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~卒業論文発表会の予習~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科 卒業論文発表抄録集
東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科 第36回卒業論文発表抄録集

 

 

今年も母校である東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科の卒業論文発表会が近づいています。

 

今回は緊急事態宣言が出ており発表会そのものが開催できないのかと思っていたのですが対策を取りつつ行われるということでした。学校に問い合わせて会場に参加すること届け出を出し、今年も行きます。

 

事前に抄録集をもらい発表テーマを予習することにしています

 

毎年のことですが私なら絶対に取り組まないテーマ、注意しないデータ、意識したことのない考え方が目白押しです。初めて目にする言葉・用語をあらかじめ調べておきます。そうしないと何を言っているのか分からないことがままあります。

 

私にとって未知の手法、評価法、ジャンル。あはき(あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師の略)の世界は対応する分野が膨大なので全てをカバーすることはほぼ不可能です。今回だけでも新たな分野へのアプローチを知ります。そしてその分野へ向けた技術、評価法もあり、抄録集で出てきた用語をインターネットで検索してだいたいどのようなものかを把握する必要が出てきます。会場で突然聞いても理解する前に先に進んでしまうでしょう。

 

私にとって、この卒業論文発表会に参加することで得る知識の種類はかなりの数になっているのです。この場を機会に半ば強制的に未知の知識を取り入れるわけです。その積み重なは大きいのです。

 

用語の確認の他にも、研究テーマにどのような傾向があるかを掴むことも大切です。

 

私も現役の学生さんと同じように研究しましたから、環境によりできることとできないことがあることを分かっています。その制約の中でアイデアを凝らして研究するのか。

また母校の鍼灸マッサージ教員養成科は(原則)2年制で2年生の発表を1年生が聴いてそれを参考に1年間かけて研究していきます。上級生の研究を発展させる場合もありますし、エッセンスを取り入れて別のアプローチ方法をすることや完全にオリジナルでテーマを決めることもあるのです。

 

毎年受け継がれる(似た)テーマもあれば新しいトレンドを取り入れたものも。毎年発表会を聴くことで流れのようなものが分かります。

 

今回は昨年冬から猛威を奮っている新型コロナウィルスの影響を大いに受けており、実験系の研究が少なくなっていると教員が仰っていました。その分、症例報告が多いのだと。それは確かにそうだと納得です。むしろこの状況でよく実験系の研究ができたものだと感心します。

また昨年からの傾向ですが発表演題数が多いのです。

今年は2年生25名で発表数が19演題あります。ルールとして一人1演題までで、3名まで一緒に研究することが許されております。もちろん一人で行うのも2名で行うのでも構いません。25名ですと最小で9演題、最大で25演題。この19演題という数は一人で研究する生徒が多いことを示しています。複数名でやる方が楽という見方もあり、ここまで増えることは私が知る限り少なかったです。昨年が今年と同じ19演題で校長先生も今年は多いと話していましたので(参考までに私の代は生徒数が今年より多かったのですが演題数は16でした)。

これは自ら決めたテーマで研究発表したいという気持ちの現れでしょうか。あるいは新型コロナウィルスで連携が取りづらかったという事情でしょうか。何にせよ私が事前に調べる項目が増えるのは確かです。それはそれで大変。

 

本研究会の研究テーマの種類は大きく3パターンあります。

・症例報告

・文献調査

・実験研究

 

まず症例報告。これは実際にあん摩、マッサージ、指圧、鍼灸を用いて患者さんに施術した経過を詳しく報告するものです。最も現場に近い内容です。実験の被験者ではなく症状を持っている(そして困っている)患者さんに対してどのようなことを行い(介入し)、どのような変化(結果)があったのか。それをまとめます。

「木を見て森を見ず」、ということわざがありますがこれは「1本の木を念入りに見ていく」やり方と言えるのではないでしょうか。教員養成科は学生が既に国家資格を取得しております。そのため鍼灸マッサージ専門学校ではできない実戦形式の症例報告が可能になります。私も一臨床家として勉強になります。

 

続いて文献調査。あはきの世界には古典と言われる文献があります。有名なもので黄帝内経や難経。そういった古典文献を研究テーマにそって調べて報告する。あるいは既に発表されている論文を多数調査する。

一見楽そうに見えますが膨大な量の文献を調査しないといけないのでなかなか大変です(少ない文献では研究の価値が高くなりません)。既にあるものを調査するわけですから地道な忍耐力が問われます。症例報告が一人(あるいは少人数)の患者さんを相手にしていくのに対して文献調査は大量の文献(データ)と向き合い整理していくのが特徴です。

 

そして実験研究。調べてみたいことを決めて実験可能かを踏まえて、被験者を集めて実験を行い、その結果を様々な方法で評価します。私が教員養成科での発表はこの実験研究でした。もっとも自由度がありますがやり切るのは困難を伴います。理想を言えばあればこれもしてみたいと最初は考えがちですが、本当にそれができるのか?そして意味があるのか?という問いと向き合わないといけません。実験方法も妥当なものか検討しなければなりません。

詳しく説明すると長くなるのでこれはまた別の機会に書きます。

 

文献調査と実験研究は先行研究を調査しなければなりません。事前に同じことを研究しているのであれば教員養成科では研究テーマとして認められませんので(現実の研究では実験研究に関しては追実験としての意義はありますが)。そのため先行研究を調査するだけでもなかなか大変です。

 

そして出した結果に対してどう評価するのか。これだけ数値が良くなりました、では研究にならず、数学的検定を行って“統計学的に相関が認められる(認められない)”あるいは“有意差が認められる(有意差が無かった)”という状態まで見せないといけません。文献調査でも項目の出現割合や傾向など考察を高める工夫が必要です。

ここをしっかりと通っておくと意図的にミスリードを誘う数字や発表方法に気が付くようになります。私は実験研究そのものもそうですが、検定方法を学びデータを整理するところまで自ら行った経験が特に今に活きています。

 

卒業論文発表会で聴いた内容、得た知識というものは毎年だいたい自分の臨床に影響を与えています。具体的には新しい器材を購入するきっかけになったり(昨年は審美六鍼を導入、過去には吸玉も)、新技術に挑戦する後押しになったり理論体系の手助けになったり

卒業論文発表会にて複数年続けて出てくる技術は、鍼灸マッサージ教員養成科に進学するほど勉強研究熱心な学生が注目しているものですから、今後も受け継がれてメジャーとなる技術である可能性があると思いチェックをしていきます。毎年毎年、初めて知ったよこの技術、というものが一つはあるものです。

 

追実験ではありませんが、臨床や自分の練習を通じて効果を検証して採用するか考慮します。今年も抄録集を読んだ時点でこれは試してみようと思う内容がありました。本番の発表を今から楽しみにしています。

 

甲野 功

 

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