開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
「鍼灸ぐらびあ」なるものをご存知でしょうか?
サンプル写真をみていただけばご理解いただけると思いますが、若い女性が肌を露出しているグラビア写真です。大きな特徴はモデルが鍼灸を受けている点。鍼灸とグラビアの融合でそのまま「鍼灸ぐらびあ」です。私はこの作品を応援しています。
まずこの「鍼灸ぐらびあ」を中年男性が応援することはいかがなものか、ということから書いておきます。
ある鍼灸関係者からは、
鍼灸が邪な目で見られるからけしからん、抗議する!
といった内容の声が挙がったようですが、概ね悪い評判は聞いていません。
正直な話、私も表立って応援するのはいいのかな、という気持ちがあります。どうしたって性的な目線で見ているように映りますよね。この企画が成人誌や大衆週刊誌の袋とじ企画だったら反対意見だったと思います。媒体やターゲット層に鍼灸をそのように見せることを意図するのは問題だからです。そうであれば営業妨害ですから。
私が何より応援する気になったのは監修者である葉月先生を知っていたからです。
女性鍼灸師である葉月先生は鍼灸師のイベントで何度も一緒になっていてどのような方か知っています。最初にお会いしたのは2年前の学生向け施術見学会のときだったと記憶しています。話す内容から相当勉強しているなと思いました。実践教育で有名な東洋鍼灸専門学校卒と聞いてなるほどなと感心したものです。
その葉月先生のInstagramには芸術的な鍼灸の写真が掲載されていました。既に「鍼灸ぐらびあ」の前身のようなことをしていたのです。女性だけでなく男性がモデルの写真もありました。ライティングや表情、アングルなど相当練られた“作品”でした。素直に素晴らしいなと思いました。芸術になっていると。
鍼灸術は人の身体を良くするための行為でしかないと捉えていますが、それを「魅せるもの」という作品に作り変えている。新たな可能性があるのではないかと。
そしてプロのモデルとプロのカメラマンによる「鍼灸ぐらびあ」という企画が立ち上がったことを知りました。
前々から知っている葉月先生が監修しているということで支援することにしました。
監修も女性、プロデューサーの麻衣阿さんも女性。女性が表現したいという作品。それを男性側がどうこういうのはお門違いだと考えています。
反対に人生をかけて鍛錬を積んでいるボディービルダーに対して女性が「パンツいっちょで人前に出るのは卑猥だから止めてくれ」と抗議はしないことでしょう。嫌なら見るなという話ですし、肉体を鍛えてそれを競うものですから。
この「鍼灸ぐらびあ」も電子書籍で購入しないと見ることができません。無料で不特定多数の目につくわけでありません。
女性鍼灸師が女性プロデューサーと女性モデルで作品を作ることに対して男性鍼灸師が性的表現に鍼灸を使うなというのは違うなと思っています。繰り返しますが、これが男性鍼灸師が男性プロデューサーと組んで成人誌の袋とじ企画というのならば話は別です。
しかしながら、この新型コロナウィルス問題という状況です。リリースイベントは中止になります。
少し聞いたのですが、このようなグラビアはリリースイベントでモデルのファンを集めて大々的に行うことにより、売れ行きが大きく上がるとのこと。リリースイベントができないことは致命的なことだそうです。
モデルの方とファンとの交流。そこでの物販。それらの機会も失われました。葉月先生は会場でお灸の体験イベントを行う予定で鍼灸の啓蒙活動もできなくなりました。
そこでクラウドファンディングで資金を集めるという方法になりました。
クラウドファンディング
自粛要請続きで制作費が払えません…鍼灸が魅せる美!デジタル写真集「鍼灸ぐらびあ」
賢明な判断だったと思います。鍼灸という厚生労働省管轄の資格免許で行うものが関わる以上、無理にイベントを開催することは避けた方が良かったと考えます。当時は新型コロナウィルス感染者が増加の一途をたどり緊急事態宣言が発令されるかもという時期。開催は現実的ではなかったと思います。
私はこちらのクラウドファンディングにも支援しました。クラウドファンディングの結果は目標達成することができました。良かったです。
先日リターンが届きました。
電子書籍版も購入して作品として「鍼灸ぐらびあ」を拝見しました。
やはり鍼灸師であるので鍼灸に目がいきます。
艾(もぐさ、ヨモギの葉を乾燥させて作ったもの)を捻っておく伝統的な灸。いまや日本でしかきちんと行われていないという技術です。艾の形で技量が分かります。
形が綺麗、しっかりと皮膚に乗っている、立っている。
同業だけにこれがどれだけ凄いことか分かります。まして屋外や解放された部屋での撮影では風の影響を受けるので難度は跳ね上がるはず。素直に技術の高さを感じます。
加えて、カメラマンとの息を合わせないといけないでしょう。線香で火を点けてからあっという間に燃えてしまいますから撮影は相当困難だったと思います。カメラアングルに入ることができないため無理な体勢で行ったでしょうに。
カメラマンも大変だったと思います。私も一眼レフカメラで風景撮影が趣味なので少々分かります。灸や線香の煙、細い鍼を綺麗に撮影するのは簡単ではありません。まして火がついている艾や線香は刻々と変わっていきます。鍼灸の動作とモデルの表情や体勢を考慮して撮るのは難しいことだったと思います。屋外の撮影は風の影響があった苦労したでしょう。
そして「鍼灸ぐらびあ」は学術的な資料としても使えると思いました。
際どい場所の経穴(ツボ)の写真は少ないのです。絵では現実感が無いですし、人体ですとプライバシーもあって公開されるような類では存在が稀です。それこそ患者さんが了承したとしても、下着が少しでも見えている状態ではクレームが入ることがあります。「鍼灸ぐらびあ」ではプロが鍼灸をしている写真が鮮明にあるので参考になると思います。カラー写真というのも貴重です。
巻末には用いられている経穴の詳細な解説が載っており、学術的な意義も出ています。同業者は取穴(どの経穴を選んだのか)から症状はあれではないかと予想を立てる一幕もありました。
短絡的に見れば
<鍼灸とエロ>
となりますが、
女性鍼灸師と女性プロデューサーによる
<鍼灸と芸術>
という新しい可能性とジャンルが一歩踏み出した感じがあります。
これが動画になると茶道や華道のような“様式美”や“動作美”のようなものも表現できるかもしれません。上手な鍼灸師が刺した鍼は綺麗にならび効果を出すために施したことが結果的に“機能美”として現れることがあるのです。
「鍼灸ぐらびあ」。新型コロナウィルスという前代未聞の困難がありましたが、負けずに花開いてもらいたいです。
甲野 功
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