世間に浸透して身近なものであるマッサージ行為(手で触れて行うこと全般という意味になりますが)。それよりも効果があると謳いたい、謳わざるを得ない、ということです。
そうしないと患者さん、お客さんの気を引けない。マッサージ(なんか)よりも自分のやっていることが上だ!と信じたい。
鍼灸師にはよくあることですが、
鍼は痛そう
灸は熱そう
“気”がどうこうと怪しいことを言っている
よって鍼灸は怪しくて怖い
というネガティブなイメージを持たれることがあります。
そして、「(鍼灸は受けたくないけど)マッサージならいいのだけど」と言われてしまう。学生だとマッサージの練習は家族友人が喜んで受けてくれるのに鍼灸だと頭を下げないと受けてくれない、という経験が少なからずあるのではないでしょうか。かつて同じ私は経験しました。
柔道整復師は急性外傷の勉強をして脱臼骨折の整復術を学び包帯の巻き方を必死に練習します。しかし整骨院の現場ではマッサージ行為ばかりやらされる。マッサージが上手くなることが患者さんのためだ!と言われて骨盤矯正の回数券を売ることに必死。このような現状が往々にしてあります(もちろん、全ての現場がそうではありませんが)。
やりたい鍼灸が求められず、柔道整復師の本分であるはず外傷処置ができず嫌々ながらマッサージ行為をしないといけない。このような鬱屈した状況が<マッサージより効果がある!>という打ち出し方に繋がる原因の一つと考えています。というのも、自信をもって鍼灸を提供している鍼灸師で「マッサージで効かない腰痛には鍼灸を」など言っている人を見たことがありません。外傷治療に自信のある柔道整復師はそもそもマッサージについて語ることがありません。
マッサージに対するコンプレックスが裏にあるように感じています。
単純に宣伝効果がありそうだからマッサージより上だと打ち出していることも考えられますが、競合する(であろう)施術内容を出している時点で宣伝としていかがなものかと私は思います。
また「マッサージ」というものを国家資格免許を持たない者の手技と認識して文言に入れている可能性も大いにあるでしょう。3年以上の勉強をして国家試験に合格したのに、世の中には国家資格を持たない整体やリラクゼーションが溢れかえっていて悔しいという気持ちも入り、「ああいうのとは違うんだよ」という意地が“マッサージを下にして差別化をはかる”という。
背景はどうあれ、他の何かを下にして自身の優位性を求めるやり方はもう危険になると思います。止めた方がいい。
宣伝、広告は一昔前より(ほんの数年前より)潔癖さを求められて嘘は許さなくなっています。景品表示法違反で処罰が出ることが増えました。新型コロナウィルス流行でより一層、宣伝表現に正確さが求められています。
それこそマッサージはおろか、
<医者でも治せなかった末期ガンを治せます!>
<新型コロナウィルスに効きます!>
といったものはすぐに目を付けられてしまうでしょう。
鍼灸師や柔道整復師がマッサージを下にみるのは、あん摩マッサージ指圧師という資格を知らない。マッサージとは何かを知らない。そうだからだとも考えられます。
特に今鍼灸専門学校に通う学生さんにはしっかりと按摩とマッサージと指圧の違いを知っておいてもらいたいですし、資格区分と職域についても理解しておいてもらいです。卒業して現場に出る頃には今よりももっと広告や宣伝が厳しくなっているはずだからです。
【あましって何?】の投稿を24日間続けたことで、少しでも認識が変わってくれればと思っています。
甲野 功
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