～藤の花～

 

 

毎年この時期は紫陽花の名所を紹介し、周年記念で購入した紫陽花のことをブログにしています。もちろん紫陽花が好きなわけで、屋号にもつけるくらいです。

ただし花そのものが好きというわけではなく、紫陽花だけが別格に好きとういだけで花自体はそれほど好きではありません。むしろ興味が無い方でしょう。

紫陽花以外の花の知識はほとんどありません。

 

私は理系出身なのですが物理・数学系と言えます。

文系の方から見るとどれも同じように見えるかもしれませんが、物理・化学・生物・地学の４教科がある理科。専攻によってかなり勉強内容が異なり学ぶ人の性格も違うことが多いのです。

私は大学で物理を専攻し数学と物理が得意でした。対して化学・生物が得意な人は暗記がより必要なことが多く、比較的女性の割合が高いと思います。物理・数学が得意な人の言い分として暗記しなくても問題が解けるからというものがあります。考えれば問題が解ける。化学は化学物質を知らないとまず解けません。生物もそうです。それが良いことなのか悪いことなのかは別として私の考えも暗記することが少ないのが好きな理由の一つです。

 

花は生物の科目になるでしょう。小学校の理科でめしべだ、おしべだ、受粉だ、というのを習いましたが非常に嫌だった記憶があります。鍼灸マッサージ専門学校に入り生理学を学ぶ上で生物を勉強しましたが本当に苦労しました。ミトコンドリア、ATP、細胞膜など暗記することばかりで。数式の方が遥かに楽でした。

 

というわけで花は綺麗だと思いますが、何という花で、どのような特徴があって、品種がどう、といったことに興味が無く敬遠していました。紫陽花だって社会人になって企業勤めの辛さを実感するようになってから、綺麗だな、と思うようになったほど。紫陽花意外には桜くらいしか花への執着がありませんでした。

 

たまに花のことを聞かれることがあるのですが、本当に分からず素直に「知りません」と言います。風景写真を撮影する趣味があるので知識があるように思われることが多いのですが、被写体が何の花かはほとんど認識していません。綺麗だなと思えばシャッターを切る（一眼レフカメラなのでまだシャッターを切るという表現）だけなのです。写真のこの花は何ですか？という質問は困ってしまいます。

 

そのような私も最近気になる花が現れました。それが藤の花です。

 

昨年からの「鬼滅の刃」ブーム。今アメリカで映画が大ヒットをしていて凄い記録を出しそうです。作中、藤の花は重要なアイテムになります。

「鬼滅の刃」はその名前の通り鬼を倒す話です。鬼は人を食べるのですが藤の花に弱いという設定です。そのため藤の花が年中咲いている山からは逃げることができませんし、藤の花のお香を炊くと鬼が寄ってきません。藤の花から抽出した毒を用いればランクの低い鬼を殺すことができます。日輪刀という鬼を倒すことができる特殊な刀とならび、藤の花は「鬼滅の刃」における鬼退治の重要なアイテムとして描かれています。

 

「鬼滅の刃」以前から藤というものを知るきっかけが、同じく少年マンガ、しかもジャンプ連載作品の「ワンピース」でした。「ワンピース」は海賊の話なのですが、海賊を取り締まる組織として海軍が存在しています。海軍の位で“大将”の役職に就いたものは赤犬、黄猿、青雉といったように色＋動物という括りの異名があります。

作中で「藤虎」というキャラが新しく出てくるのですが、当初私は藤色＋虎で大将の異名だと気づきませんでした。むしろこのとき藤色なる色があることを知ったのでした。素直に紫虎とすればすぐに分かったのですが。“しとら”とか“むらさきとら”だと語感が悪いので藤虎にしたのでしょうか。それならばその後出てきた緑牛（りょくぎゅう）も語感がいいとは思わないのですが。

何はともあれ藤色という色があって、藤の花の色ということを知り、藤の花の存在を認識するに至りました。

 

そして２０１４年にアメリカＣＮＮが選出した『世界の夢の旅行先』９カ所の中に日本が選ばれ、それも栃木県の「あしかがフラワーパーク」というニュースが衝撃を与えました。アメリカのマスメディアが、日本では魅力度ランキング最下位争いをしている栃木県の施設に目を付けるとは。当時はこのような印象でした。

その「あしかがフラワーパーク」の売りが大きな藤棚です。藤の花を見やすくするための藤棚。藤特有の植え方でしょう。他の花で棚というものを知りません。

 

「あしかがフラワーパーク」の藤棚の規模は世界一と言われています。その光景はテレビ画面越しでも見事だと分かるほど。なお先に挙げた「鬼滅の刃」のアニメではここの藤棚を参考にして描かれたと思われるシーンがあり、「鬼滅の刃」ファンには「あしかがフラワーパーク」は聖地とされています。私の娘も「鬼滅の刃」が大好きで、「あしかがフラワーパーク」の藤棚を見たいというくらいです。

このようなエピソードが重なり、紫陽花、桜、やや朝顔くらいしか花に興味がなかった私でも、“藤の花もいいなあ”と興味がわくようになりました。

 

特にこの春は「鬼滅の刃」で散々出てくる藤の花、実物を娘に見せてあげたいなと思っていました。藤棚で有名な所を調べてみるともちろん「あしかがフラワーパーク」が筆頭で「小田原城」や箱根が出てきました（箱根は藤棚ではなく自然の藤が自生している場所があります）。

しかしこの緊急事態宣言。県外に旅行に行くのは難しい状況に。藤の花を来年は見たいなと思っていました。

 

ところが。予想しない所に小規模ながら藤棚がありました。

 

それは戸山公園（箱根地区）。

家から近い東京都新宿区の名所箱根山を有する戸山公園です。箱根山は東京２３区で最も高い山（ただし人口の築山で自然の山だと港区の愛宕山になります）として有名で私が物心つく前から遊びに行っていた場所。

 

その箱根山近くの多目的広場に藤棚がありました。これまで何度も来ていて、娘は保育園の散歩でも訪れていた場所。２週間くらい前に箱根山で登山の練習をしに長女と行ったときに偶然見つけました。

見えたときは本当に驚きました。これは藤棚だったのか、と。花が咲いていない時はただのオブジェにしか見えなかったので。よく公園にある建造物だと。

 

美しく紫色に咲いた花が上から垂れている様子は感動的でした。長女も「鬼滅の刃」と同じだと興奮。身近な場所にこのようなものがあるとは。自宅そばでも藤の花が見ることができて本当に良かったです。

 

 

 

そして藤の花が好きになりました。長女と来年は「あしかがフラワーパークに行きたいね」と話をしています。ここには紫以外にも黄色と白の藤があるようですし。二人とも風景写真を撮るのが好きなので紫陽花シーズン前に撮影旅行に行こうと企画しています。

 

甲野　功

 

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