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緊急事態宣言によって外出しなくなると読書量が減りました。
理由は出張治療のために移動するときに本を読むようにしていたからであり、移動中の電車が一番読書をする時間でした。それが一切無くなったので読む途中の本が溜まっていってしまいました。
また出張の道中で本を買っていたので本自体が増えることが無くなりました。マンガや雑誌は近所のコンビニエンスストアで買えますが、教養や勉強に関わる本は本屋に出向いて手に取らないと買わないタイプなので、本屋に行く機会がなければ本を買いません。本当にどうしても必要ならばネット通販にするのですが、まずやりません。
緊急事態宣言が解除されて新宿の行きつけのブックファーストに出向き、手を取ったのがこちらです。
<マンガでわかる東大読書 西岡壱誠 原案 小野洋一郎著 東洋経済新報社>
読書のやり方そのものをマンガで教えてくれるノウハウ本、ビジネス本の類ですね。私はこういうのが好きで結構買ってしまいます。マンガになるということは文章と画の2つの情報から入ってくるので効率が良いのです。その分伝えたい情報の項目が減るとは思いますが。
内容は大きく5項目ありました。
まず<装丁読み>。
これは本を開く前から読書は始まっており、読書が苦手な人は本を読む準備ができていないからだと主張します。表紙、カバー、レビューなど本を開く前に得られる情報を吟味しておくことが大切だというのです。表紙の文言、デザイン、カバーの内容は筆者や編集者が練りに練った本の内容をプレゼンテーションしているというのです。
のっけから一番ためになった内容でした。確かに表紙側のカバーにはこのような文面が。
『
☑スラスラ読める ☑忘れない!
「本を読めないヤツは読み方を知らねえだけだ」
偏差値35からの東大合格 奇跡のインプット術
』
インパクトのあるキャッチコピーとそれを裏付ける偏差値が低い状態から東京大学に合格した筆者のエピソードが記載されています。
そして裏表紙側には
『
学校では教えてくれない「5つの読み方」
装丁読み スラスラ読めるようになる!
取材読み 深く理解できるようになる!
整理読み 内容を一言でまとめられる!
検証読み 多面的に理解できる!
議論読み ずっと記憶しておける!
』
まさに本書を簡潔にまとめた内容とマンガの一コマ。ここを押さえておけば内容を理解するのが容易になるのです。
これまで考えたこともなかった視点で、大いに感心しました。もうここを紹介しただけでこの本の解説は終わりでいいかもしれません(カバーの文章でまとめてくれています)。
なお<装丁読み>は読書という旅におけるライト(灯り)であり、仮説作りが地図であると言います。読書の神髄かもしれませんが、
『
どんな事が書いてある本なのかを自分で「仮説」を立てて
そしてその本から自分が何を得たいのか「目的」をハッキリさせるの!
』
というセリフが、そうだったのか!と納得しました。この仮説を立てて目的をハッキリさせるが最後の方にも登場します。
続いて<取材読み>。読者から記者になり読むだけでなく取材する。著者が目の前にいると思って質問を考えたりメモを取ったりしながら本と向き合うことが<取材読み>であると。
この読み方は自然と身についていました。思春期に毎週熟読していたのが「週刊プロレス」でした。プロレス雑誌でありながら考えさせる内容で「活字プロレス」という言葉を生んだオバケ雑誌でした。あまりに力も持ったために編集長が更迭されるという事態を生んだほど。この事件をリアルタイムで過ごした私は文章を取材する感覚が備わっていました。
なお本書では<取材読み>の先に<追求読み>という読書によって生まれた質問を調べ考察するところまで行う読み方が紹介させていました。これは研究論文を読むときの方法と一緒です。出されたデータは本当に正しいのか?手法は妥当か?再現性はあるのか?などの質問・疑問を追求し、論文に対する答えを持ち、自分が行うならどうするかという考えを巡らせます。
続いて<整理読み>。
ここでは“本はお魚”という興味深い比喩を用いています。本には最初から最後まで貫かれる一本主張があり、それが魚の背骨となります。魚は頭から尾っぽまで骨が身を貫いているように見えますよね。そして主張を補強するための例や根拠の情報が身の部分になるといいます。
魚は身の部分がたくさんあり、当然美味しい。身のおいしさにつられていると骨である主張が捉えらない。身をそぎ落として骨をはっきりさせるように、本の主張を捉えると整理できるというのです。
巨大な魚の骨の上を主人公が渡るというシーンが描かれてマンガならでは表現であり、視覚的に優れたものになっています。簡単なイラスト解説ではここまで分かりやすくならないでしょう。マンガにした利点が光る点でした。
この先は、応用的読書方法になり<検証読み>が出てきます。
似たような題材の2冊の本を同時並行で読んでいくやり方です。交互に読んで比較することで共通点、相違点が見つかり理解が深まる、かつ偏った考えにならないのだと。応用編として意見が異なる部分をポイントとして見つける読み方が<クロス読み>だといいます。
私の場合、似たテーマの本を同時並行で読むことはまずしません。ただ自然と比較して相違点や共通点を探しています。鍼灸師なので当然鍼灸を学ぶのですが、鍼灸(あるいは東洋医学)は本当に千差万別です。更に西洋医学(現代医学)を学ぶことが必須であるため東洋医学と西洋医学を<検証読み>、<クロス読み>をするのは宿命のようなもの。加えて、あん摩マッサージ指圧師は一つの資格に按摩・マッサージ・指圧と3つの技法があるので嫌でも<検証読み>になるのです。
読書ではありませんが理解するための方法として応用できる内容ですね。
これらの読み方を用いて意識的に本と議論を交わし、先に立てた仮説がどうだったのか結論を出すのが<議論読み>となります。読書術のまとめですね。
ここまでのステップは読書だけでなく、学問の理解に繋がる思考方法であると言えるでしょう。
教科書を読む、論文を読む、研究発表を聴く、セミナーを受講する、など広く応用できるはずです。無自覚に闇雲に情報を受けとりそういうものなのかと思慮なしに真実としてしまうことは危険です。ニュースや噂話などの各種情報と相対したときにも応用できることでしょう。こういうことが自然とできる状態がいわゆる“地頭がいい”というものでしょうか。
読書術に収まらない汎用性のある志向手順を教授してくれた一冊だと思いました。
甲野 功
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