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~余計な感想を加えるひと~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 新宿御苑の紫陽花
紫陽花(新宿御苑にて)

 

 

女性店員さんや女性営業担当さん、それも中高年の方に多いのですが、何か質問に答えた際に「〇〇だと思いましたぁ」と付け加えられることがあります。営業トークなのか敬語の一環なのか分かりませんが。これまでに幾度か経験しています。男性にはほとんど言われたことがありません。ほぼ女性が相手のときです。 

(実年齢を伝えると)「もっと若いのかと思いましたぁ
(身長を申告したときに)「もっと背が高いかと思いましたぁ

などなど。文字にすると難しいのですが語尾に「ぁ」がつくような上に跳ねる感じで終わります。

正直なところ私は全く嬉しく思わないしうっとおしいと感じてしまいます例で出した事例でいうと
若いと思われていることで私が喜ぶと?
実寸より背が高く見えるというのがお世辞になると?

 

一般的ならばそうかもしれません。しかし私の職業鍼灸マッサージ師はある程度威厳のようなものも必要で『若造には任せられない』という層が一定数いるため、若くなくてもいいわけです。また私は小学校高学年くらいから背が高かったため散々「背が高い」と言われて辟易としています。背が低い人には羨ましいかもしれませんが。完全にこちらの文句なのですが、余計な感想を付け加える必要はあるの?と思ってしまうのです。男性でもたまに営業担当でいますが、だいたい良い方はいません。きちんとした私が納得できる営業担当さんはこのようなことをしません。話が盛り上がると勘違いしているのでしょうか
この感想から話が盛り上がる、情報を聞き出すという意図もほぼ見えず、<こういうことを言っておけばあなたは楽しいのでしょ>という押し付けを感じていまうのです。そうなのですよよく若いと言われます、と続けた方がいいのでしょうか。悪かったですね実際には身長が低くて、と機嫌を損ねた方がいいのでしょうか。嫌な営業を持ちかけられたときは後者を使って、失言として追い詰めてしまいそうです。

 

ここまでは私の愚痴なのですが、自分の仕事に置き換えた時に本当に注意をしないといけないことなのです。

余計な感想を加えること

仕事上、問診が必須です。患者さんの状況を聞く、聴くことは大切な業務。その際に余計な感想を加えると大変なことになりかねません。例えば、45歳女性の新規患者さんでお子さんの世話で大変という方がいたとします(実際にあったことではありません)。子どもの年齢を質問したとします。帰ってきた答えが5歳だとしましょう。ちょっと前でしたら母親が45歳ならば子供は成人、社会人、場合によっては結婚していてもおかしくないでしょう。そこで「てっきりお子さんは大学生くらいかと思っていました」などと私が言ったらどうでしょう?。何も起きないかもしれません。相手はそうですね、と答えるだけかもしれません。しかし考えなければならないのは、45歳で子どもが5歳ならば40歳で出産したということ。結婚した時期が遅かった?計画的にこの時期になった?あるいは不妊治療でやっと授かった?相手は「悪かったわね、子どもが小さくて。生むまで大変だったのだから。」と嫌な気持ちになるかもしれません。

 

その方の家庭環境が分からない以上うかつな発言は危険なのです。私にどのような印象を持たれるか分かりません。怒りや苛立ちを覚えられれば信頼関係が築けませんので、その後の治療効果に大きく影響します。悪い方向に。この人失礼ね、と思われた状況では効果が出なくなるものです。それが鍼灸、按摩指圧、マッサージというもの。体に直接触れるものですから、「あなたに触られたくありません」という心境では厳しいわけです。

 

以前書いたことですが、数年前に娘がインフルエンザに罹患してその看病した結果、私自身もインフルエンザにかかり内科を受診したことがありました。女医が対応したのですが、私に「お父さんがかかることは珍しいのですが」と言ったのです。そのとき39℃近い発熱と体の節々が痛い私は頭にきました。ただ統計的に現状を述べただけかもしれませんが、世のお父さんは子どもの看病はお母さんに任せるのが普通なのだけど、と言いたいのか?という憤り。私は、自分の子どもなのだからと当たり前のこととして世話をしてきた結果、自身もインフルエンザがうつってしまったのです。失礼ながら高齢の男性医師ならば、昭和の頭だからしょうがないかな、と流したかもしれませんが女性医師がそれを言うか、という気持ちでした。内心、検査結果が出たのならさっさと処方箋を書いてくれ、インフルエンザを治すのは薬と休養だ、という愚痴が出ていました。

子どもがインフルエンザ。自分もインフルエンザ。仕事は休まなければならない。家事育児もできなくなる。身体は辛い。このような厳しい状況ではちょっとした一言がイラつかせて悪印象を持たれることがあります。まして相手が医療従事者であれば最初からしっかりとした人物であるはずというハードルが上がっているもの。

 

余計な感想を加える。余計というのはまさに“余計”でお互いにプラスにならないこと。反対に必要と思ったことはきちんと質問するようにしています。先に挙げた架空の例を再度使ってみましょう。45歳女性、子どもが5歳、育児で大変。


このときいくつか仮定を作って想定してみます。
厳しい不妊治療をした末の出産だとしたら?→肉体的・精神的に辛かった時期があったかもしれない。それが現在も関係しているのか。
結婚時期が30代最後であっただけ?→特に気にすることはない
計画して40歳で出産したとしたら?→経済的なこと、夫婦間の考え方などはどうだったのか。体力的なことを考えれば早く生んだ方が楽だろうから何か意図があるのだろうか。

まだパターンを考えられますが、どちらにせよ必要な情報になるかもしれませんので、「失礼ですが、お子さんを生んだのが40歳くらいですが何か理由はあるのでしょうか?」と質問することでしょう。体調の原因に関わる内容が出てくる可能性があります。引っかかることがあれば頭の中で仮定と想定をした上で、冷静な口調で質問するようにします。条件反射のように即座に語尾を上げて「〇〇だと思いましたぁ」と口に出すのはしないようにしています。
私の持論ですが臨床で失敗する大きな原因は1位が自己顕示欲をコントロールできないことで、2位が決めつけることです。この人はこうに違いない、と決めつけると視野が狭くなり他の状況を考えることができなくなります。余計な感想を加えるという行為は決めつけることに繋がるところもあると考えて気を付けています。

 

私はこれまでに発言で患者さんの心証を悪くしたことがありました。うかつな発言には気を付けることを肝に銘じています。

 

甲野 功

 

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