開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
昨日は東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科で同期にあたる水野アグスティン先生が当院に来ました。
水野先生は昨年ミズノ接骨院・ミズノ鍼灸マッサージ院をコロナ禍の中で開業し、新しい一歩を踏み出しました。教員養成科時代からちょくちょく関係がある同級生の一人です。
今回あじさい鍼灸マッサージ治療院に来たのは、水野先生が自院でオイルマッサージを導入するにあたり相談することでした。
水野先生は柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、専門学校教員免許を取得しております。ネパール棒灸というあまり聞き馴染みのない手技も行います。水野先生が開業したことを知り昨年の夏にお祝いがてらネパール棒灸を受けに行きました。ネパール棒灸もさることながら、あん摩、指圧の技術がとても高く驚きました。学生時代に水野先生の徒手療法を受けたことがなかったのでこれだけ高いレベルなのかと感心したものでした。
その水野先生がオイルマッサージを導入することを決めて相談したいということでした。
我々、厚生労働省認可の国家資格『あん摩マッサージ指圧師』がいうところのマッサージとは、肌の上から直接滑剤(滑りをよくするもの)を塗布して主に求心性(体の抹消から中心に向かう方向)に行う徒手療法のこと、であります。世間の方が認識しているマッサージは我々がいうところのあん摩あるいは指圧になります。つまりマッサージといった場合、オイル(時にタルク、クリームなど)を用いたマッサージのことですから、分かりやすくオイルマッサージと表現します。
オイルマッサージというとエステの印象が強く、美容、リラクゼーション、女性が行うもの、というイメージがあります。そのため男性のあん摩マッサージ指圧師もあん摩と指圧は行ってもオイルマッサージをする術者は多くないと感じています。
しかし私は医療系国家資格としてオイルマッサージもきちんと学び習得し国家試験をパスしてきたので必要なときがあればできるようにしたいと考えてきました。8年前に出張専門で独立したときも6年前にあじさい鍼灸マッサージ治療院を開業したときもコースに入れることに迷いがありませんでした。開業当初はほとんど需要がありませんでしたが少しずつ使用する器材を良いものにして情報発信をしつつ練習をかさねてきた結果、最近臨床で行う機会が増えてきています。特に昨年の新型コロナウィルスで最初の緊急事態宣言が出たときは、スウェーデンマッサージというこれまで知らなかったジャンルのオイルマッサージを練習することができました。
そうしたなか、旧知の水野先生からオイルマッサージを導入したいので相談に乗ってほしいという話がきたのでした。同じようにあん摩マッサージ指圧師免許を持ち徒手療法にも力を入れている水野先生。しかし先生は私同様男性一人で運営する院でオイルマッサージを始めることに色々な面で躊躇があったようです。
私はこれまでやってきた6年間のノウハウや経験を伝えることにしました。
水野先生が来院してまず行ったことはオイルマッサージの知識のおさらいです。
リラクゼーション、美容目的以外の体調を改善させるためにオイルマッサージがあり、その知識と技術と資格を専門学校で学んできました。そこをもう一度確認しておくことにします。概ね話したことは以下のことです。
・外傷や手術後の後療に使える
後療というのは主に柔道整復師が使う言葉なのですが急性外傷(いわゆる捻挫、打撲、骨折、脱臼などのケガ。特に手術を必要としない症例をここでいいます。)や手術後(ここでは傷を縫った、外科的処置を行ったという意味)に行うリハビリテーション期の処置です。患部を長期間固定された場合、関節が固くなって動きが悪くなることがあります。手術痕は引き攣れてしまう、術後の患部が浮腫んでしまう、といったことがあります。そのような場合にオイルマッサージを行うことが有用なことがあります。あん摩マッサージ指圧師のマッサージには「強擦」といって関節部に行う技術があります。これは関節拘縮に効果があるとされており、あん摩マッサージ指圧師以外ではほとんど耳にすることはないと思います。また皮膚の引き攣れや浮腫みに対して直接手で触れるオイルマッサージは機能を戻す効果が期待できます。
元々日本にマッサージが導入されたのは明治時代にフランスから軍医が持ち込んだとされていますから外傷処置と相性が悪くないのです。私も水野先生も柔道整復師でもありますから、このようなオイルマッサージの効能を再確認しておきました。
・皮膚への栄養効果
あん摩マッサージ指圧師理論の教科書に出ていた内容ですがマッサージを行うと皮膚が活発になる効果が認められています。高齢者の患者さんで下腿にあったシミがオイルマッサージをすることで改善された経験を話しました。上記の後療にも繋がる話ですが皮膚に対するアプローチにおいてオイルマッサージは有効であろうということ。美容にも繋がることですが。
・オイルマッサージは主に静脈、リンパに向けている
衣服の上から行うあん摩、指圧との違いは何か。その大きなものの一つが静脈やリンパに向けて行うことです。あん摩、指圧は主に筋肉に対して行いますが、オイルマッサージはもちろん筋肉にも刺激をしますが静脈とリンパへの意識が強くなります。そのため手技を行う方向を重要視します。浮腫みにより効果が期待できるわけです。また圧を入れる方向も変わってきます。
・手が大きい方が有利
水野先生は身長176cm私よりも大きい体格で手も大きいのです。オイルマッサージは手が大きい方が有利。一度の広い面を使えるからです。受けてみると分かりますが皮膚に直接触れるため手の大きさは感触に影響を与えます。手の大きい男性が行う利点と言えます。
・短い時間で広い部位をカバーできる
オイルマッサージの基本は『軽擦』といって撫でる技術になります。接触面が広く触れている時間が長いため比較的短い時間で広範囲にアプローチできるのです。それは患者さんの負担を減らすことになる事があるのです。例えば長時間同じ体勢を取っておくのが難しい方など。
このような話をしました。
なぜ今ここでオイルマッサージを入れるのか?他の技術と何が違うの?といった疑問にしっかりと答えることが必要だということを水野先生に話しました。
続いて器材についてです。
オイル用のシート、蒸しタオルを作るタオルウォーマー、水溶性オイル、専用のタオルなどを紹介しました。オイルマッサージ専用のタオルを別に用意しておくこと。もちろんオイルを落としやすい素材のものです。これはセブンビューティーという専門店があるので見てみるといいよと言いました。
特に大事なことだと力を込めたのが水溶性オイルを使った方がいいということ。開業してしばらくはいわゆる普通のオイルを使っていたのですが、使用後に洗剤で予洗いをして洗濯機に入れないと汚れが落ちないうえに他の洗濯物もオイルの汚れがついてしまいます。これが結構な手間でした。当院は乾燥機を使いませんがオイルがしっかりと落とせず乾燥機内で発火した例もあるようです。水溶性オイルを使うと水で流せるので扱いがとても楽になりました。余談ですが開院5周年を機に料金を値上げしたのですがオイルマッサージについてはむしろ値下げしました。それくらい水溶性オイルに替えたことは大きかったです。
最後は実際に全身のオイルマッサージを受けてもらいました。
当然ですが学校では全身のオイルマッサージを習っています。そこから臨床現場で使っているやり方、工夫、コツなどを伝えながら行いました。術者同士ですから受けることで何をしているのか大体読み取ることができます。時間配分、流れ、雰囲気のようなものを体感してもらいました。
水野先生がオイルマッサージについて相談しに来ていただいたことは二つの意味で嬉しく思いました。
一つは多くの資格と経験を積んできた水野先生が自分を頼ってくれたこと。同級生といえど相当なキャリアを積んできているのに。オイルマッサージに関して言えば教員養成科の教官であった銀座ナチュラルタイムの先生方の方が本職で私よりも上です。男性一人で行う院という似た環境ということもありますが選んでくれたことが嬉しいです。
もう一つはあん摩マッサージ指圧師として男性でもオイルマッサージをやっていこうという人がいること。オイルマッサージは女性術者がやるもの、という印象が強いです。私が知る男性あん摩マッサージ指圧師でオイルマッサージをしっかりと行っている人は本当に少ないです。学校で習ったけれど卒業したらほぼやっていません、という話ばかり。しかしヨーロッパでは男性も活躍する術者がたくさんいるそう。有効な手段で患者さんに提供できる技術・知識・資格があるのならばやらないのはもったいないと思います(患者さんが受けたくない、術者がやりたくないというのならもちろんそれでいいのですが)。
水野先生の今後が楽しみです。
甲野 功
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