開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
7月に将来鍼灸専門学校に進学予定のお二方に鍼灸施術と学術的な解説を行いました。
そのとき、同じように今後鍼灸マッサージ専門学校に進学予定の方がいると話をしたところ、会ってみたいという声が挙がったので、今回交流する場をセッティングしました。
未来の鍼灸学生さんがあじさい鍼灸マッサージ治療院に集まり交流する、というイベントを行いました。
東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科を卒業。そしてあじさい鍼灸マッサージ治療院を開業しました。
専門学校の教員になることはありませんでしたが同級生・先輩・後輩と近しい人で教員になりました。
教員養成科では鍼灸マッサージ科時代とは異なり、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師になった上での進学ですから母校の教員も一人前の鍼灸マッサージ師として接するようになり鍼灸業界の現状を教えてくれるようになりました。
開業して広報、集客、情報収集など色々な用途でSNSを活用するようになり、現在の鍼灸専門学生や新人鍼灸師の声が入ってくるようになりました。
開院して丸6年。ちょこちょこと若手鍼灸師の進路相談や学生さんが治療を受けてみたいといった要望があります。率先して鍼灸関連のイベントに足を運んでそれまで接点が無かった人々と実際にお会いして話を聞いてきました。
その体験を通して感じてきたことは、
鍼灸師の未来がどうもあやしいかな
ということです。私も当事者でありますからお先真っ暗と悲観しているわけではないのですが、時代の変化によってこれまでの常識は通用せず、「聞いていた話と違うよ!」ということが多々あるように思うのです。
私が卒業した学校は鍼灸業界でも老舗中の老舗でとても歴史のある学校です。グループで東京、横浜、大宮に3校あり、専門学校業界において中心的な存在といってよいでしょう。そこで育った環境は、他も同じとは限らないということが段々わかってきました。
また母校はもちろんのこと、鍼灸師を養成する学校そのものも状況が厳しくなっていること。場所によっては耳を疑うような環境になっている所があるそうです。
私が鍼灸師国家試験を受験したときは受験者数のピークに近い頃でした。簡単とは言いませんがしっかりと勉強すれば合格できました。2月最終週日曜日に試験は行われるのですが、その後から就職先を探してもいくらでも職場はありました。
元々鍼灸に興味が無く、あん摩マッサージ指圧師と一緒に取ったに過ぎなかった私には鍼灸を仕事にできるかできないかは気にしたことがなく現場で求められるから患者さんに施す技術の一つに過ぎませんでした。だからせっかく鍼灸師になったのに鍼灸をすることを辞めて別の仕事に就くということなど頭の片隅にもありませんでした。需要が無ければやらないだけ。そういう感覚でした。
教員養成科を卒業した後、鍼灸師として生活でない、業界に残っていけない、廃業するといったことがあると耳にするようになりそうなの?と驚いたものです。東京医療専門学校鍼灸マッサージ科の同期で鍼灸をしていない業界を去った、という人は数十名中ほんの数人しかいません。元の仕事に戻った、出産育児のため仕事をしていないという話。約60名同期がいて全員の現状を把握しているわけではありませんが大多数が現場で活躍しています。
鍼灸師になったのに鍼灸をやらないの?せっかく3年間勉強して数百万の学費を払って国家試験に合格したのに活用しないの??という気持ちだったのです。
それが外に目を向けるとどうも本当らしいと。
私が東京医療専門学校Ⅰ部鍼灸マッサージ科を受験したときは入学後に教員に言われたのが入学倍率が20倍くらいだったそう。Ⅰ部(午前)がだめならⅡ部(午後)、それでもダメなら鍼灸科という感じでした。明らかに学校側も「入れてあげるのだよ」という買い手市場を感じました。現に鍼灸マッサージ科に入学できず仕方なく鍼灸科に入学したものや浪人して翌年にまた受験した学生も知っています。私よりももっと前は更に入学することが困難だったようです。
今はどの学校も学生を集めることに必死で、生徒を選べるような状況にないところがほとんどだそう。今は年度末の3月くらいまで生徒募集をしている学校がたくさんあります。更に調べると規模縮小、あるいは廃校という選択をする鍼灸専門学校もあり、国家試験受験者数も減少しています。
加えて鍼灸の根幹を成す、他の資格ではきちんと学ぶことのない、東洋医学概論の教科書が改訂されたことにより、学ぶ量が大幅に増えて内容も深くなりました。平成30年度からはカリキュラムの変更に伴い外部研修が義務付けられ取得単位数(時間)も増加。授業内容が増えています。国家試験の難度も上昇しており、真面目に勉強していれば誰でも受かる、とは言い切れないものになってきました。
学生集めに必死。
専門学校が潰れて始めている。
授業内容も国家試験も難しくなっている。
新卒鍼灸師の数は減少傾向。
そこに加えてこの新型コロナウィルス流行です。学校の対面授業が満足に行えない状況に陥り、新卒鍼灸師やバイトを雇う体力が現場に無くなってきました。
入学するのは簡単、入学してからの勉強が大変、国家試験は難しい、希望する就職先が見つからない。
このような流れがあるようです。他にも様々な外的要因(社会環境の変化)と内的要因(業界内の変化)が挙げられるのですが、もはや「鍼灸師になれば安泰」など言えない状況であると考えられます。
反面、若くても、臨床歴が浅い若手でも、活躍して生き生きと鍼灸師として活動する人も目立ってきています。伸びる人は私の新人時代に比べたら考えられないくらいのスピードで駆け上がっていく印象です。鍼灸学生さんにも逸材だと私が思える人材がいて、学生でありながら興味深い活動をしています。ただただ感心する他ないという方もいらっしゃるのです。
10年、15年前と比べて両極端になっていると感じていて、脱落する人はどんどん増えているがチャンスは今の方が遥かにあるといえましょうか。
そのようなことを感じながら、2年前くらいから縁のある鍼灸学生さんに対して開業した臨床鍼灸マッサージ師としてサポートをする活動をしてきました。その活動を通して至ったのは
もう学校入学前から勝負は始まっていて将来の状況が決まるのでは?
ということです。
どの学校に進むのか。
どの科に進むのか(鍼灸科と鍼灸マッサージ科でかなり変わる)。
どういう気持ちで勉強するのか。
学校の授業以外で何をプラスで学ぶのか。
入学前から相談に乗って本人に考えさせないと、途中で脱落するのではないかと考えるようになりました。
私自身が大学を卒業し一般企業に就職。脱サラしてリラクゼーション業界に入ることで鍼灸業界への道が開かれました。年齢も20代半ばだったので学校選びも将来のこともかなり考え、準備をした上で進学しました。民間の整体学校も含めて連続で進学したことはなく、整体→鍼灸マッサージ→柔道整復→教員養成と卒業後に実務を1年してみて、必要と思い次の学校に進学しました。
それに比べてあまりにも考えずに進学する人が多いものだと感じてきました。それはちょっと無策ではないのか、と内心呆れるような。それでは卒業後に鍼灸師としてやっていけないでしょう。
鍼灸師が生き残れないのではなく、生き残る術を知らない・考えないまま入学して国家試験合格まで来ている人が多いだけなのでないだろうか、と考えています。
今年になり鍼灸専門学校進学を考える人達から私の治療を受けて話を聞いてみたいという声がありました。個別に出会った3名の方をせっかくなので引き合わせる場を作ろうと。そしてその場で「実務に活きる学校の勉強法」という話をしようと企画しました。
確かに国家試験は年々難しくなり合格するのは容易ではなくなっています。しかし専門学校は国家試験対策の予備校ではありません(実質そうなっている所もあるようですが)。人の身体を触って鍼灸をするのに“最低限の知識”を問うのが国家試験であり、実技面は各養成学校に一任するというのが現在のシステム。臨床は4択問題が出ることはなく、リアルな対人関係と技術が必要な場でありますから、国家試験対策ばかりしていた学生が卒業後に上手くいかないのは当たり前。国家試験合格はゴールではなく鍼灸師のスタート。
卒業後に活きる勉強法とは何かを伝えたいと思いました。
それは専門学校に入学する前でないといけなくて、この時期だからこそ意味があると。入学してからが授業について行くのが必死になってそれどころではないでしょうから。
3年間という学生時代をどのように過ごすかで大きく卒業後の将来が変わると考えています。どのような気持ちでどのようなことに気を付けて勉強するのか。
「学校は戦術を教えてくれるが戦略は教えてくれない。勉強や人生の戦略はあなたが練る。」
このことを芯に置いて話しました。
講義の後は交流会のようなものを行いました。
偶然3名とも世代が近かったので、なぜ鍼灸師を目指すのか、今の状況はどうなのか、将来はどうしたいのか、などを語り合い打ち解けていました。
学校に入学すればクラスメイトが仲間になります。一緒に授業を受けて勉強をして。学校入学前では同じような環境の仲間を見つけるのは難しく、実際に対面するのはより困難でしょう。
いつの時代にも人脈は大きな力になります。横の繋がりが後々大きな手助けになるものです。
進学前の鍼灸師を目指す方々が交流するきっかけを作ることができたのが、私の一番の成果だと捉えています。
昨年度までは鍼灸マッサージの学生さんと交流して、
「学生のうちからこれだけの活動をして情報収集をして素晴らしい!」
と感心していました。
今年度に入り、
「学校に入学する前からこれだけ情報収集をして勉強し、将来のことを考えて行動しているとは!」
と驚く人に出会うようになりました。
最初の方に書いた通り、鍼灸師の未来はあやしい・危ないのでは、と感じているのは本音です。私自身も安泰とは言えません。反対に、これほどの人材がいるのだから未来は明るい、とも思っています。努力して行動に起こして外に発信している学生さんを知ると数年後の業界を強く照らしてくれるのではないかと期待します。ひょっとするとすぐにトップランナーとして牽引する立場になるのではないか。そのような予感もしています。
そして輝く原石となる未来の鍼灸師が活躍できるように、開業側の立場で手助けできればいいなと考えています。巡り巡って私が助けてもらうことになるやもしれませんし。
鍼灸師という職業、業界に憧れて真摯に取り組んでいる人たちに出会いました。まだ学生でもありません。その人たちが5年後生き生きとできるようになることをしてみたいと思いました。
甲野 功
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