開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
これから鍼灸業界のWEBサイト「ハリトヒト。」にて『フレンドリー鍼灸院マップ(仮)』が立ち上がるようです。このマップには、鍼灸養成校の学生や同業者の鍼灸師も気兼ねなく施術を受けに来てもいいですよという鍼灸院が登録し、関係者同業者が行くことができる全国の鍼灸院を可視化しようとするものだそうです。Twitter上で作成にあたり当院を参考した部分があるという担当者のコメントを目にしました。そうなのかと思う反面、このマップを作る必要について考えることになりました。
世間には鍼灸学生お断り、同業者である鍼灸師お断りの鍼灸院が存在するようです。方針は各院の事なのでそれはいいのですが、学生や新卒鍼灸師には見学勉強がてら行ってみたいという需要があるからこそ、このマップが始まるのだと推測します。
果たして受け入れる側の鍼灸院はどうなるのでしょう。
わざわざ“鍼灸師フレンドリーだよ!”と明言するのは怖いと感じるところもあるではないでしょうか。前回書いた通り、経営上プラスよりもマイナス面が大きいと考えるかもしれません、院のシステム上難しいこともあるでしょう、そもそも同業者と関わりたくないという人もいるでしょうし、患者さんが一杯で時間を取れない、という事情もあるかと思います。
特に複数のスタッフで運営している鍼灸院では現場の意思疎通がないとできません。院長は是非ともと言っても現場に出ているスタッフは大いに迷惑ということも。
私は機会があれば他の鍼灸院に行って鍼灸を受けます。行ったところはほぼ全て紹介していますが、両手の指では足りないくらい訪れました。昨年からは学生ペア割という鍼灸マッサージ学生さんを受け入れる取り組みを表に出してやっています。
鍼灸師フレンドリーな鍼灸院(鍼灸師)をやったきました。実際のところはどうなのか書いていきましょう。
〇学生さんウェルカムにできるのは何故か?
それは当院のシステムが学生さんを受け入れやすい環境なのです。
・時間の余裕がある
はっきり言えば暇。受け付ける時間的な余裕があります。うちは1年先まで予約でいっぱいのような状況では無いので学生さんだろうが来院を希望される方を断る理由がありません。もちろん予定が入っていれば、その日その時間は対応できないので別の時間帯にお願いしますと言います。忙しすぎて学生さんを受け付ける余裕が無いのでお断り!とはしていません
・一人でやっている
一人でやっていますから意思決定は自分。誰かの声や顔色を伺う必要が無いので自分の裁量で決めることができます。つまり好きだからこうしているだけの話です。
〇同業者お断りにしない理由はぜか?
・自分も行くから
私も他の鍼灸院に行くことをしています。それは交流する、勉強になる、参考にする、偵察する、などの理由があります。実際に体験してみたいという興味が先立つので、純粋に治療をしてもらいたいというのは二の次になることが多いです。予約をして行くことが決まったら敢えて体を酷使して疲れさせる場合もありますが。
そうやって他の同業者に行く以上、自分は受け付けませんというのは道理に反します。当然ながら、鍼灸師ですが予約取れますかと問い合わせがあればもちろんですと答えます。来ても一度きりだろう。初診の手間を考えれば割に合わない。とは思いません。来てくれるだけありがたい、という気持ちです。繰り返しますがそこまで忙しくないので。
・鍼灸にこだわりがない
鍼灸師にありがちなことは、自分が行っている流派ややり方にこだわりが強すぎて他を認めないところがあること。学生さんも先生によって言うことが違う、他のやり方を批判している、という経験があるのではないでしょうか。同業者と関わり合いたくないこと一番の理由は、口論を吹っ掛けられて嫌な思いをするから、ではないでしょうか。これまでの経験上多々目にしてきたことです。
私は元々鍼灸に憧れがなくこの学校に入学しました。あん摩マッサージ指圧師になるついでに勉強するくらいの気持ちでした。そのため「鍼灸はこうあるべきだ」とか「この流派で生きていく」といったような気持ちが一切ない学生だったのです。専門学校時代はなるべく鍼を刺されずに刺さずに過ごそうとしていました。鍼をするのも受けるのも嫌いだったので。
鍼灸に真剣に取り組もうと考えるようになったのは資格を取ってから随分経ってから。そのために卒業後5年も空きながらも教員養成科に進学したのです。
今現在も特に流派に対するこだわりがありません。好き嫌いや得意不得意はありますが、あのやり方は認めないという気持ちはありません。法に則っていれば。ですから同業者と口論にならないのです。当院は〇〇流でやっています!というような打ち出し方をしていませんし。他の鍼灸院に行ってもこういうやり方があるのか参考になります、というスタンスなのです。勉強させてもらっているという意識が強いです。同業者の方が来たら同じように色々と話を聞いて勉強させてもらっている気持ちがあります。実際に勉強になりますし。
〇経営上デメリットにならないか?
継続して来院する可能性が低い学生や同業者に時間を割くのは損では無いのかという意見もあるかと思います。
・経営上のマイナスにならないと考える
前提として人を選ぶほど繁盛していません。来ていただけるだけありがたいという状況です。来てくれるなら来た貰った方が良いわけです。
そして例え単発だとしても関係者が来るという事実は大きな効果を生みます。世間の人は鍼灸院の善し悪しがよく分かりません(私にも分からないかも)。消費者が賢くなっているので派手な宣伝に惑わされなくなっていると思います。そういう時代背景において「学生や同業者が行くのならばここは安心できそうだ」というのは大きな効果です。
実際に若い鍼灸師さんがうちに来たことがあり、そのやり取りをTwitterで見て信頼できると思って来た新規患者さんがいました。鍼灸師さんは一度きりですが新規患者さんは継続して来たのでどう考えてもプラスです。
・紹介される可能性が上がります
鍼灸を学ぶ学生や現役の鍼灸師が紹介する院はとても信頼が高くなります。紹介するにしてもその存在を知らなければ紹介のしようがなく、実際に体験していれば存在を認知しているので他人に紹介する鍼灸院のリストに乗ります。非常に印象が悪くブラックリストに乗る可能性もありますが、無の状態よりはチャンスになるのです。
〇関係者への施術はプレッシャーにならないか?
教員養成科時代に同級生の勤めているところに受けに行きたいと言ったところ、絶対ヤダ来ないで、と拒否されました。私よりも年齢も職歴も下だったので嫌だったようです。このように素人ではなく技術を分かっている人にするのはプレッシャーを感じることがあります。
・もう慣れたという感じ
10年以上のキャリアを経て、なるようにしかならないという気持ちになっています。
大学病院で准教授と研修医が見ている前で本当の患者さんに鍼をしたことがあります。プレッシャーを感じるという前にやらざるを得ない状況でした。背伸びしても実力が上がるわけではないので予約を入れた時点で目の前の患者さんであると割り切って全力を尽くすようにします。学校の実技試験とは違うのです。
個人的に同業者よりプレッシャーを感じる人達がたくさんいました。背中に入れ墨(タトゥーではない和彫り)がある方、大手町方面にある新聞社の記者、素性を隠した医者、といった方が遥かに大変でした。
特に新聞記者の方は仕事柄か鍼灸の効果に対する機序を細かく聞いてきて説明に苦労した覚えがあります。専門用語を知らないのですが知識があるので理解力が高く現代医学と東洋医学の両方から説明することになりました。
そもそも同業者でありながら行ってみようかなと思うのは鍼灸師個人に興味があるからです。私もそうですが、どれだけ有名でもその鍼灸師に興味がなければ行きません。究極はその人に会いに行きたい、話をしてみたい、という感情が動かします。それがあれば京都でも大阪でも受けに行きました。鍼灸師個人の人柄や取り組み、信念のようなものが見えてこないと行動に移らないものです。私自身がそうです。問い合わせがあった時点で好意的な興味があるはずなので互いに有意義な時間にしようという気持ちで臨みます。
これらのように環境によるところがありますが、学生さんや同業者の鍼灸師が来ることを拒まない鍼灸院作りはやり方の一つです。運営上の不都合はほぼ感じませんし。
『フレンドリー鍼灸院マップ(仮)』の(仮)が取れて実稼働したらどうなるのでしょうか。新たな業界の試みとして注目しています。
甲野 功
あじさい鍼灸マッサージ治療院の取り組みについて書いたブログはこちら→詳しくはこちらへ
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