開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
先日、わざわざ関西から鍼灸マッサージ専門学校の学生さんが4名、あじさい鍼灸マッサージ治療院まで来てくださいました。
今年の9月に医療機関で鍼灸師が働くことについてTwitterでやり取りがありました。相手は鍼灸専門学校の学生さんであることはプロフィールなどから分かっていましたが、直接面識がないかた。私は整骨院、クリニック、大学病院での勤務経験があるので医療機関で鍼灸師が働くことについて、こちらまで来てくれればお伝え出来ることがありますよ、というコメントを入れたのでした。このときは関東近辺の学生だと勝手に思っていたのです。
その後直接連絡が来て、関西の学生で11月なら訪問できそうですのでいいですか、という内容でした。
関西?!
そんなに遠いのかと驚きました。何の配慮も無く、来てくれたら話す、とコメントして失礼なことをしたと思いました。
そして来るの?!という戸惑い。
東京まで往復するだけでも、時間・料金と安くはありません。学生さんには気軽にできることではないでしょう。何より直接会ったこともない個人鍼灸マッサージ院のところにわざわざ来るの?!という驚きです。
<大阪と東京の間には3万円の川が流れている>
これはユニバーサルスタジオジャパンを再建した森岡毅氏の著書にある言葉です。新幹線往復料金がだいたい3万円ですし、他の夜行バスや鈍行列車など安い手段を使っても時間や体力がかかり、実質3万円くらいの出費になるでしょう。それだけの隔たりが関西と関東の間にはあるという比喩です。
この3万円の川を越えてくるというのであれば学生さんの期待に応えねばという気持ちになりました。
何度かやり取りをして他にもクラスメイトが参加し4名が来ることに。
4名も学生でありながら東京までやってくると思うと、ちょっと大変なことだと気を引き締めました。話の発端は医療機関で鍼灸師が働くことについてですが、他のクラスメイトさんにも聞きたいこと知りたいことといった要望がないか確認しました。
すると出てきた要望が。
それが多いのです。
医療機関でのこと、私の考え方や実技について、進路や就活といったアドバイス、経営に関すること、など。しっかりと具体的に質問内容がありまして。
自分で聞いておいてなんですが、項目が多い!
どうしようか、と頭を抱えました。幾つか答えられない(経験したことがない)ことも含まれていて。それでも学生さんが関西から3万円の川を越えてやってくるのだからできる限りのことをしよう!決意し資料作りを始めました。
うちに来るだけが目的ではなく各自関東近辺でやることをスケージュールして東京に来るようです。それでもそのうちの数時間を私に割いてくれる以上は期待に応えたいし、そうしなければ。資料はこれまでに作成してきたセミナー資料を再構成すればいいのでそこまで手間ではないはず。
問題は数ある項目をどのようにまとめていくか。話す順番や内容を考えると四苦八苦。既に完成した資料を切り貼りしていくことで余計に混乱します。結果、3部作にまとめて個人史編、医療機関編、経営編ということで構成をまとめました。
するとパワーポイントのプレゼン資料が161枚。
多い!
161枚ってどういう枚数だよと我ながら唖然としました。もう察しているかもしれませんが、私は文章でも資料でも細かくしっかり作り込むので1枚のスライドに入れる文字の量もかなりあるのです。中には10文字くらいでインパクトを出すスライドや写真一枚を貼っただけのものもありますが、ほとんどはかなりの文字が入っています。聞く方も気が遠くなりそうですし、私も体力がもちません。通常の3回分ですし。
そこで院内で開催する個人セミナーでは初めて休憩タイムを入れることにしました。
それでも事前に依頼された質問項目に応えていないところがあり悩みました。悩みながらも当日を迎えます。もう悩むなら入れてしまおうと決めて手を加えたところ、スライド枚数が187枚に。
187枚って!
削れるところがあるだろ!と自分で突っ込みたくなる枚数。大丈夫なのか、これはと思いつつも悩むと更に増えそうなので手を止めました。自分史上最大のプレゼン資料になったことは間違いありませんでした。
第一部は本当にこれまでの人生を振り返るようなものに。
現役の学生さんですから私の専門学校生時代のことや勉強方法について資料に入れておこうと考えました。自慢ですが成績優秀者でしたので。そうなると専門学校に入る前からのことも知らせないと意味がありません。専門学校前の経験が好成績に直結していますから。
また親類に関係者が全くいない、自身が鍼灸マッサージにお世話になった経験もない20代半ばの青年がこの業界に足を踏み入れたことも伝えないと、現在のスタイルを説明できません。
結局、生まれてから今までの人生を振り返るようなものになってしまいました。
医療機関で鍼灸師が働くことについては過去の資料を流用することでほとんど済みました。ただ医療機関に関係するガイドラインや事件など最新情報を付け加える必要がありました。この項目が当初の学生さんの目的であったので内容をチェックして再構成しました。
経営についての内容が一番枚数が増えてしまいました。
参加する年齢層を知ると私と同世代もいるようです。お茶を濁さずがっちり経営戦略やマーケティングについて資料を作ろうと考えました。
そもそもこの資料と並行して年に一度行う東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科特別授業のプレゼン資料も作成しており、その内容に影響された感じがあります。先に教員養成科で発表しそれを更に掘り下げたような内容に。
経済用語の横文字を羅列してもいいのかな?と不安になりながらも、判断するのは学生さんでありこちらは最大限のモノを提供するだけだ、とキン肉マン作者ゆでたまご先生の精神で作りました。
開業を考えている学生さんがいるようで事前に「地域密着」というピンポイントのキーワードが挙げられていました。そこについて当院が行っている「地域密着を特徴とした具体例」を入れるとまた増えてしまうので当日まで悩みましたが、いいアイデアがあったら描かずにはいられないのがワンピースだよ、という尾田栄一郎先生のメンタルで付け加えてしまいました。
そして約束の時間通りに関西から訪れた学生さんが4名到着しました。
このようなイベントで必ずすることは、私の自己紹介をしっかりとすること。これまでの経験、体験、考え方。パーソナルな部分をしっかりと知ってもらった上で話を聞いてもらいたいのです。
そのあとに参加した学生さんにも自己紹介をしてもらいました。するととてもしっかりと話してくれて将来どうしたいかという展望も聞かせてもらいました。わざわざ関西から来るくらいですから意思がしっかりしていると感じました。これならば込み入った話も大丈夫そうだと。
想像していた通り、講義は長くなりました。途中飛ばした個所もありますが、質問を受けて話が脱線したこともありました。聞いている方はなかなか大変だったと思います。4時間を超えました。途中お菓子休憩を二度挟みます。神楽坂でおすすめの洋菓子や紅茶を振る舞いました。休憩を入れたのは私にとっても助かりました。
講義を終えた時点で一度締めることにしました。学生代表の方からコメントがあり、予想していた以上にしっかりと学生さんが向き合ってくれたことを実感しました。やった甲斐がありました。
そこからは流れ解散という形にして、残れる人は残って何かやりたいことはありませんか?と聞くと、実技が見たいという声が挙がりました。特に按摩指圧といった徒手療法は学校差があると聞いたので私のやり方を見てみたいということでした。
そこで鍼灸に繋げる按摩指圧を、一人の学生さんを受け手にして披露しました。実技の解説や臨床現場での注意点、鍼灸と按摩指圧をどう組み合わせるのか、など。東洋医学的に説明した方がいいのか、筋骨格系で説明した方がいいのかなど。約1時間解説しながら手技を見せました。
その後本当に解散という流れになりました。まだ時間があるという学生さん二名とは更に業界のことについてお話をしました。
教員養成科特別授業の方と重なったこともあり、事前の準備は結構大変でした。当日もずっと話しっぱなしで体力と神経を使いました。大変ではありましたが終えてみて感動の方が上回りました。
このコロナ禍で、前から予定が決まっていたとはいえ、第三波到来と言われる状況で関西から東京まで来てくれたこと。そこのスケージュールに私を選んでくれたこと。開業している身には本当に嬉しいことです。その気になればリモートで話をすることができるわけです。この時期に、この距離を越えて実際に会いに来てくれた。存在が認められたような気がします。夜なかなか眠れませんでした。
十数年前の自身の専門学校時代を思い返しても気になる先生のところに出向くことなど考えたこともありません。まして長距離を移動してまでなど。大変であろう学生でこれだけの行動をすることに感心しますし感動します。地域は違いますが接点ができた関西の学生さん達。将来活躍することを願ってやみません。
そしてありがとうございました。感謝しています。
甲野 功
コメントをお書きください