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2週間前に行った東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科特別授業。学生に向けて講義をしましたが前半は関東鍼灸専門学校副校長である内原先生の話を聞く立場にありました。
そこで話した内容で注目したことが“SNSは「実力」をつけるためのツール”であるという点。
内原先生の主張を要約すると
・SNSで「打席に立つ機会を増やす」
・「実力」をつける前に、「実力」がつく環境をつくる
ということでしょう。
SNSによって露出する機会を増やし(打席に立つ)、そこから錯覚資産を形成していくことが重要だと言います。錯覚資産とは実力以上に評価されるものといった意味合いです。
これは我々の永遠のテーマかもしれない「臨床力が先か、集客が先か問題」に関わること。臨床力(いわゆる実力)があればいいのか、集客(錯覚資産も含めたあの先生は凄そうという人気や知名度)があればいいのか、という命題です。
ここで内原先生が出した言葉が
・CVRを高める前に、まずPVを増やす
・PVが増えると、CVRを高める機会が増える
・結果、CVRが増える
というものでした。
ここで私の頭の中にCVRとは何?PVとはプロモーションビデオだっけ?と疑問符が出ました。
前後の文脈やその後の図をみて何となく理解しましたが、このアルファベットたちは何だったのだろうかと思い、調べてみました。
まずCVRについて。
CVRとは、Conversion Rate(コンバージョンレート)であり顧客転換率と訳されるそうです。ウェブマーケティング分野の用語で、ウェブサイトにアクセスが発生したときにそのアクセスのうちどのくらいが登録や購入・申し込みなどのコンバージョンに繋がったかの割合を示します。コンバーションとは「ウェブサイトで獲得できる最終的な成果」だそう。
CVRを自分なりに解釈するとアクセス数に対して成果(結果)が出た割合ということ。何をもってコンバーションとするのかは場合によるようですが100のアクセス数に対して100のコンバーション(成果)が出ればCRVは100%で、いわゆる百発百中というやつです。
これを臨床に照らし合わせれば、診た患者さんにどれだけ納得させる成果を出せたかという割合、という意味になるのでしょう。すなわち臨床力であると。
続いてPVについて。
PVとはこの場合、Page View(ページビュー)のことでウェブサイト内の特定のページが開かれた回数を表します。PVが多ければたくさんウェブサイトが閲覧されているということですね。これは分かりやすい。
これを鍼灸業界に当てはめると、どれだけ周囲に知られているか、興味を持たれているか、ということになるのでしょうか。発表資料の文脈から考えると集客あるいは露出に相当するはずです。
鍼灸専門学校の授業でウェブマーケティングの用語を出してきた理由は内原先生がシステムエンジニアだった経歴と関係あるのかもしれません。前職では分かりやすい概念だったのでしょう。
ここでもう一度内原先生が授業で発表した内容を出しみましょう。
・CVRを高める前に、まずPVを増やす
・PVが増えると、CVRを高める機会が増える
・結果、CVRが増える
これを置き換えると
・臨床力を高める前に、まず露出する機会を増やす
・露出が増えると、臨床力を高める機会が増える
・結果、臨床力が増す
のようになると考えられます。
面白いのはCVRを縦軸、PVを横軸としてグラフにしたとして、その面積が錯覚資産になると図解した点です。そうCVR×PVが錯覚資産となると内原先生は説明していたのです。
この数学的な発想は理系の私にとても興味深いものでした。
CVRが高くてPVが非常に少ない例を“知る人ぞ知る名人”、“学内で有名な教員”と例を挙げていました。
CVRが低くてPVが非常に多い例を“ゴットハンド広告”という例えをしていました。
前者は外部への露出がなく知られていないが臨床力がある人という意味。後者は宣伝ばかり上手くて中身がないものという意味にとれます。どちらもあまり好ましい印象ではありません。
改めてこの概念に具体的な数字を入れてみると見えてきます。
CVRが100、PVが1の場合(数値の単位は敢えてつけません)。臨床力が非常に高いが露出が少なく知る人ぞ知るパターン。この場合面積である錯覚資産は100×1で100となります。
CVRが1、PVが100の場合。臨床力が非常に低いが露出が非常に多い宣伝が上手なパターン。この場合の錯覚資産は1×100で上と同じく100となります。
そう数字上の錯覚資産は同じとなるのです。
認知されていない名人と、実力が伴わない宣伝上手で、数値は同等になる。
臨床に出ている立場の私には違和感を覚えますが他分野に目を移せば納得するかもしれません。
小さな劇場で数十名の観客を感動させ続ける名俳優と、演技は下手でもテレビのドラマに出ずっぱりのアイドル女優。どちらが演技者として上かと言われるとどっこいどっこいに感じてしまいます。演技が上手くても知られてなければプロとしてどうなの?という疑問がありますし、どれだけ下手でもオファーがくる以上アイドル女優の方がプロとしては正しいような気がします。
アイドル女優は演技に賛否両論があっても出番があるので実力がついてきやすいですし、演技はどうでもよくてあの子が好きというファンも増える可能性があります。内原先生のいうCVRの前にPVを増やせというやつですね。
ここで数値を変えてみましょう。
CVRが10、PVが10だとします。すると錯覚資産は10×10で100。
上に挙げた極端な例と錯覚資産が計算上同じになるのです。
そう考えるとCVRを1から100にするのは相当な勉強と練習が必要かもしれません。しかし、10あるCVRを11にするだけで錯覚資産は110と1割増しになる計算です。PVも10から11にすれば実績は121となり2割増しです。
面積という掛け算であるためどちらかを極端に伸ばすよりも両方を伸ばした方が錯覚資産(=CVR×PV)は大いに増すのです。
まとめると
①CVR(臨床力)とPV(露出)、偏らず両方を上げていくと錯覚資産が効率よく伸びる
②PV(露出)を先に上げた方がCVR(臨床力)もあがる可能性が高く有利である
②は内原先生の述べた内容で①は私が資料から読み取ったものです。
当初はCVRとPVと聞き馴染みのない用語に戸惑いました。それをグラフに置き換えて表した図をみたときに新たな視点が生まれました。フリーの自営業で戦う私にとって新戦略になりそうです(授業タイトルは『鍼灸師または鍼灸教員の生き残り戦略』)。
内原先生の授業内容は2週間経っても発想が生まれて興味深い内容でした。
甲野 功
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