開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
あと1週間で2020年、令和2年が終わります。
今年は何と言っても新型コロナウィルス。昨年の今頃、このような世界状況になっているとは想像もつきませんでした。東京オリンピック・パラリンピックが開催されて、日本が大きな前進を果たすと信じていました。様々な問題(エンブレム盗作疑惑、新国立競技場設計、ボランティアメンバーの募集、マラソン競技を北海道で行う、などなど)があったとしても開催されて、結局良かったね、で2020年を終えるものだと。訪日外国人観光客はピークになり各産業が潤うものだと楽観視していました。
オリンピック開幕式に合わせて特別に休日を動かして臨むはずでした。蓋を開けてみれば外国人観光客は消えて、各種産業が大打撃。今は緊急事態宣言のときよりも感染者数は増えて忘年会も新年会も帰省すらも難しい状況です。専門医療機関は限界が近いと言われています。
人生において初めて体験する事態。これを個人事業主という立場で経験するのは重要なことです。感染拡大、症状悪化も懸念しますが、目の前にある経営という問題が大きく立ちはだかります。この1年間で飲食店をはじめ、多くの店舗が撤退する様を見てきました。倒産した企業もあります。
それらは利用したことのない遠くにあるお店ではなく、地元神楽坂の、それも数十年続いた老舗、土地の顔ともいうべき名店が。ニュースではなく身近に起きている事態に本当に他人ごとではないと感じました。
来年がどういう年になるか分かりませんが、今年が非常に混乱した例年にない年であることは間違いありません。あと1週間ありますが、今年2020年の当院が出した数字を振り返って考察してみたいと思います。
経営者として売上、来院患者数、平均単価といった数字から目を背けることはできません。数年後参考になるであろうことを想定して書き出してみます。
まずは月別ごとの売上が、昨年と比べてどうであったか。実数は出しませんがグラフにました。同月昨年比は実数であげてみます。
<売上同月前年比>
1月 133%
2月 124%
3月 103%
4月 46%
5月 62%
6月 73%
7月 97%
8月 96%
9月 114%
10月 54%
11月 100%
12月 98%
年間合計 91%
12月はまだ終わっていないので上乗せされる予定ですが時系列で見れば概ね大差はないでしょう。
今年の1月、2月はかなり好調でした。ともに開業以来の月別最高売上でした。3月もそうでした。この頃は新型コロナウィルスが日本に入ってきたという報道がありましたが院には影響がありません。むしろ昨年で後厄が終わり、今年はオリンピックもあり飛躍の年になりそうだと期待していたくらいです。
3月の終わりに志村けんさんが新型コロナウィルスからの肺炎で死去するという衝撃的なニュースが出ました。この出来事から雰囲気が変わったと思います。4月に入ると一気に患者さんが来なくなります。緊急事態宣言により外出自粛となりました。
それまで来ていた方々が来なくなります。前年比で半分以下になるという急降下でした。奇しくもこの売上が持続化給付金を申請できたのでした。
5月はゴールデンウイークを終えた辺りから段々と患者さんが増えてきます。これには当院に幾つか有利な点があったからです。
まず緊急事態宣言下でも鍼灸院、マッサージ院(国家資格を持った医療従事者が運営する施術所に限る)は休業要請対象外でした。つまり社会に必要とされると東京都に認められたことであり、反対に自主的に休業しても何も休業補償は出ないということ。
そもそも我々の施術所は開設時に保健所の立会検査があり、換気設備と消毒設備があることが必須条件です。換気できるように環境を変えるとか消毒備品を急いで揃える必要がありません。マスクも消毒アルコールも在庫を揃えていました。
次にベッド一床の個人院であること。基本的に患者さんと一対一にしかなりません。密集することは無く、誰と鉢合わせるか分からないという懸念が無いのです。予約時間を調整すればいいですから。まあ当時はそのような心配が無いくらい暇でしたが。
これがかつて修業した鍼灸整骨院のようにベッド6床、スタッフが常時5~8名という現場では大変です。一度に10名くらい患者さんがいることもありますから密集以外の何物でもありません。利用者は高齢者ばかり。常に大声で接遇していましたから、スタッフも利用者も避けたくなる環境。個人院であることが有利に働きました。
立地が住宅街の目立たない場所にあること。普通に考えると営業には向かいのですが、緊急事態宣言下ではそれが役に立ちます。大通りから入った車がほとんど通らない住宅地に当院はあります。どこにも行けないお年寄りや子どもは院の前の道で散歩、ランニング、遊ぶなどしています。住宅街ですからリモートワーク、学校休校となった住民がずっと家にいて普段よりも人通りが多くなっているのでした。
そこで看板を見て、休業していないことを知り、それなら行ってみようかという人が増えたのです。デイサービスもジムも交流会も行けなくなった本当に近所の高齢者が初来院。リモートワークになって普段は当院が開いている時間帯に家に無かった会社員が仕事の合間にくる。そういった逆転現象がありました。
6月には前年比で7割、7月と8月でほぼ前年と同じくらいの売上に戻ります。9月には昨年同月を超えて開業以来最高の月別売上を出します。これでもう大丈夫だと安心した矢先でした。
10月になると売上が激減。前年比で半分を切ることはありませんでしたがそれに近い結果に。実数でみても9月の半分ほどの売上でした。
これは非常に堪えました。
4月の落ち込みは日本全体が新型コロナウィルスで不安になりどこも不調。うちだけではないという妙な安心感、連帯感がありました。仕方のないことだと。10月の激減はそうではないので。世間ではgo toキャンペーンが始まり経済活動が活発化していました。人の往来が増えて活気が出ていました。かく言う私も2週連続で日曜日に子どもと箱根旅行にいったほど。世間の盛り上がりから見放されたような気持ちになりました。
また10月はチャリティーマッサージを行うのでそこに全力を注いだため意識が散漫になっていたかもしれません。チャリティーマッサージ自体は過去最高額を出しましたがこれは売上にはなりませんので。9月の盛況に気が緩んだのとチャリティーマッサージに気をとられ過ぎたという反省が残りました。
11月からはまた売上が回復し前年と同じ額になります。今月12月も調子が良くこのまま行くと昨年を超える見込みです。
この数字を分析すると11月から新型コロナウィルス第3波が関係しているかもしれません。別業種の経営者をしている患者さんが話していましたが、10月は物販、流通、飲食が凄く良かったそうです。それが11月に入ったら一気に悪化したというのです。感染者数が激増して活動を自粛したのがはっきり出たそうです。今はgo toキャンペーンも中止しています。
患者さんは当院に来るよりも外で娯楽を楽しむことにしたのかもしれません。同じように東京都23区内で開業している同業者も10月は悪かったと話していました。うちのような住宅街の院はそういう影響を受けたのかもしれません。
さて今年1年を通してみると売上前年比は9割とそこまで悪くないのです。4月、10月の大きな悪化が無ければ昨年並みかそれ以上だったかもしれません。
これはローリスク・ローリターン型の運営が功を奏したと言えるでしょう。立地は良くない代わりに家賃が高くない。一人だけで行うので大きな売上が物理的に見込めない(時間と体力の限界がある)。地域密着型であるので新型コロナウィルスを恐れず通勤できるし休業する考えが無かった。このようなもの。
これが繁華街の好立地に広い店舗を構えて大勢のスタッフを雇うハイリスク・ハイリターン型だったらダメだったでしょう。人が出歩かなくなればハイリターンが消えてハイリスク(家賃、人件費、通勤時の不安、密になる危険など)が残るだけです。撤退する店舗の多くはこのパターンで地元の個人商店は結構残っている印象です。
売上とは別に来院する患者数に目を移してみましょう。同じようにグラフにして前年比をみてみます。
<患者数前年比>
1月 115%
2月 106%
3月 100%
4月 47%
5月 54%
6月 61%
7月 84%
8月 83%
9月 100%
10月 56%
11月 93%
12月 78%
年間合計 80%
いかがでしょうか。年間で2割も昨年よりも患者数が減っています。好調だった1~3月、そして9月が前年割れを起こしていないのですが、他の月はどれも前年よりも数が少ないのです。今月も現時点で前年比78%なので患者数が昨年12月に追いつくことはなさそうです。
患者数は大いに減りました。3月まで頻繁に来ていた社交ダンス関係者がぱったりと来なくなりました。例年見込める競技ダンス選手も競技会が開催されませんから来ません。東京都外在住の患者さんで仕事のついでに来院されていた方はリモートワークや退職で来なくなりました。リモートワークで来た患者さんがいる一方でそれ以上に足を運ばなくなった方が多かったのです。
患者数が減っているのに売上がそこまで落ちていない。これはいったいどういうことでしょうか。それは平均単価を見ないとわかりません。平均単価とは患者さんが一度に支払う金額の平均値です。経営をする上で大切な数字です。月別の平均単価をグラフにしました。前年比は以下の通り。
<平均単価前年比>
1月 117%
2月 117%
3月 103%
4月 98%
5月 116%
6月 120%
7月 116%
8月 116%
9月 114%
10月 97%
11月 107%
12月 126%
年間平均 114%
どうでしょうか。軒並み前年よりも高くなっていることが分かります。平均単価が高いということは少ない患者数でも売上が出るということです。
これは昨年5月の開院5周年を機に料金を値上げしたことが大きな要因です。それ以前から来ている患者さんは据え置きですが、2019年5月16日以降に来た患者さんには新料金にしています。その結果平均単価が上がっています。それだけでなく依頼されるコースが高単価なものが増えてきました。長いコース、複数組み合わせたコースを依頼されることが増えてきたので平均単価が上がる結果となっています。昨年5月からの値上げですが、今年になってから目に見えて数字に表れてきました。
患者数減を平均単価増によって売上減を防いでくれたのです。効果が出るのは想定よりも時間がかかりましたが良かったです。
昨年との比較だけでは分からないことも多いので開業した2014年から年単位で数字を追いかけてみましょう。年間売上、年間総患者数、年間新規患者数、年間平均単価の推移をグラフにして昨年比も出してみました。2014年は開業年なので昨年比はありません。
まずは年間売上の推移です。
<年間売上昨年比>
2014年
2015年 170%
2016年 134%
2017年 103%
2018年 110%
2019年 117%
2020年 91%
開業して爆発的に売上が増加しているわけではありません。昨年比300%とかなれば理想ですが。2017年はここが売上の限界かなと思ったものでした。その翌年2018年、昨年の2019年と再び売上が上昇していきました。この勢いで2020年も伸びると踏んでいたのですが。
次に患者数です。売上よりも伸び率が高かったのです。その分今年の落ち込みは目立っています。新型コロナウィルスが収束すればこの数字が戻るのか。それとも。考えなければならない項目です。
<年間総患者数昨年比>
2014年
2015年 165%
2016年 130%
2017年 103%
2018年 109%
2019年 111%
2020年 80%
患者数に直結するのが新規の患者さんです。一般的に既存のお客さんに再び来てもらうよりも新規のお客さんに来てもらう方が遥かにコストはかかると言います。職種によっては数倍の費用や時間がかかると。開業すれば最初は全て新規患者さんであります。新規患者を集めることに誰もが苦労することでしょう。当院も新規患者を集めるのは苦手です。
2018年からブログとSNSを絡めたやり方がうまくまわり始めて新規患者数が激増します。今年はそもそもの患者数が少ないのですが、新規患者数を上げることは大きな課題になります。
<年間新規患者数昨年比>
2014年
2015年 148%
2016年 95%
2017年 111%
2018年 187%
2019年 99%
2020年 85%
最後に平均単価の推移を見てみましょう。分かる通りずっと横ばい状態が続いていたのが今年になり大きく上昇しました。細かく分析すると先に挙げた以外の要因もあるようです。
個人院では時間と体力の制約があるため平均単価が高いに越したことはありません。この数字も伸びるようにしたいものです。
<年間平均単価昨年比>
2014年
2015年 103%
2016年 103%
2017年 100%
2018年 101%
2019年 106%
2020年 112%
開業してから今までも数字を追いかけてきましたが、グラフにして変化を可視化することをしてきませんでした。中小企業診断士が行ったセミナーで必ずしましょうと言われてから早数年。この新型コロナウィルスという前代未聞の状況になりやっと手を付けました。自分で分析するには更に細かいデータを入れてグラフ化しないといけませんが、この段階で作業したことは良かったです。困難が無ければずっとやらなかったでしょうから。この他にも継続率や経費、再来院率など指標がいくつもあります。
普段行う臨床や事務業務は成果がはっきりしません。数字だけがシンプルではっきりとしたデータになります。昔から理科系なのに数字と向き合うのが嫌で避けてきましたが、今やそう言っていられません。来年はよりシビアに数字を追いかけて手を打とうと心に決めています。
甲野 功
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