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~「進撃の巨人」完結~

進撃の巨人第34巻表紙 諌山創 講談社 
進撃の巨人第34巻表紙 諌山創 講談社 

 

 

マンガ「進撃の巨人」の最終巻34巻が発売されました。11年に渡る連載作品が完結しました。

 

「進撃の巨人」。

日本のみならず世界的にも有名な作品となりました。同作は2009年から別冊少年マガジン(講談社)で連載が始まりました。宝島社の「このマンガがすごい!2011」にてオトコ編の1位に輝いたことで一気に一般に広まることになりました。私もこの「このマンガがすごい!」の1位獲得で同作品を知ることになります。何か凄い作品らしいという噂があったからです。

 

当時の私は柔道整復師専門学校に通う学生。第1巻を読んだらなかなかの画の下手さにちょっと驚きました。連載当初は画が下手クソというのは編集部が認めてネタにするほどでした。線が不安定で見づらいのです。初連載の新人ということで仕方ないかなと思いましたが、世界観やストーリーは抜群に面白くて惹かれました。

 

最初は巨大な3重の壁に囲まれた人類が人を食べる巨人の脅威に晒されながらも、多くの一般庶民は平穏な日常を送るという世界。そこに突然壁を遥かに越す超巨大巨人が現れて壁を壊して人食い巨人が居住区に押し寄せてくるという内容でした。1話目から主人公の母親が巨人に食われるという衝撃的な展開。巨人に対して強烈な復讐心を持った主人公エレンの物語が始まります。

 

読み始めた頃は謎の怪物である巨人と人類の戦いという話でした。最外層の壁を突破されて多くの領地を失った人類は巨人から土地を奪還するために動き出します。この頃の印象は、ちょうど柔道整復師になるために勉強していた時期と重なり、病理学の免疫系と照らし合わせてみていました。防御壁を突破された外敵(細菌、ウィルスなど)を巨人に見立て、それらと戦う兵団を免疫細胞(T細胞やキラー細胞など)に置き換えていました。

 

話が進むにつれて単純な巨人対人類という構図ではないことが明らかになっていきます。だんだんと謎が明らかになり、そして新たな謎が生まれて。本当に先が読めない内容でした。無数の考察サイトや考察動画があるように非常に考えさせられる作品でした。

 

間違いなく歴史に残る、そして歴史を変えたマンガだと考えています

 

複雑なストーリー、緻密な伏線を張る作品は「進撃の巨人」以前からありました。

 

同じく今年完結したエヴァンゲリオンが複雑な難解なストーリーの筆頭ではないでしょうか。謎だらけの設定でストレートな説明がなされない同作。宗教要素も入り非常に分かりづらい内容です。現在公開されている最新作以外は目を通していますが正直よく分かりません。考察動画を見ましたがやはり分かりません。更に解説が正解かどうかも分からないのです。解釈は諸説ありますよね、という感じ。「進撃の巨人」もエヴァンゲリオンと同じようにどういう理屈なのか理解に苦しむところがあります。いまだに私は理解しきれていないので複数の情報を参考に「進撃の巨人」を理解しようとしています。

 

緻密な伏線を張る作品と言えばワンピースでしょう。現在99巻まで発売されていますが内容によっては20年越しの伏線回収なんてあります。まだまだ明かされていない謎は多数あって考察本や考察サイトが多数あり盛り上がっています。「進撃の巨人」も後で判明した内容から過去にさかのぼって読むことで、実はこうだったのか!という驚きが幾つもある作品です。この時点で作中にヒントを書いていたのかと驚嘆することが多いのです。

最終巻で一気に多くの謎を解きましたが、全てを説明したわけではありません。作者が残したヒントをファンたちが探して考察を重ねています。

 

歴史を変えたという点でいえば、圧倒的メジャーなダーク作品の先駆けだと思います。

今では他のマンガでもありますが「進撃の巨人」では驚くほどあっけなく登場キャラクターが死んでいきます。ある程度主要キャラクターは最後まで生き残るのですが、かなりの割合で死んでいきます。私が中高生くらいの頃に読んでいた少年マンガではそうそうメインキャラクターは死にませんでした。強いていえばHUNTER×HUNTERがそれにあたりますが、あまりに休載が長すぎて世界的に有名とは言えません。これを除くと有名作品でキャラクターがどんどん死んでいく作品のひな型になったように思います。

 

なお界隈で噂されている話としては、作者の諌山先生は最初集英社の少年ジャンプに企画を持ち込んだのですが、巨人が人を食べるという内容が少年誌らしくないということでボツにしたのだとか。その後講談社の少年マガジンに持ち込み、当時新人編集者だったひとが才能にほれ込み何とか連載に持っていけないかと画策。少年マガジンでは厳しいので月刊別冊マガジンを作って「進撃の巨人」を連載する場を作ったのだとか。後に「進撃の巨人」が大ヒットして、実は集英社の方が先に関わっていたことを知り集英社編集部は非常に悔しがり、このようなダーク作品(人間がばんばん死んでいく、殺されていく)が世間に受け入れられると認識を改めたと。その結果「鬼滅の刃」が生まれる遠因となったらしいのです(「鬼滅の刃」も味方側の人気キャラクターがかなり死んでいく作品で誰が最後まで生き残るのか注目する内容です)。真偽は定かではありませんが、よく噂されていることです。

 

「鬼滅の刃」は最初から最後まで人を食う鬼とそれを征伐する鬼殺隊の話です。対して「進撃の巨人」は人を食う巨人対人類という図式から人間対人間という部分も加わり、実社会の現実を突きつける内容になります。登場人物がドイツ語読みが多く、後にユダヤ人とナチスを彷彿させるストーリーだと判明していきます。もちろん作者も講談社もそのようなことは公言していませんが。

 

そして後半は戦争の不条理とリアルを突きつける物語で「殺戮を肯定するのか?」という賛否が巻き起こったそうです。特に人種問題をリアルに描いているため、日本人よりも海外の人の方がより感情移入をするという記事も見たことがあります。「進撃の巨人」の世界はほとんど平和という状態がなく、常に人間は何かと戦い(殺し合い)続けているのです。それは最終巻まで変わりません。

 

人類は紛争、戦争を捨てることができない、という不条理(それでいて現実)を描いています。巨人という怪物(すなわち絶対悪)と戦っているだけならば単純であったのですが人種同士の戦いになって驚くほどテーマが重たくなりました。常に主人公側は絶望がついてまわり、状況は厳しいことばかり。幼い一般市民も容赦なく死んでいきますし。

最終巻を読み終えてよく完結できたなと感心しましたし感動しました。最終話の直前までどう話を畳むのだろうかと予測できませんでした。だから読者はどうなるのだろうと考察して意見を交わす楽しさがあったのですが。

 

最終巻の背表紙はこの巻だけ異例です。他の巻は黒の背景になっていますが最終巻だけは表紙と繋がった一枚の絵です。しかも作中にはない状況。それが何を意味しているのか。答えは書いていません。

 

 

進撃の巨人34巻裏表紙 諌山創 講談社
最終化の裏表紙は表紙と繋がる一枚絵。なおこのようなシーンは作中にありません。
進撃の巨人裏表紙 諌山創 講談社
通常の巻の裏表紙。黒の背景にキャラクターが描かれている。

 

 

柔道整復師専門学生→都内クリニック勤務→教員養成科学生→開業と、学生から独立と仕事のステージが変化していった11年を一緒に歩んできた作品です。一つの歴史が終わったような気がします。昨年12月の「鬼滅の刃」完結にも似た感情です。この先NHKで最後のアニメが放送されるので映像作品の「進撃の巨人」を楽しみして作品の考察を深めていこうと思います。

 

甲野 功

 

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