開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
関東信越厚生局が8月4日付で、不正請求などが行われた場合についての通達をホームページ上で出しました。
関東信越厚生局とは厚生労働省の地方支分部局の一つであり、国民に最も身近な医療・健康・福祉・年金などの社会保障政策を実施する地域における国の「政策実施機関」、と説明されております。茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野の1都9県を管轄しています。
その厚生労働省の中の関東信越厚生局が出した文章が以下の通りです。
関東信越厚生局ホームページ
<保険医療機関等、訪問看護ステーション及び柔道整復師等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて>
私が関係する柔道整復師に関係する部分を抜粋してみました(甲野は柔道整復師免許を取得している)。
『
柔道整復師の施術に係る療養費が不正に請求された場合の取扱いについて
柔道整復師は、健康保険法等に基づく療養費の受領の委任を被保険者から受け、保険者等に請求する場合は、受領委任の取扱いを定めた規定(通知)の内容を遵守しなければなりません。
この柔道整復施術に係る療養費の請求内容に、不正又は著しい不当が認められた場合は、受領委任の取扱いを中止し、施術を受けた患者(被保険者)の皆様の権利を守ることを目的として、措置内容を公表することとしております。
また、受領委任の取扱いの中止措置を行う前に、当該柔道整復師が受領委任の取扱いを辞退した場合又は当該柔道整復師が所属する施術所が廃止された場合に、受領委任の取扱いの中止相当の措置を受けた柔道整復師についても、同様に公表しております。
今後とも、不正に療養費を請求する行為については、厳正に対処し、行政としての役割を積極的に推進してまいります。
』
何か問題が起きたわけでなく
もしも療養費が不正請求された場合にこのような処分を下しますよ
という警告になっています。
これはなかなか珍しいことだと思っています。
なぜならば今後、高い確率で柔道整復師に関する不正請求が起きると想定していないと出さない通達だと考えるからです。先手を打って警告をして不正請求を防止させようという意志を感じるのです。
特に
『
柔道整復師は、健康保険法等に基づく療養費の受領の委任を被保険者から受け、保険者等に請求する場合は、受領委任の取扱いを定めた規定(通知)の内容を遵守しなければなりません
』
と受領委任制度を厳守せよと冒頭で言っています。
受領委任制度とは施術を受けた患者に代って保険請求業務を柔道整復師が行う制度です。患者当人が行うやり方を償還払い制度といいます。
受領委任であれば、患者は自己負担金分(実費の0割~3割)を柔道整復師の支払うだけで済みます。請求書類を作ることも請求業務をすることもありません。償還払いでは患者が施術をした柔道整復師に実費全額を支払います。その後自ら書類を作成し保険者(持っている保険証の健康保険団体)に請求をして7割から10割の料金を返金してもらうのです。入金されるのは時間が経ってからです。
患者側からすると受領委任の方が楽なのですが、柔道整復師が請求業務を行うため不正請求をしやすく、患者はそれに気づきづらいのです。償還払いの場合は、患者が一度全額を支払い請求業務もするため負担が大きいので不正請求をする可能性がとても低くなります。施術する柔道整復師側はとても楽です。
この受領委任において
『
療養費の請求内容に、不正又は著しい不当が認められた場合は、受領委任の取扱いを中止し、施術を受けた患者(被保険者)の皆様の権利を守ることを目的として、措置内容を公表することとしております。
』
と通達しています。受領委任取り扱いの中止、そして措置内容の公表。契約解除をして外部に知らしめますよと。
このように警告するということは「不正又は著しい不当」がこれまでに起きてきたし、今後も起こるであろうと予見していることが感じ取れます。
柔道整復師側からすると受領委任制度が使えなくなると患者側の負担がとても大きくなるので利用者が激減する可能性が高くなります。誰が医療機関に行って保険証を出し、全額負担の上に書類を作成し保険者に請求をかけて審査が終えて入金されるのを待つでしょうか。整形外科の病院を選択するか、最初から実費(自由診療)の院を選ぶことになるでしょう。
受領委任取り消しというのは既存の柔道整復師にはかなり厳しい処分です。
なお健保連は受領委任から償還払いに移行させる方針があります。
かつ措置内容を公表するとしています。厚生局のホームページに乗るので気付かない人は全く気付かないかもしれませんが、ネットで検索して措置内容の文章がヒットした場合、イメージ悪化は計り知れないものでしょう。〇〇接骨院のことを調べてみよう、と検索したら厚生労働省から処分を受けている、と分かってしまう。
公表内容には施術管理者(柔道整復師の)氏名、年齢、施術所名(院の屋号)、施術所所在地(院の住所)、開設者氏名などが明記されます。処分ですから厚生局にホームページから文章を削除してくださいと言っても応じるはずはありません。しばらくネット上に残るわけです。
またこのように続けています。
『
受領委任の取扱いの中止措置を行う前に、当該柔道整復師が受領委任の取扱いを辞退した場合又は当該柔道整復師が所属する施術所が廃止された場合に、受領委任の取扱いの中止相当の措置を受けた柔道整復師についても、同様に公表しております。
』
これは不正が発覚して受領委任取扱い中止措置が出るとなったら、事前に取扱いを辞退するか施術所(院)を廃業して公表を逃れてようとしても、その柔道整復師を公表すると言っているのです。過去に措置内容を公表されないように取扱い辞任や院を畳むことで逃れようとした柔道整復師がいたことがうかがえて、そのやり方をしても公表しますからね、と念を押しているようです。
逃がさない、無かったことにさせない、という強い意志を感じます。
通達の最後は
『
今後とも、不正に療養費を請求する行為については、厳正に対処し、行政としての役割を積極的に推進してまいります。
』
という宣言で締められております。厚生局は本気で柔道整復師の不正請求を追求するという意志表示が見て取れるのです。
私が柔道整復師になったのが2011年3月。その前からずっと柔道整復師による療養費不正請求の問題は叫ばれていました。ここ最近、本腰を入れて不正請求を取り締まる動きが出てきているように感じています。不正請求に関する報道、ニュースが出ることが珍しくなくなりました。
不正は認めない。
当たり前のことを当たり前にする状況になってきたことが伺えます。
なお、直近で公表された措置内容を見てみました。
7月21日発表 柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いの中止相当について
内容を抜粋します。
『
2 受領委任の取扱いの中止相当年月日
令和2年7月22日 (当該柔道整復師は、以後原則5年間は新たに療養費の受領委任の取扱いができない。なお、開設者についても、以後原則5年間は新たに療養費の受領委任の取扱いができない。)
3 受領委任の取扱いの中止相当措置に至った経緯
患者から当該施術所の療養費の請求について疑義があるとの情報提供があり、患者調査を実施したところ、不正請求が強く疑われたため、令和元年6月から令和2年2月まで計5日間の監査を実施し、監査の結果として、「4
受領委任の取扱いの中止相当措置に至った事由」に記載した不正請求の事実を確認した。
4 受領委任の取扱いの中止相当措置に至った事由
(1)監査において判明した不正請求の主な事例
① 実際に行った施術に行っていない施術を付け増して、療養費を不正に請求していた。(付増請求)
② 療養費の支給対象外の症状に対して行った施術を支給対象となる負傷に対して行ったものとして、療養費を不正に請求していた。(その他の請求)
③ 施術録については、施術が完結した日から5年間保存しなければならないにもかかわらず廃棄していた。
④
帳簿及び書類については、施術所が廃止された後でも廃止後5年間は、地方厚生(支)局長と都道府県知事が必要とあると認めて施術に関してこれらを検査し、説明を求め、又は報告を徴する場合は、これに応じなければいけないにもかかわらず廃棄していた。
(2)監査時に判明した不正請求額
平成29年5月から平成31年2月施術分
合計5人分 金額189,878円
』
まずこの個所に注目しましょう。
『
令和2年7月22日 (当該柔道整復師は、以後原則5年間は新たに療養費の受領委任の取扱いができない。なお、開設者についても、以後原則5年間は新たに療養費の受領委任の取扱いができない。)
』
これは両罰規定と言われ、不正請求を行った柔道整復師はもちろん、開設者(接骨院を開いた人物)も処分されます。開設者はオーナーとして資金だけを提供する柔道整復師ではない人物も処分の対象になるのです。フランチャイズ契約をして一般人が整骨院のオーナーとして始めたとして、そこのスタッフ(柔道整復師)が不正請求をして処分されるときはオーナーも同様ということです。整骨院のフランチャイズでは経営面で問題が起きて裁判を起こした例がありますが、処分もされるということですね。
受領委任の取扱いの中止相当措置に至った経緯についてこのようにあります。
『
患者から当該施術所の療養費の請求について疑義があるとの情報提供があり、患者調査を実施したところ、不正請求が強く疑われたため、令和元年6月から令和2年2月まで計5日間の監査を実施し、監査の結果として、「4 受領委任の取扱いの中止相当措置に至った事由」に記載した不正請求の事実を確認した。
』
患者からの情報で発覚しています。
これは重要なことで、不正請求をされていると疑いを持って通報したということでしょう。不正請求の情報が知れ渡り、これは何かおかしいなと思わなければ通報することはないでしょう。患者側も不正請求に関してかなり知識を持つようになったと感じます。
具体的な不正請求の事例も興味深いです。
『
① 実際に行った施術に行っていない施術を付け増して、療養費を不正に請求していた。(付増請求)
② 療養費の支給対象外の症状に対して行った施術を支給対象となる負傷に対して行ったものとして、療養費を不正に請求していた。(その他の請求)
』
①、②はこれまでにもよく見られた不正請求です。
『
③ 施術録については、施術が完結した日から5年間保存しなければならないにもかかわらず廃棄していた。
④
帳簿及び書類については、施術所が廃止された後でも廃止後5年間は、地方厚生(支)局長と都道府県知事が必要とあると認めて施術に関してこれらを検査し、説明を求め、又は報告を徴する場合は、これに応じなければいけないにもかかわらず廃棄していた。
』
③、④は単なるずさんな事務作業という気もしますが、証拠隠滅操作とも考えられます。
施術録とはカルテのことですから、医療従事者にとって大変重要な資料です。患者の氏名、年齢、住所、電話番号など基本的な個人情報も入るはずで来院しなくなっても残しておかないと仕事に影響するはずです。
帳簿は経営する上で廃棄するということが信じ難いものです。会計処理や確定申告をどうやって行っていたのでしょう。監査が入るときに処分したように思われます。
最後に不正請求の金額は『合計5人分 金額189,878円』。19万円弱。金額の問題ではありませんが、かなり少ない金額です。過去には数百万、数千万円の不正請求額もありました。この金額でも取扱い中止措置を取ることが分かります。
今回の関東信越厚生局が出した通達はしっかりと取り締まるという意志表明を感じました。不正請求が起きたから、ではなく、起きる前に忠告しておく、というものだったからです。
甲野 功
コメントをお書きください