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前回のブログで「ULSSAS」という消費者の行動パターンを説明したものを紹介しました。これは特にSNSを利用する消費者の心理と購買行動の工程を説明したものです。
ULSSASを改めて解説すると、
①UGC UGC(ユーザーが作ったコンテンツ)があります。
②Like それを見ていいね!を押す。
③Search1 その内容に関することをSNSで検索します。
④Search2 GoogleやYahoo!といった検索エンジンで検索します。
⑤Action その商品やサービスを購入する、イベントに参加するなどの行動を起こす
⑥Spread それを拡散する
このような流れを示しています。
起点となるのがUGC。User Generated Content(s)のことで「一般ユーザーが投稿したコンテンツ」と説明されています。ULSSASとはUGCありきの概念で、SNSを活用、利用しているSNSユーザーの行動を説明したもの。UGCが無ければULSSASというものは成り立たないと言えるでしょう。
このUGCというものがとても重要になっていると感じています。
またマーケティング関連の英語が出てきた、と最初は辟易としたのですが、きちんと調べてみると以前からあるものが形を変えているものだと理解しました。基本的に横文字は好きではないのですが、UGCを捉えると経営や鍼灸についても見えてくるものがあります。
<僕らはSNSでモノを買う SNSマーケティングの「新法則」
飯髙悠太著 ディスカバートゥエンティワン>
こちらの本にUGCについて詳しく書いてあります。帯にあるようにUGCとULSSASを重要視している内容になっています。著者の本業はSNSコンサルタントをしているそうなので当然の内容でしょう。
本書ではUGCを一般SNSユーザーが投稿するものに限らず、いいね!を押す行動、リツイートする行動、口コミサイトに投稿することなど多岐に渡る内容まで定義しています。何が言いたいかというと、普段SNSを全く利用しない高齢者や子どもが語る感想や絵もUGCになるということ。
例えば私の両親は一切SNSをしてきませんでしたが、近所の新しいお店がどうだった、といった話を日常的にします。いわゆる評判とか口コミというものですが、これもUGCです。
長女はマンガ「鬼滅の刃」が好きでそこに出てくるカナヲというキャラクターの絵を描いています。この絵もUGCに入ります。
本書ではUGCのUはユーザー、すなわち一般人という捉え方をしています。対義語はプロ。テレビやラジオ、新聞、雑誌といったプロが提供する番組、記事、広告ではなく、一般ユーザー(=消費者)が作成したもの(発言でも)がUGCであると。そこが重要です。
いわば素人が作ったコンテンツの方がモノやサービスを売るには大切だというのです。
広告金額においてテレビよりもYouTubeの方が上回ったそうです。プロの芸能人や制作スタッフも参入してきていますが、元々YouTubeは素人の動画投稿サイトです。若い人はテレビを見なくなった、YouTubeばかり見ているという声がよく聞かれます。
動画作成まではハードルが高いにしてもSNSの普及により、Twitterでのつぶやき、ブログで心境を綴る、Facebookで日常を報告する、といったことが手軽にできるようになりました。SNSを使わなくとも口コミサイトに匿名で投稿する、企業ホームページの「お客様の声」に意見を載せるといったことも。いわば国民全員が発信者になり、コンテンツを作ることができるようになったのです。
そうなると企業の都合で作られている番組やCMよりも一般消費者である素人が作ったものの方が信頼できると考えるようになるのです。当然プロが作るコンテンツや商品の質は素晴らしいのですが、それを評価する消費者の声をより信用するという構造ですね。本書にもUGCをたくさん作ってもらえる施策をしましょう、と書いています。
長女の例を出してみます。
長女は「鬼滅の刃」が大好きです。「鬼滅の刃」とは少年ジャンプに連載していたマンガです。しかし長女はマンガを読んだことがありませんでした。「鬼滅の刃」自体、アニメから火がついて原作であるマンガも人気になりました。長女はアニメを見ていたわけでもありません。「鬼滅の刃」について語るYouTubeやキャラのコスプレをする動画をみて「鬼滅の刃」を知り、そこからカナヲというキャラが好きになったのです。そして娘が「鬼滅の刃」の話をするので世間のことを知っておこうと思い、私はマンガ「鬼滅の刃」を購入して読んでいます。
①「鬼滅の刃」のアニメが良かった
②それについて語る動画やコスプレをする人がYouTubeにアップした(UGC)
③それらを見た長女がキャラの絵を描いた(UGC)
④私に色々と作品やキャラについて話してくる(UGC)
⑤私がマンガ「鬼滅の刃」を購入する
まさにUGCの連鎖で購買まで繋がっています。UGCでないのは制作会社が作成したアニメと商品であるマンガのみ。
これはYouTubeという媒体があってのことですが、専門分野でも似たようなことがあります。
例えば論文。ノーベル賞を受賞する偉大な学者だって、最初は学生に過ぎません。素人といえる学生が研究し論文を作成します。これもUGCと言えるでしょう。
論文の世界ではインパクトファクターといって、どれだけその後の論文に参考文献と引用されたかが重要になります。先人たちが残した書籍や研究を参考・引用して作る学生の論文もUGCであり、そこから学者の道に進むのです。学生たちにどれだけ引用されたかが先行研究の論文の評価に繋がるわけですから、同じ構造ではないでしょうか。
私のことを話すと、これまで幾多のUGCを生み出してきました。このブログ自体がUGCであります。
身体を診るプロでありますが、他は素人、一般ユーザーみたいなもの。その私が本を取り上げて感想や書評をする文章を投稿する。ある人は私の文章から、紹介している本を買うことがあります。おそらく、甲野功という人間を通して知った方が、購買意欲が上がったことでしょう。
最近の例では知り合いの鍼灸師野村森太郎先生がいるN-PAGEさんに新リーフレット・チラシをお願いした経緯をブログにしました。その内容をみて、別の鍼灸師さんがN-PAGEさんに仕事を依頼したいとなりました。私が作成した文章(UGC)でN-PAGEさんは新しい受注を受けるかもしれないのです。
鍼灸のことに関しては専門家なのでブログなどで技術や知識を解説する文章を作ります。コンテンツ制作については素人なのでいわばこれもUGCでしょうか。そのブログを読んで鍼灸専門学校の学生さんがコメントをしたり、拡散してくれたりすると、(一般人に近い)学生さんも反応があるのだからきっと良いところなのだろう、と世間の方が来院してくれることがあります。
このような流れがあって、「うちはこれだけ凄いんです!」という宣伝をしても効果が薄くなっていると思っています。
モノやサービスが売れなくなった時代。そして新型コロナウィルスと共存せざるを得ない時代。そこで大切なことはUGCという考え方かもしれません。自らコンテンツをたくさん制作し、他人がそれを拡散する、そして他人が更なるUGCを作ってくれる。そうすることが信用に繋がり按摩指圧や鍼灸を受けに来てもらえるようになるのではないでしょうか。
経済が停滞する今、損はしたくないと考えますから、「何を買うか」より「誰が薦めるものを買うか」に意識がより進むと思われます。
甲野 功
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