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ここ数日で立て続けに、あん摩マッサージ指圧師養成学校新設を求める裁判において高等裁判所の2審判決が出たことがニュースになりました。
12月8日に、横浜市で争っていた東京高等裁判所の判決。
<NHK あん摩指圧師養成 視覚障害者保護 2審も憲法に違反しない判断>
『
視覚障害があるあん摩マッサージ指圧師を保護する法律の規制によって、健常者向けの養成施設の設置が認められないのは憲法に違反すると、学校法人が訴えた裁判で、2審の東京高等裁判所は、1審に続いて憲法に違反しないと判断し、訴えを退けました。
大阪の学校法人「平成医療学園」は、運営する横浜市の専門学校に健常者向けにあん摩マッサージ指圧師を養成する施設の設置を国に申請しましたが、視覚障害があるあんまマッサージ指圧師を保護する法律の規制を理由に認められず、「職業選択の自由を保障した憲法に違反する」と訴えました。
1審の東京地方裁判所は去年、規制の必要性が認められ、憲法に違反しないと判断し、訴えを退けていました。
8日の2審の判決で、東京高等裁判所の北澤純一裁判長は「重度の視覚障害者を中心に指圧師の仕事に対する依存度が依然として高く、視覚障害者を社会政策上、保護するという立法の目的は、現在も正当性がある」と指摘しました。
そのうえで、1審に続いて憲法に違反しないと判断し、学校法人の訴えを退けました。
厚労省「おおむね主張認められた」
厚生労働省は「おおむね国の主張が認められたものと承知している。今後とも、あん摩マッサージ指圧師に関する制度の適正な運用に努めてまいりたい」とコメントしています。
視覚障害者団体「視覚障害者の痛みに寄り添う判決」
判決のあと、視覚障害者団体のグループが会見を開き、日本視覚障害者団体連合の評議員を務める大胡田誠弁護士は「多くの視覚障害者が今も苦しい状況に置かれていることを認めて、視覚障害者の痛みに寄り添う判決を出してくれた」と話していました。
学校法人「敗訴だが視覚障害者の生活維持難しいと判決で認定」
平成医療学園の岸野雅方理事長は判決後の会見で「残念ながら敗訴だったが、私たちは視覚障害者を苦しめるために裁判をしているわけではない。規制ができてから50年たっても国が何もしないため視覚障害者の生活の維持が難しいと判決で認められた。このままであれば今と同じ状況が続いてしまうと最高裁に主張したい」と話しています。
』
12月14日に、福島県内で争っていた仙台高等裁判所の判決。
<Yahooニュース tbc東北放送 ”あはき法”訴訟 学校法人の控訴棄却>
『
視覚障害者の生計を守るための法律=いわゆる「あはき法」に基づき、健常者向けのあん摩マッサージ師の養成学校の新設を認めなかったのは憲法違反だとして、福島県内の学校法人が国を訴えた裁判の控訴審判決で、仙台高裁は学校法人の控訴を棄却しました。
この裁判は、福島県の学校法人「福寿会」が、健常者向けのあん摩マッサージ師や鍼灸師の養成学校の新設を認めないのは、憲法が保障する「職業選択の自由」に違反しているとして、新設を認めなかった国の決定の取り消しを求めているものです。視覚障害者の生計を守るための法律=いわゆる「あはき法」では「国は必要があれば当分の間、健常者向け養成施設の新設を承認しないことができる」と定めています。2020年6月、仙台地裁はこの法律を合憲として訴えを棄却し、福寿会側が控訴していました。14日の控訴審判決で仙台高裁の小林久起裁判長は「法律による規制には必要性も合理性も認められる」として仙台地裁の判決を支持し、控訴を棄却しました。福寿会側は、判決を不服として上告する方針です。
一方、視覚障害者を支援する団体も会見し「国が視覚障害者の生活を守るということを司法も明らかにしてくれた判決で高く評価する」と述べました。
』
東京高裁、仙台高裁ともに1審に続いて控訴棄却としました。
これは2016年7月に健常者(視覚障害がない者)を対象とした、あん摩マッサージ指圧師養成課程を新設する申請を却下された専門学校4校が、それを不服として国を相手取り裁判を起こしました。裁判を起こした学校は以下の4校。
・福島医療専門学校(福島県郡山市)
・横浜医療専門学校(神奈川県横浜市)
・平成医療学園専門学校(大阪府大阪市)
・宝塚医療専門学校(兵庫県宝塚市)
このうち平成医療学園専門学校(学校法人平成医療学園)の2審(東京高裁)と福島医療専門学校(学校法人福寿会)の2審(仙台高裁)のどちらも控訴棄却となったのです。最高裁まで争うようなのでまだこの裁判は続きそうです。
ここで2つの報道におけるニュアンスが若干異なることに気付いたでしょうか。
どちらも健常者向けのあん摩マッサージ指圧師養成学校を新設できず、それは憲法で定める職業選択の自由に反するという理由で新設を認めろと主張しています。それに対して視覚障害者を守るために健常者のあん摩マッサージ指圧師養成学校新設には視覚障害者団体が認めない限り作ることはできません。視覚障害者にとってあん摩マッサージ指圧師は重要な生業であり、健常者の資格者が増えては生活が困窮するからです。
よってこの裁判の判決が出ると視覚障害者団体が声明を発表します。視覚障害者の権利と生活が守られるかどうかが重要であるためです。どちらの判決にも視覚障害者団体、支援団体は評価するというコメントが記事に出ています。
ところが東京高裁の判決ニュースには、視覚障害者団体側は「視覚障害者の痛みに寄り添う判決を出してくれたと」話していたとあり、学校法人側は「私たちは視覚障害者を苦しめるために裁判をしているわけではない。規制ができてから50年たっても国が何もしないため視覚障害者の生活の維持が難しいと判決で認められた。このままであれば今と同じ状況が続いてしまうと最高裁に主張したい」と話していたとあります。
どちらも<視覚障害者のため>だと話しています。どういうことでしょうか。矛盾しているように見えます。
これが大きな問題を表しています。
法律でしっかりと「あん摩マッサージ指圧師免許を持たない者は医師を除いてあん摩、マッサージ、指圧を業としてはいけない」とあるのです。そのような法律があって施行されています。そうであるにも関わらず、整体と称してあん摩マッサージ指圧師免許を持たない人間が堂々と仕事としてマッサージ行為をしているのが現状です。
視覚障害者はあん摩マッサージ指圧師免許を持たないマッサージ行為をする人々に仕事を奪われているのです。そこを改善しないといけないということを原告学校法人側は一応言っています。一応というのは営利目的もあることは仕方がないことなので。
よって前提として、あん摩マッサージ指圧師を持たない者のマッサージ行為を容認している現状が視覚障害者を苦しめています。そこを改善しないで何が新設校解禁なのか、ということが視覚障害者の本音でしょう。またその現状を分かった上での学校法人側のコメントだと言えるのです。
2年前に元陸上選手の為末大氏はTwitterでこのようなことをつぶやきました。
『
Dai Tamesue (為末大)@daijapan 2018年4月28日
マッサージは利権化しているので、誰でも使えるようにしたほうがいい。すでに現場の選手たちは免許あるなしに技能の違いを感じていない
』
この的外れなつぶやきにあん摩マッサージ指圧師や視覚障害者は憤慨しました。何が利権なのでしょうか。法律があることも理解していないのでしょう。どれだけ視覚障害者を傷つけるのか分かっていません。来年東京パラリンピックが行われたとしたら視覚障害者のパラリンピック選手には少なからずあん摩マッサージ指圧師の仕事をしている人がいるでしょう。その人たちにお前たちの利権だというのでしょうか。
あん摩マッサージ指圧師に関することには、常に視覚障害者のことがついてまわります。誰も好きで視覚障害を持ったわけでないのに、健常者は視覚障害者の仕事を奪っていく。そのような気持ちがあります。知り合いの全盲のあん摩マッサージ指圧師が話していました。
『特別支援学校に入ってあん摩マッサージ指圧師になる勉強をするけれど全員がやりたいわけではない。音楽、プログラムなど別分野に挑戦しても健常者に負けて仕方なくあん摩マッサージ指圧師に戻ってくる。』
視覚障害者の生きる道として古くからあった按摩師。その流れを組むのが現在のあん摩マッサージ指圧師なのです。最高裁の判決がどうなるか分かりませんが、江戸時代に杉山和一検校が世界初めての視覚障害者の就業支援機関を作った日本で、視覚障害者のためにあん摩マッサージ指圧師があるということは広く認知してもらいたいです。
利権化などしていません。むしろどんどんあん摩マッサージ指圧師の環境は悪くなっています。
甲野 功
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