今年2月末に行われたあん摩マッサージ指圧師国家試験。「あん摩マッサージ指圧」を略して「あまし」と呼称することが多いです。あ・ま・しとはもちろんあん摩・マッサージ・指圧の頭文字であり、勘違いしているひとは「あま師」と書くことがあります。これですとあん摩・マッサージ師になってしまいます。同じ医療系国家資格を持つ者でも割とこの間違いというか勘違いをしている人は多いのです。
そのあまし師国家試験の結果がデータとして出たので前回の柔道整復師国家試験と同様に見ていきたいと思います。昨年はあまし師、鍼灸師、柔道整復師と4つ一括りで数字を見たのですが今年は分けていきます。
こちらのデータから今年のあまし師国家試では
受験者数1,295名、合格者数1,089名、合格率84.1%
であることが分かります。
第1回から今年第29回の受験者数、合格者数、合格率の推移をグラフ化してみましょう。
受験者数はだいたい3つの期間に分類できそうです。
第1回から第16回までの受験者数が2,000名を上回っていた時期。
次に第17回から第23回のほぼ平坦な時期。
そして第24回以降の右肩下がりの時期。
このような受験者数の推移が見て取れます。
合格率はグラフにすると大きく変動をしているように見えますが概ね80%台で上下しているだけで、柔道整復師のような90%から60%半ばのような大きな変化はありません。受験者数に関しても柔道整復師ほど大きな変化はありません。
これは、あまし師は視覚障害者のための資格免許である、という伝統があるからです(正確には按摩師なのですが。近代になり国家資格にする際にマッサージと指圧を合わせて一つにしました)。江戸時代に全盲の杉山和一検校が江戸に世界初の視覚障害者のための職業訓練機関を作りました。それ以前から按摩師、鍼灸師は視覚障害者が就ける重要な生業でしたが、特に江戸時代8代将軍徳川家綱の時代から職業を守ってきました。
平成8年の福岡で行われた柔道整復師養成学校新設裁判によって柔道整復師及び鍼灸師養成学校の新設が解禁されて爆発的に専門学校が増えることになります。しかしあまし師に関しては視覚障害者を守るために新設を認めない法律があり増えることはありません。現在もあまし師養成学校新設許可を求める裁判が行われていますが、現時点では新たに学校が増えることは実質ありません。
はり師、きゅう師を含めた合格者数を示したグラフが先に挙げた東洋療法研修試験財団ホームページにあります。それをみるとある時期からあまし師とはり師及びきゅう師と人数に大きな差が出ていることが分かります。
鍼灸師や柔道整復師に比べてあまし師の数は少なく知名度が低いと言えます。地域によっては晴眼者(視覚障害がない健常者という意味)のためのあまし専門学校がありません。 合格率が概ね高いのも視覚障害者を守るためと言われており、鍼灸、柔道整復師よりも合格率が高いのは確かです。
それでも現役生といえる新卒受験者の合格率は非常に高いのですが、浪人といえる既卒受験者の合格率はとても低くなっています。第24回から第29回の国家試験の合格率を新卒・既卒でグラフにしましたが大きな隔たりがあります。
既卒では半分以上が合格できないことがわかります。
そして近年は受験者数の減少しています。柔道整復師や鍼灸師も受験者数が減少しているのですが、あまし師の場合、爆発的に専門学校が増えたということはないのでじわじわと減り続けていると言えます。増えすぎたものが元に戻るというわけではありません。 合格者数は来年1000名を切る可能性があります。
今年の試験は最終学年に新型コロナウィルスの影響を直撃した受験生のもの。来年以降は途中退学したケースがありそうで受験者数がより減ることが予想できます。次回、次々回とその影響がどのように出るのか気になっています。
甲野 功
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