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~緊急事態宣言から経営方針を練り直した~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 6周年の紫陽花と看板
6周年の紫陽花と看板

 

そろそろ新型コロナウィルスの流行も終息しつつあるようです。


東京都も緊急事態宣言が解除させる見通しになっています。気が緩むことでまた再流行する可能性があるので、気を緩めずに段階的に日常を戻していくことになるでしょう。ひとまずこれだけ感染者、死亡者を抑えられたのも関係各所の力と国民の自粛の賜物だと思います。

 

この外出自粛要請で日本や世界の経済的な損失は計り知れないものがあります。昨年は、今ごろ東京オリンピックに向けて盛り上がっていることを想定していたはず。これからがコロナ倒産が噴出すると言われています。

 

当院も漏れなく4月からは急激に業績が悪化し、持続化給付金を申請することになりました。元々相当なことがない限り生き残る戦略をしいてきましたが、今回の件は今までとは違った状況。


誰もがそうだったことでしょう。


地下鉄サリン事件とも東日本大震災とも超大型台風とも違った脅威です。生活インフラは特に変化がなく、目に見える被害があるわけではなく(少なくとも私の目に入る範囲では)、世界が大混乱に陥っています。

 

この環境で自宅にいる時間がとても長くなり、家族と一緒に過ごす時間もとても長くなりました。臨床という一番重要な業務から離れて考える時間が増えました。奇しくも5月15日に開院6周年となりましたが、気持ちは開業当初の2014年に戻った感覚です
これからどうしたら良いのか思案することに。外出することもままならず、有名芸能人や私より若い人が死亡するニュースを目にしながら経営方針や経営戦略を練ることにしました。

 

出した結論は、

今まで通り、否、今まで以上に地域に根差し臨床現場を大切にする
ことでした。

 

元々大きく儲けることよりも家族のこと(育児や親の面倒をみる)を優先したやり方で始めました。
自宅と同じ町内で、住宅街にあるアパートの一室。駅からは近いですが場所は分かりづらい。都営大江戸線という全線が開通して20年ほどの新しいマイナーな地下鉄の、知名度の無い牛込柳町駅が最寄り。路面店ではなく、路地の奥まったところの2階。かなりの割合で新規患者さんは道に迷って迎えにいくようなところです。
商売としては完全に悪い立地でありますが、自宅に近いことを優先した判断です。実の親にも「こんなところに人が来るわけないだろ」と言われました。実際に開院しても全然人は来ませんでした。

 

この判断が今回の状況においては有利に働きました

 

住宅街にあるということは人が住む場所にあるわけです。自宅待機要請が出ても住んでいるので近所に人は居ます。
これが繁華街であれば人出はないので厳しいことになっていたはずです。テナント料が高額になることも想像に難くありません。更に通勤のリスクもあります。繁華街に居を構えていればよいですが、家賃の安い場所から電車やバスによって通勤しているとするならば、移動の際に本人が感染する可能性が高まります。


某バラエティ番組で銀座で美容専門の鍼灸院を開業する姿を追った企画がありました。それでは銀座の雑居ビルで家賃が32万円。自宅は都外の県から通うものでした。中国人の富裕層をターゲットにしていたと言いますから、相当厳しい状況になったと思います。

 

一人で始めたこともそうです。

 

人を雇うことを一切考えないで始めました。院のシステム上、誰かには任せられません(ベッド一床、コースがとても多い、などによる)。私一人で完結するように作り上げました。そのため手が足りない状態になることもありますし、孤独でもありますが、人件費という最もかかる経費を削ることを決めていました。
これにより人件費がかからないことで緊急事態宣言でも耐えることができました。誰かを雇っていたら院を継続すること、あるいは雇用を維持することは不可能であったと思います。何より院を営業していてもスタッフが通勤したがらないと予想できます。

 

家賃のかからない住宅地において、一人で運営しているから継続できています。条件が異なっていれば、持続化給付が給付されたとしても焼け石に水だったかもしれません。

 

東京都が示した自粛要請には鍼灸院、マッサージ院は対象外になりました。医療施設と判断されたのです。
これにより自粛したとしても補助金がでない(申請できない)ということに。
営業をするか否かは個人の裁量に委ねられることになりました。


ここでもスタッフを雇っていないため私の一存で決めることができるため、感染予防を徹底しながら営業を継続することを決断します。それが可能となったのは生活圏内の職場で、通勤時間はかからずかつ公共交通機関に乗ることなく行けることがあったから。予約が入った時だけ院を開けて対応するということができる環境にあったからです。

 

これらのように本当に驚くほど新型コロナウィルス流行や緊急事態宣言の影響に左右されない院のシステムでした


元々自粛要請がでない限り院を閉めることは頭にありませんでした。

「自分のしていること(鍼灸やマッサージなど)は不要不急か?」
という問いに、不要不急になり得ると答えを出していたからです。ギックリ腰になったとき。体調が悪いけれど病院に行くことが感染のためはばかれる。そういった近隣の方のために開けておくことが必要だと判断しました。生まれ育った地域で開業し、開けることができる環境であるならばやるべきであろうと。

 

このときに、より一層生まれ育った地域に根付いた存在でいたい、と思いました。困ったときにあそこは開いている。そう思ってもらえる院でありたい。そのように感じたのです。元々不利は承知で住宅街で始めたのも、東日本大震災を経験したからです。当時町会長だった父親が自宅の整理を後回しにして町内をチェックして歩く姿をみて、この町内で始めようと決めたのでした。それまでは神楽坂の人通りのある場所を何となく考えていたのですが。

 

そしてもう一つ、臨床現場を大切にしようと決意しました。

自粛要請対象外で営業ができると言っても患者さんが来るとは限りません。当然、感染リスクをおってまで来院することは避けるでしょう。現実に4月、5月と大幅に来院数は落ちています。
この状況で同業、他業種問わず、オンライン治療やオンライン相談、動画配信、物販などを始めました。そのことを批判する気は一切ありませんが、私はそれらに手を出さず現場のことに集中することにしました。

オフラインだけではだめでオンラインを始めなければ手遅れだ」、という風潮がありますが私の本業は実際に触らないといけないものです。リモートで指示してセルフでやらせることは違うと思っています。そもそも「オフライン」という言葉もオンラインmつまりネット上でできることが増えたことから生まれた概念です。現実を敢えてオフラインと称するのも本末転倒のような。


一度はやってみようと準備をして、ZOOMという通信アプリケーションも入れてみたのですが、どうも違うなと思いました。地域の皆様のためにやろうと改めて決意したのに、オンラインに舵を向けるのは矛盾するだろうと。歩いてきていただける方々に向けて情報発信をしていくことが良いのではないか。

 

そう考えた私は、患者さんに感染予防を徹底した上で営業をしていることを伝えるニュースレターを出しました。あじさい鍼灸マッサージ治療院のInstagramアカウントを作り、地域の方に向けた投稿をするようにしました。子ども達と自宅前で遊んでこれまで以上に近隣住民の方と交流するように心がけました。
その結果、同じ町内や歩いて来られる距離での新規患者さんが来てくださりました。離れていた患者さんが久しぶりに来てくださいました。緊急事態宣言の中です。とてもありがたいことですし、成果が出たことが嬉しかったです。

 

これから東京都も緊急事態宣言が解除されて段階的に自粛緩和していくことでしょう。そうなったときに、今まで以上に地域に根差し臨床現場を大切にすることを念頭に動いていきます。
それこそ買い物できること、外出できることが幸せに感じる状況でした。近所のお店の人に前よりもにこやかに接するようになったと思います。


開業当初のような誰も院に人が訪れない日々を再び経験し、臨床の楽しさやありがたさを痛感しました。この困難を逆手にとって信念を固めてアフターコロナ(ウィズコロナ)の世界を進んでいきます。

 

甲野 功

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