開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
今日は午前中から「学生向け公開セミナー」と「学生ペア割」の両方を行いました。
学生向け公開セミナーとは、今年から私が個人で始めたイベントです。鍼灸マッサージ専門学校生を対象に私がテーマを決めて講義をするもの。その目的は私自身の勉強のため。人に教えることが一番の学習になります。新型コロナウィルスによって2月末に行う予定だったものを中止しましたが、縁があって今月再開の運びとなりました。
学生ペア割は鍼灸マッサージ専門学校生を対象に鍼灸マッサージの施術を体験&見学できるようにする場で、通常よりも割安で受けることができるようにしたものです。こちらもこれまでに何回かやってきましたが、新型コロナウィルスにより間が空きましたが本日行いました。
今年に入って始めた学生向けイベントを一日で連続で行うことに。それは今回は<これから鍼灸マッサージ専門学校に入学しようという二人>が対象だったからです。
学生ペア割を始めるにあたって、対象者を鍼灸マッサージ専門学校生だけでなく鍼灸マッサージ専門学校に進学予定の方も含めました。それはこれからこの業界に入ろうかと考えている人に対して臨床現場を知ってもらいたいという願いがありました。
過去に鍼灸師になりたいという相談を何件か受けてきました。わざわざ当院まで足を運んでくれて、私の施術を受けながら進路について質問してくれた方もいました。
本当に鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師を目指すならば、厚生労働省認可の医療系国家資格ですから最低3年間の学生生活と高額な学費を支払うことになります。現場のことを調べておくのは当然のことでしょう。社会人から資格を取ろうという方から連絡を受けてきたので、学生ペア割を実施する際にこれから進学予定の人も鍼灸マッサージ専門学校生として構わないと判断しました。
そして本日、来年から鍼灸マッサージ専門学校生進学予定の方と将来鍼灸師になりたいと考えており独学で東洋医学(中医学)の勉強をしている方が、ペアでやってきました。
いつかはあるかと思って進学予定の対象者。思っていたよりも早い段階で実現することになりました。期待通りと言えます。
しかし専門学校に入学していない人に向けてのこと。普段から授業で学び実技練習をしているわけではありません。学生ペア割は「学生さんが見てみたい、体験したい内容の施術をする」というコンセプトなのですが、まだ学校にも行っていないため何が見たいのかも分からない状況でしょう。こちらから「どのようなことを受けたいですか?」と投げかけても「何があるのですかね?」と反対に問われることになるでしょう。
そこで臨床を行う前に東洋医学とはどのようなものかを説明する講義時間を設けることにしました。
鍼灸業界の現状。
東洋医学と西洋医学とは何が違うのか。
鍼灸の大きな3つの流派の区分。
経絡治療と中医学の相違点。
これらをお伝えすることにしました。
過去に行ったセミナー内容を最新バージョンに少々手を加えて資料を作成。新型コロナウィルスに対する中医学の振る舞いといった時事ネタも加えたものにして、準備をしてきました。今日の日程が決まったのが約1ヵ月前のことで、今日までこつこつと資料の改訂を重ねてきました。
東洋医学の専門用語が入り乱れる資料をどう解説するかが悩みの種。
実際に講義をしてみると、鍼灸学生ならば最低限知っているよねという用語も説明を加えていかないといけないため時間は予想以上に長くなってしまいました。
それでもおそらく漠然と持つ、鍼灸はこういうもの、東洋医学とはこういうもの、というイメージを具体的に分類しておかないと実技を体験しても理解に苦しむと思っていたので丁寧に行いました。
特に日本の伝統的な鍼灸である経絡治療と中国で行われている中医学というもの違いは説明しておかないといけないと考えていました。何が違うのか分かりづらいですし、これから多くの先輩鍼灸師と関わった時に、少なからず、人によって言っていることが異なるという経験をすると予想できるからです。
まだ学校で勉強をしていない、鍼灸に興味がある一般の方、という「未来の鍼灸学生さん」に向けた講義。大変でしたがやりがいがありました。聞く側はきっと何が分からないのかが分かりという心境であったことでしょう。それを理解できるように足早に説明していく。普段の業務にも役立つ訓練になりました。
座学の後は実技。私からの提案で経絡治療と現代派鍼灸を体験し見学してもらうことにしました。
一人目の方に予診票から問診をして、私がどのような予測を立てているのかを説明しました。問診内容について、なぜその質問をしたのかという理由も説明しました。このときに事前に行った東洋医学に関する講義のおかげで説明を省くことができました。経絡治療について説明した内容を具体的に踏まえてこのような質問をしましたよ、と。
続いて施術着に着替えてもらってから、寝てもらい脈診と腹診を行いました。脈とお腹の状態を説明しながら証立て(体の状態を把握するようなこと)をしていきます。見学している方にも脈とお腹に触れてもらい何を診ているのかを解説します。そこから私がこれだと判断した証を説明し経穴(ツボ)を選択して鍼を刺し、お灸を据えていきました。
東洋医学概論を勉強していれば常識となる補瀉や虚実、本治法と標治法などもなるべく分かってもらえるように説明を加えながら行います。
なぜそこの経穴を用いるのか。
何を目的にしているのか。
理屈や理論はどうなっているのか。
経絡治療に則した内容で話します。
鍼灸を行った後の脈とお腹の変化。それと主訴の筋肉の固さが緩んだのかどうか。そういったことを見学している方にも触って確認してもらいます。脈については被験者である方にも触ってみて変化を感じてもらいました。
交代し、腰が痛いという主訴に対して現代的な鍼を行いました。
経絡治療では気の流れとか要穴(重要な経穴)、補瀉(技術のこと)などの説明をしましたが、そういった説明は一切行わず筋肉や神経といった解剖学的な観点でします。痛みが出ている個所はどこか。その周囲の筋肉の状態は。硬結(コリの塊)がどこにあるのか。使用する鍼は経絡治療のものよりも太くて長いものを使用し、より深く刺しました。痛みが出ている部分に刺すのはもちろんのこと、痛みが出ている腰をかばって殿部と背中が緊張しているのでそこにも鍼を刺して緩めると説明しました。
二人目は既に一度私が鍼をしたことがありました。その時の情報を加味しながら刺す方向や深さを決めた根拠を解説しながら行います。鍼を行う前後で腰の状態がどのように変化したかを見学者に手で触って確認してもらいました。
理屈理論も、刺し方も、使用する鍼の種類も、説明の仕方も、経絡治療のときと対照的に解剖学的な視点で行いました。違いが際立つように敢えて行います。
同じように「鍼灸をする」としても違いがあることを理解してもらいたいという狙いがありました。
鍼灸施術が終わった後は交流時間。
今日来ていただいた進学予定の学生さん同士は初対面です。Twitterで当院の学生ペア割のことを知り連絡を取り合って応募してくれました。実際に対面した場所があじさい鍼灸マッサージ治療院でした。一人は以前来ていただいたことがあったのですが、もう一人は私も初対面です。
私自身のことも含めて、どうして鍼灸師になりたくなったのか、将来はどのようにしたいのか、ということを話し合いました。繰り返しますが鍼灸マッサージ専門学校に通うという決断は軽いものではありません。それなりの時間と出費を覚悟のうえでのことです。今後の展望を語り合うお二人の姿を見てよい機会を設けることができたと感じました。
私にとっても大きな学びの場でありますが、今まで接点のなかった他人同士が「鍼灸師を目指す」という共通の目的を持ち、あじさい鍼灸マッサージ治療院で接点が生まれる。この繋がりがお二人の今後に役立つと思いますし、長い目で見て鍼灸業界の未来が明るいものになると思うのです。大きな仕事を終えた感触が自分の中であります。
この取り組みは今後も継続していきます。
甲野 功
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