開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
前回は施術所の広告制限について書きました。マッサージ院や鍼灸院といった保健所に届出を出して職員の現場チェックを受けている施術所は厳しい広告制限が法(いわゆる“あはき法”)で課せられています。
おさらいになりますが広告できることは以下のみです。
1.施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
2.第1条に規定する業務の種類
3.施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
4.施術日又は施術時間
5.その他厚生労働大臣が指定する事項
①もみりようじ
②やいと、えつ
③小児鍼(はり)
④あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第9条の2第1項又は第2項(再開の場合に限る。)の規定に基づき届け出ている施術所である旨
⑤医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
⑥予約に基づく施術の実施
⑦休日又は夜間における施術の実施
⑧出張による施術の実施
⑨駐車設備に関する事項
※ 1~3に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならない。
繰り返しますが法律(あはき法第7条)で規定している広告可能内容はこれだけです。施術内容も料金も載せることができません。いくら何でも情報が無さ過ぎて術者も患者も両方が困るわけです。それで昭和の頃にお灸の適応症を書いたビラを作った者が裁判になり、最高裁法廷で争ったのでした。
あはき法が制定されたのも、先の最高裁が行われたのも、数十年前のこと。当時はインターネットなどありません。病院もそうですが、看板を掲げて開業すれば自然と患者さんが集まるという前提条件だったのだと予想します。
さて時代が流れて平成に。ホームページがあることが当然の世の中になりました。
いまやホームページが無いのは消費者に失礼という最低限のマナーに近い状態です。例えホームページを持っていなくともブログなりSNSなりで情報をまとめておくサイトを持つことが当たり前になっています。
あはき法制定当時は想定されていなかったホームページは広告なのかという話です。
基準は、厚生労働省が医療機関(病院、クリニックなど主に医師が医療行為を行う施設)のホームページが医療広告かどうかの判断です。あはき法同様、医療法も広告制限が厳しくあります。病院の看板で値段や院長の経歴が記載されているものを見たことが無いはずです。
当初、厚生労働省の判断としてホームページは医療広告に当たらないという見解を示していました。
そもそも広告とは何でしょうか?。
厚生労働省の示した「広告の定義」があります。
この中で「広告の定義」を以下のように定めています。
①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
②医師・歯科医師や診療所等の氏名・名称が特定可能であること(特定性)
③一般人が認知できる状態にあること(認知性)
①~③のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものと判断
①誘因性、②特定性、③認知性の3つ全てを兼ね備えているものが広告とするわけです。
①の誘因性は広告の目的であるから当然でしょう。患者さんを呼び込むためにするのが広告であるわけです。
②も当たり前でしょう。自分のところに来てもらいたいわけですから場所や個人を特定する必要があります。
問題は③の認知性。ホームページはそもそも検索なりクリックなりして能動的に見にいかないと閲覧できません。看板ならば見る意思が無くても目に入ってしまったということがあります。ところがホームページは意思が無くては見ることができません。よって医療機関のホームページは③認知性が乏しいため広告では無いと判断していました。
そうなると、患者さんの知りたい情報をホームページに掲載することはむしろ良しとなります。副作用は、術後の経過は、実績は、設備状況は。医療機関に行く前に知りたいことが多数あり、それらを調べるのにホームページはとても有効なのです。紙のチラシや看板と違って、実質無限の情報量を掲載することが可能ですから。
これは前に開業している医師に聞いた話ですが、もうかなり前になるそうですがクリックや病院はホームページを作るように指導された時代があったそうです。患者さんへ情報提供するためにもホームページがあった方が親切であるということでしょう。
マッサージ院、鍼灸院、接骨院といった施術所もこれにならいホームページには料金やスタッフの経歴、実績などを載せることが認められ、患者さんのためにも経営面においてもホームページをしっかりと作ることは大切になりました。
しかし時代がまた進み平成の終わりの頃。主に健康保険が適応されない自由診療において医療機関の誇大広告が問題視されるようになりました。ホームページには医学根拠の乏しい内容や一見すると患者さんを勘違いさせるような表現が見受けられてトラブルが起きるようになりました。またホームページは認知性が無いということで広告とみなさない判断した時代とは異なり、ネット広告の技術が生まれました。検索しなくても検索履歴や閲覧履歴、年齢性別などから自動でネット広告が出るようになりました。それがホームページで誘導するものであれば(直接的にも間接的にも)結局ホームページも広告になり得るということでしょう。
新しい医療広告ガイドラインではこのようになっています。
厚生労働省ホームページより
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)
『
1 広告の定義
法第2章第2節「医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」の規定による規制の対象となる医療に関する広告の該当性については、次の①及び②のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものと判断されたい。
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
なお、①でいう「誘引性」は、広告に該当するか否かを判断する情報物の客体の利益を期待して誘引しているか否かにより判断することとし、例えば新聞記事は、特定の病院等を推薦している内容であったとしても、①でいう「誘引性」の要件を満たさないものとして取り扱うこと。ただし、当該病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当すること(その上で省令第 1条の 9 第 1 号の規定に基づき禁止されること)。
また、②でいう「特定性」については、複数の提供者又は医療機関を対象としている場合も該当するものであること。
』
③の認知性が除かれて①誘因性と②特定性の2つを満たすものを広告と定義することに変更されました。よってホームページも医療広告に入ることになり、その掲載内容もチェックを受けることになりました。
この資料には具体的に広告禁止、すなわちホームページに掲載してはいけない内容を列記しています。
①広告が可能とされていない事項の広告
②内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
③他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
④誇大な広告(誇大広告)
⑤患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
⑥治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
⑦公序良俗に反する内容の広告
⑧その他
細かくは触れませんが資料には具体例を出して細かく記載しております。
そしてマッサージ院、鍼灸院もこの医療広告ガイドラインに準ずることになるので同じようになる方向です。現在進行形で有識者の広告検討委員会が開かれており議論されています。新型コロナウィルスのために延期が続いていますが。
どちらにせよ今後はホームページの掲載内容にも注意をしないといけなくなります。それもこれも利用する患者さんへ不利益をもたらさないためです。我々は専門職であるため一般の方よりも、自分の分野において多くの情報と知識があります。その差を用いれば実質騙すことが可能となります(それはどの職業でもそうでしょう)。専門知識があることを使って不条理に自分を有利にすることは許されません(消費者保護の観点)。
なお、営利的な広告の自由の規制というものがあるそうです。これは鍼灸マッサージ教員養成科で弁護士の講師に習った内容です。
広告内容は憲法で保障する基本的人権である「表現の自由」と関係してきます。しかし「表現の自由」には2つの基準があるといいます。
①政治的な表現の自由。これは制約不可です。
②経済的な表現の自由。これは「公共の福祉」による制約が可能であると。公共の福祉を損なうことがあるならば法で規制できるということです。新型コロナウィルスに関わることを考えると理解できることでしょう。
施術所のホームページも広告とみなされて、医療広告として掲載してはいけないことは守らないといけない時代が来ます。なぜそうなったのかという経緯を理解して違反しないように気をつけていきます。
甲野 功
コメントをお書きください