開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
日本映画興行収入の記録を更新し続けている映画『鬼滅の刃 無限列車編』。令和最初の国民的ヒットと称されるビッグコンテンツになった「鬼滅の刃」。子ども達も大好きです。シール付きのお菓子はすぐに売り切れてしまいます。
さて「鬼滅の刃」は日本古来の風習や歴史を取り入れて作られていることはよく言われています。そのおかげで和装関連や伝統工芸品関連の方々もブームの恩恵を受けています。
「鬼滅の刃」は鬼殺隊という鬼を狩る集団の話で、主人公の竈門炭治郎が始祖の鬼を退治する内容。シンプルと言えば非常にシンプルなストーリー。その鬼殺隊には階級が存在します。最高位の9名の「柱」という階級が別格で、その下に甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸と10階級存在します。
鬼殺隊隊士になるには選抜試験と言われる捕まえた鬼が放たれた山で生き残ることが条件。そこで生き残ると隊士として一番下の「癸」から始まります。順番に階級が上がっていき「甲」が「柱」に次ぐ階級になります。
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸。これをまとめて十干(じっかん)と言います。「鬼滅の刃」を読んで初めてその存在を知ったという人も多いのではないでしょうか。実は私も甲乙丙くらいしか知らず、十干全てを認識していませんでした。名前が甲野ですから、”甲乙つけがたい”とか”甲種・乙種”といった言葉は馴染みがあったのですが。
この十干、実は東洋思想と深い関係があることを知りました。たぶん鍼灸専門学校時代の東洋医学概論に少し出ていたと思うのですが完全に忘れていました。十干について東洋思想の面から説明しましょう。
まず読み方からです。「甲」は音読みで「コウ」、訓読みで「きのえ」です。音読みはいいとして訓読みは何がどうして「甲」を「きのえ」と読むのでしょう。私の名前を「きのえの」と呼んだ人はいません。
訓読みのことは後で触れることにして「甲」以降の読み方を列記してみましょう。
乙:オツ、きのと
丙:ヘイ、ひのえ
丁:テイ、ひのと
戊:ボ、つちのえ
己:キ、つちのと
庚:コウ、かのえ
辛:シン、かのと
壬:ジン、みずのえ
癸:キ、みずのと
どうでしょうか。音読みは漢字そのままですが訓読みは独特で普通に読むことは難しいです。しかし法則があることが分かるでしょう。これは陰陽五行説を配当しているのです。
陰陽五行説とは東洋思想の基本中の基本となる考え方。元々は陰陽論と五行説という別々のものでしたが後に組み合わさり陰陽五行説となります。鍼灸専門学校では東洋医学概論という学問を必ず勉強するのですが最初に出てくる内容です。
まず陰陽論とは万物を陰と陽の二つに分ける考えです。男女、上下、左右、などなど。そしてその分け方は相対的で状況によって変化をするというものです。出だしを「鬼滅の刃」という少年ジャンプの作品にしましたが、この陰陽論を取り入れたのが昭和に大ヒットした「北斗の拳」です。こちらも少年ジャンプ連載作品です。北斗と南斗の対比は陰陽論そのものなのです。
続いて五行説。これは万物の属性は木・火・土・金・水の5種類に分類できて相互に関係するという考えです。お寺の吹き流しも五色で五行です。
同じく少年ジャンプの人気作品「NARUTO」にもこの五行がエッセンスとして取り入れられています。五行説には相剋関係、相生関係というものがあります。それを忍術(チャクラ)に取り入れた個所が「NARUTO」には出てきます。知っているとおお!と思うことでしょう。
さてこの陰陽論と五行説を組み合わせると2×5で10種類できます。そうこれが十干に配当されているのです。
訓読みの最初、「の」の前だけをみると、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の順で「き」・「き」・「ひ」・「ひ」・「つち」・「つち」・「か」・「か」・「みず」・「みず」と二つずつ並ぶのが分かるでしょう。これが五行の「き」→「木」、「ひ」→「火」、「つち」→「土」、「か」→「金」、「みず」→「水」に対応しています。
そして最後の文字は「え」・「と」・「え」・「と」・「え」・「と」・「え」・「と」・「え」・「と」と交互に続きます。これは「え」→「兄」:「陽」、「と」→「弟」:陰を示しており陰陽論に対応しています。
よって「甲」は「木の兄」(きのえ)という意味、「乙」は「木の弟」(きのと)という意味になるのです。まさに陰陽五行説です。その意味のため漢字に対して読みようがない読み方を置いているのですね。ちなみに十干と十二支を組み合わせたものが干支なのですがこれを「えと」と読むのはこの「兄弟」(えと)に由来するそうです。十二支と東洋思想についても後日触れてみようと思います。
さて五行には方角(五方)も決められています。そのため甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸には甲から2つずつ東・南・中央・西・北と方角が割り当てられています。五方も東洋医学概論で五行色体表というものを覚えるのですが、そこで必ず習うことなのです。
そのため十干に方角?という気持ちよりも、五行説そのものなのか!と納得してしまいます。これに十二支を組み合わせると二十四山(二十四方位)になります。恵方巻で毎年食べるときに向く方向も十干が元になっています。
十干には年月を表す「年の十干」があり、西暦での下1桁が割り当てられています。十干と十二支を組み合わせたものが干支で10と12の最小公倍数である60種類になります。そのため60年経過すると一周するので、60歳を還暦というわけです。
明治維新となった幕府軍と討幕軍の戦を戊辰戦争といいますが、これは十干の戊(ボ・つちのえ)の年であるのです。戊の年は8。戊辰戦争が起きたのは和暦では慶応4年・明治元年で西暦にすると1868年です。西暦の1桁が8ですね。
このように十干というものは陰陽五行説を知っているとより理解できますし、陰陽五行説を知らないと何が何だか分からないことかもしれません。私も東洋医学概論で勉強していなかったらふーんという感じでやり過ごしていたことでしょう。「鬼滅の刃」をきっかけに十干と陰陽五行説の関係を学ぶことができました。
甲野 功
コメントをお書きください