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鍼灸師になるためには絶対に欠かせない東洋医学概論。今週末にはり師・きゅう師(鍼灸師)の国家試験が行われますが国家資格レベルで東洋医学を学ぶのは鍼灸師くらいでしょう。
東洋医学の基本中の基本と言えるのが陰陽五行説(陰陽五行論)。これまで何度も触れていますが、陰陽論と五行説という二つの理論が合わさったものです。
万物を二つ、すなわち陰と陽に分けることが陰陽論。
万物は5種類の属性、すなわち木・火・土・金・水に分けられて相互に関係があるというものが五行説です。
これらを組み合わせて陰陽五行説と言います。
大ヒットコンテンツである「鬼滅の刃」、作中にある鬼殺隊の役職は十干を採用しており、それは陰陽五行説から成ると以前紹介しました。陰陽2種×五行説5種で10種類。東洋医学概論を学んだ者はとても馴染みがあります。
さて鍼灸師になるためにはこれも絶対に外せないのが五臓六腑。<お酒が五臓六腑に染み渡る>、といった使い方を聞いたことはないでしょうか。ここでは、お酒が全身に染み渡る、というニュアンスだと思いますが、鍼灸師は五臓六腑をより厳密に学びます。
五臓六腑の「五臓」とは肝・心・脾・肺・腎を指し、「六腑」とは胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦のことです。臓とは中身が詰まった(東洋医学の意味としての)体内器官、六腑は中身が空洞の(同じく東洋医学の意味としての)体内器官をいいます。これらは現代医学、解剖学としての臓器とちょっと異なります。肝臓と五臓の肝はちょっと違います。心臓と心も異なります。共通する部分も多々あるのですが。解剖学的な生理機能以外の能力も東洋医学においては臓腑にあるとしていて、機能を一まとめにしたシステムという見方もできます。
六腑の三焦だけ聞きなれないかと思います。機能あって形なしと言われるよく分からない存在です。近年は筋膜・腱などを示す言葉ファッシアが三焦にあたると考えられています。さて臓は5個で五行説に対応しています。では六腑との関係はどうでしょうか。実は肝・心・脾・肺・腎に加えて心包というものがあるのです。心包は心を守るものとも言われています。五行でいうと肝(木)・心と心包(火)・脾(土)・肺(金)・腎(水)となります。これだと六臓とも言えます。六臓六腑になり肝⇔胆・心⇔小腸・脾⇔胃・肺⇔大腸・腎⇔膀胱・心包⇔三焦で各々陰陽の関係になっています。
複雑ですが五行説といいつつ6が関係しています。
数字(自然数)にも陰陽があり、5が陽⇔6が陰となります。五臓と六腑でいうと五臓は陰で六腑は陽になり益々複雑です。ただ数字の5と6は陰陽で対応しています。五芒星(ペンタグラム)と六芒星(ヘキサグラム)のように。数字の陰陽でいうと5(陽)の裏に6(陰)が隠れているとすれば、それなりに説明になります。そうすると実は陰陽六行説なのかも?とも考えてしまいます。鍼灸師が学ぶ東洋医学では状況によって5と6を使い分けています。
陰陽六行でいえば2×6で12種類になります。それを対応させているのが十二支です。
十二支とは子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類からなるもの。日本では干支が一番馴染みがあるでしょう。年賀状を作るときに来年の干支は何かと意識します。占い師でもない限り年末年始以外に今年の干支を気にすることはないのではないでしょうか。ちなみに中国では猪ではなく豚だそうです。
十二支の成立は陰陽五行説よりも古いそうなので、十二支に陰陽五行説を当てはめたというのが正しいのかもしれません。
陰陽論としては子から順に交互に陽・陰を割り当てています。
問題は五行説で12は5では割り切れません。どうしたかというと、十二支を4種類に分けて3つずつ木・火・金・水を配当します。そして3つあるグループの真ん中を土旺として対応しました。ちょっとこじつけた感がありますね。そこも解説を加えましょう。
五行には五方といって木火土金水に方角が配当されています。木→東、火→南、土→中央、金→西、水→北です。これは十干も同じです。十二支も方角が割り当てられています。虎卯辰は木のグループで順に北東微南、東、南東微北となっています。続きも3つずついきます。中央はありません。東西南北の4方向で、十二支は12であり4で割り切れる数字。方角を割り当てるのに都合がよかったのです。
十二支と方角は東洋医学の陰陽五行説と組み合わさり現在も色々と関係が残っています。
例えば子午線(しごせん)。子午線とは地図上で北極と南極結ぶ線で経線と一致します。子(し)は北で午(ご)は南であるから子午は北南ですね。あまり知られていませんが(私も調べていて知りましたが)子午線に対して直交する卯酉線(ぼうゆうせん)というものもあります。お分かりのように卯(ぼう)は東、酉(ゆう)は西ですから東西を結ぶ線が卯酉線になります。
もう一つ十二支と方角に関して有名なものが鬼門。鬼門とは北東の方角をさし、北東から鬼(悪いもの)が訪れるという考えがあります。そのため京都でも東京でも重要地からみて鬼門方向に守るための仕掛けがあります。京都御所の北東には延暦寺があり、皇居(江戸城)の北東には寛永寺があります。北東と反対である南西は裏鬼門と言われ、鬼門同様に結界を成すものが置かれています。
十二支でいうと鬼門は丑寅(うしとら)と言われます。そう鬼が牛の角を生やして虎柄のパンツを履いているのはこのせいです。反対の裏鬼門側の十二支が申酉戌で猿・鶏・犬。鬼退治にいく桃太郎が連れて行ったのは猿・雉(鳥)・犬ですね。
十二支と方角の関係は現在も見ることができるのです。
また十二支は12という数字から時刻や月を割り当てやすくなります。時刻は24時間を2時間ずつ十二支で分けています。深夜1~3時の時刻を「丑三つ時」と言いますがこれも十二支の丑からとっています。また月も寅を1月として順番に割り当ています。
なお11月に行われる「酉の市」は“11月の「酉の日」”に行うものです。12日ごとに日付に十二支をあてはめるので、11月最初の酉の日を一の酉、2回目を二の酉、3回目があれば三の酉となります。令和3年(2021年)の酉の日は11月9日(一の酉)、21日(二の酉)で三の酉はないようです。
このように現在も暦や風習に関わる十二支。これを陰陽五行説と照らし合わせてみると違った見方ができます。むしろ専門学校で東洋医学概論を学んだから気付いた見方とも言えます。鍼灸師にならなかったら気に留めなかったことでしょう。想像以上に日常に東洋医学、陰陽五行説は根付いているのだと再認識しました。
甲野 功
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