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~健康被害事故対応における課題点~

総務省ホームページより
総務省ホームページより
総務省ホームページ 消費者事故対策に関する行政評価・監視 より

 

 

昨年11月に総務省が関係各所に勧告を行いました。これは医業類似行為およびエステティックによる事故が起きていることを踏まえ、実態を調査して結果です。

 

総務省ホームページ

消費者事故対策に関する行政評価・監視 -医業類似行為等による事故の対策を中心として-<結果に基づく勧告>

 

具体的には消費者庁と厚生労働省に向けての勧告です。

一部抜粋します。

 

総務省では、消費者の安全・安心を図る観点から、医業類似行為(注)等による事故に対する関係府省における被害防止対策の実施状況、都道府県等における取組状況等を調査し、その結果を踏まえて関係機関に勧告を行いました。

 

1.総務大臣から消費者庁長官に勧告

保健所、警察機関及び消防機関が受け付けた健康被害情報を含む苦情、相談及び救急搬送を通じて得られた情報が、消費者庁に通知されていないという実態がみられたことから、通知制度の意義等の周知徹底などの取組を消費者庁に求めました。

 

2.総務大臣から厚生労働大臣に勧告

保健所では、受け付けた医業類似行為による健康被害等に関する相談に対して、多くは事実確認を行わず、関係機関の案内のみ実施している実態がみられたことから、都道府県等に対し、関係法令に基づく指導の権限を示した上で、事業者等に対する必要な指導の徹底を要請するよう厚生労働省に求めました。

 

この総務省からの勧告を受けて、厚生労働省は先月3月15日付で各所に向けて「医業類似行為業等に関する指導について」と題する通知を出しており、このことについて以前ブログにしました

 

 

総務省が出した消費者事故に関する結果報告書は以下のタイトルで出されています。

 

総務省ホームページ 報道資料 令和2年11月

消費者事故対策に関する行政評価・監視 -医業類似行為等による事故の対策を中心として- 結果報告書> 

 

 

総務省行政評価局 結果報告書

 

 

今回はこの調査から主にどのようなことが分かったのかを書いていきます

 

結果報告書には調査期間が平成30年(2018年)3月~令和2年(2020年)11月までとありますから2年半を費やしています。大掛かりな調査であることがわかります。なぜこのような調査を行うに行ったのでしょうか。前書きにはこのようにあります。

 

前書き

 

近年の高齢化の進行や健康、美容、癒やしに対する意識の高まりを背景に、「あん摩マッサージ指圧」、「柔道整復」、「整体」、「カイロプラクティック」等の施術や「エステティック」などが広く利用されている一方、都道府県及び市区町村(以下「都道府県等」という。)の消費者行政担当部局や衛生担当部局には、これらの施術により健康被害が生じたとする相談が寄せられている。

 

厚生労働省は、医業類似行為(注)による健康被害やエステティックサロン等における無資格者による医療行為又は美容行為について、事業者等に対する指導等の徹底を都道府県、保健所を設置する市及び特別区に要請している。

 

また、消費者庁は、消費者安全法(平成21年法律第50号)に基づき、消費者事故等に関する情報を一元的に集約し、消費者への注意喚起を実施することとしている。

しかし、医業類似行為等の役務分野に係る健康被害については、対人サービスであるため個別性が高く、因果関係の判断が困難な場合が多いなどの指摘がされている。

 

こうした中で、医業類似行為等による消費者事故に対する関係行政機関の対応状況の実態は必ずしも明らかとなっていない。

この行政評価・監視は、以上のような状況を踏まえ、消費者の安全・安心を図る観点から、医業類似行為等による事故に対する関係府省における被害防止対策の実施状況、都道府県等における取組状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施したものである。

 

(注)医業類似行為には、「あん摩マッサージ指圧」や「柔道整復」といった国家資格が必要な施術のほか、

これら以外の手技、温熱等による療術行為であって人体に危害を及ぼすおそれのあるものが含まれる

 

要約すると以下の通り。

 

・「あん摩マッサージ指圧」、「柔道整復」、「整体」、「カイロプラクティック」、「エステティック」などの施術により健康被害が生じたとする相談が寄せられている

・厚生労働省は事業者等に対する指導等の徹底を要請し、消費者庁は消費者事故等に関する情報を集約し消費者への注意喚起をしている

・しかし、因果関係の判断が困難な場合が多いなどと指摘されており、消費者事故に対する関係行政機関の対応状況は必ずしも明らかとなっていない

・よって関係府省における被害防止対策の実施状況、都道府県等における取組状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施した

 

大雑把に言うと、健康被害が報告されているが現状事故に対する対応策が明らかになっていないため実態調査をした、ということでしょう。そして『関係行政の改善に資するために実施した』と報告書の目的には記されています。

 

ここで出てくる用語として“医業類似行為”があり、それが何を意味するのかを前回色々とブログで説明しました

 

調査対象機関は、消費者庁、厚生労働省、国家公安委員会(警察庁)、総務省という大枠に関連調査等対象機関として、独立行政法人国民生活センター、都道府県(12)、都道府県公安委員会(都道府県警察)(19)、市町村(24)、特別区(4)、一部事務組合(1)、事業者(医業類似行為等を業とする民間事業者)(5)と大規模なものになっています。警察庁や地方自治体にも調査しているところが目を見張りました。事件、事故という点からも調査をしたことが伺えます。

 

それでは調査結果はどのようなものなのでしょうか。概要をまとめた資料を参考にします。

 

総務省ホームページ 同ページ 概要

 

まずは、<医業類似行為等に係る事故情報の消費者庁への通知状況>について。

消費者庁は、消費者安全法に基づき消費者事故等に関する情報の通知を受け、事故情報の概要を定期的に公表します。通知すべき情報の考え方等を示したマニュアルを作成し、関係各所に周知します。そしてこれらの情報を活用して消費者への注意喚起を実施します。

調査結果は以下の通り。

 

衛生担当部局(46保健所等を調査)

46保健所等のうち34保健所等において、健康被害情報を含む苦情等を計174件受け付けるが消費者庁への通知実績はありませんでした(平成26~29年度)。その主な理由は

通知制度の不承知

事実関係の把握や施術と健康被害との因果関係の判断が難しく、消費者事故等の該当性を判断できなかったこと

とあります。

 

警察機関(19都道府県警察を調査)

19都道府県警察のうち15都道府県警察において、健康被害情報を含む苦情等を計45件受け付けたが、警察庁への報告実績はありませんでした(平成26~29年度)。その主な理由は

・事実関係の把握や施術と健康被害との因果関係の判断が難しく、消費者事故等の該当性を判断できなかったこと(消費安全性の有無の判断には幅広く専門家等への意見聴取が必要であり、警察独自の判断は困難)

・重大事故等に該当せず、かつ、被害拡大のおそれがなかったこと

とあります。

 

消防機関(20消防本部を調査)

20消防本部のうち15消防本部において、医業類似行為等の施術中又は施術後に健康被害が生じたとみられるものなど98件を救急搬送したが、消防庁への報告実績はありませんでした(平成26~29年度)。その主な理由は

・通知制度の不承知

・施術と健康被害との因果関係の判断や治療に要する期間の把握が難しく、消費者事故等の該当性を判断できなかったこと(救急搬送に当たっては、消費者事故等に該当するか否かの判断に必要となる情報が得られない)

とあります。

 

 

 

 

驚くことに健康被害情報が3年間に渡り消費者庁にも警察庁へも消防庁にも報告実績が無かったと報告しています。理由において共通することは、因果関係の判断が難しいことが挙げられます。本当にその施術が原因なのか?という疑問があるということでしょう。とても難しいことですが、判断できませんでしたで済むのか、という話です。特に98件も救急搬送しているというのに。救急搬送するほどのことなのに必要となる情報が得られなかったということで報告されていないというのはどういうことでしょう。

 

 

続いて<医業類似行為等に係る健康被害に関する苦情等への対応状況>について。

 

以前説明したように、厚生労働省は医業類似行為において、国家資格者(あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師)の施術により健康被害が生じた場合、あはき法等の規定に基づき行政指導の対象とします。国家資格を持たない者による医業類似行為の施術により健康被害が生じた場合は、あはき法に規定する禁止処罰の対象となるため、保健所等関係機関と連携した指導を都道府県等に要請します。また健康被害に関する苦情等が保健所に寄せられた場合は事実確認を行うことが望ましいと認識しています。

 

エステティックに関しては、医師法第17条(医師でない者の医業の禁止)又は美容師法第6条(無免許営業の禁止)違反のおそれのある情報を把握した場合、事業者に対する指導等の徹底を都道府県等に要請します

 

医業類似行為(32保健所を調査)

32保健所のうち、健康被害情報を含む苦情等(事業者への指導を求めており、施術所を特定できたもの)は11保健所で24件受け付けました(平成26~29年度)。このうち4保健所の7件については、事実確認を行わず弁護士等への相談を案内しています。その主な理由としては

・健康被害に対して指導監督権限がないと認識していること

・施術と健康被害との因果関係の判断が難しく、行政指導を行うことが困難であること

としています。また、厚生労働省がこれまで解釈を示していないため、有資格者の施術により健康被害が生じた場合に行政指導の対象になると認識している保健所がないとしています。

 

エステティックの医療行為(32保健所を調査)

32保健所のうち、エステサロン等における医師免許が必要なアートメイクによる健康被害情報を含む苦情等は3保健所で4件受け付けました(平成26~29年度)。このうち、2保健所の3件については事実確認を行わず警察機関を案内しました。その主な理由は

・ 医療法に基づく許可又は届出のない施設に対する指導監督権限がないと認識していること

とあります。

 

エステティックの美容行為(32保健所を調査)

32保健所のうち、エステサロン等における美容師免許が必要なまつ毛エクステンションによる健康被害情報を含む苦情等は16保健所で33件受け付けました(平成26~29年度)。これらについては、いずれも事業者等から事実確認を行い指導の必要性について検討しています。

 

 

 

保健所は医業類似行為、エステティックに関する健康被害が生じた場合に、事実確認を行わず弁護士・警察を紹介しているという点に注目です。理由は保健所には指導監督権限がないと認識していること。求めらている業務と現場の意識が食い違っているのでしょう。

 

結果報告書の36ページ、4まとめには以下のようなことが記載されています。

 

抜粋

(略)

 

しかし、調査した都道府県等においては、そもそも消費者安全法に基づく通知制度の不知が一定程度あったほか、医業類似行為等に係る健康被害情報を入手していたものの、相談者本人の申出に基づくものがほとんどで、必ずしも事実関係が確認されたものではなかった。これに加えて、調査した都道府県等においては、施術と健康被害との因果関係についても判断が困難であったため、通知すべき消費者事故等に該当するか否かの判断に苦慮していたことなどから、せっかくの情報が現場に埋もれる形となっていた。

 

一方、厚生労働省は、これまで国家資格が必要な医業類似行為に係る健康被害に対する指導等の要請は行っていないが、国家資格が不要な医業類似行為に係る健康被害やエステサロンにおける無資格者による医療行為又は美容行為について、事業者に対する指導等の徹底を都道府県、保健所を設置する市及び特別区に要請している。

しかし、調査した保健所においては、その大半が健康被害に関しては、事業者に対する指導監督権限がないと認識しており、無資格者による医療行為に関しても、事業者に対する指導監督権限がないと認識していること等から、保健所による事実確認が行われていない状況がみられた。

 

(略)

 

 

 

 

 

 

医業類似行為およびエステティックに関して健康被害が生じた場合に、どこか取りまとめてどこが指導を行うのかが曖昧でうまく機能していないということが結果報告書により明らかになり、冒頭にあった総務省から消費者庁と厚生労働省に勧告を出したということに至るわけです。今後システムを改善していくことができるのか注目しています。そして術者の立場である私は健康被害が生じないように常日頃注意をはらい臨床現場に立つことを肝に銘じます。

 

甲野 功

 

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