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~ムー民~

ムー No.481 ワン・パブリッシング
ムー No.481 ワン・パブリッシング

 

 

ここまで都市伝説や陰謀論が世間に浸透している時代はないのではないでしょうか。新型コロナウィルスによるパンデミックが起きてから、かつては冗談でしょうと世間から相手にされなかった話がまことしやかに語られています。

 

今現在も新型コロナワクチンは新型コロナを蔓延される、マイクロチップが内蔵されている、水銀から造られた、5Gにアクセスするようになる、体に磁石が付く、など害悪しかないからワクチン接種をするなと喧伝する人がいますし、それを信じる人もいます。ワクチンを保管する冷蔵庫の電源プラグを抜こう、などという犯罪行為を推奨するような動きもあります。

 

アメリカではディープステート(DS:deep state)の存在を信じたトランプ支持者がアメリカ連邦議会を襲撃しました。DSとはアメリカ及び世界を影から操る組織と言われおり、昔の少年マンガの表現でいうと「悪の秘密結社」というところでしょうか。このような話は随分前から都市伝説とか陰謀論でささやかれていた内容で、私はよく知っていました。それが現実世界で大事件に発展するとは。NHKのニュースでもDSという言葉が出るのです。

 

1999年のノストラダムスの大予言以来もしくはそれ以上に、いま都市伝説や陰謀論が世界を駆け巡っているように思います。以前と違うのはSNS、YouTube、ブログなどより手軽に情報発信ができる環境でその手の情報(それらしいもの)が氾濫していること。情報量があるのは良いことなのですが(情報に偏りが無くなり多方面から検証できるようになった)、どこまで本当なのかを判断(判別)するのが困難になっています。日本では大臣がワクチン接種に関するデマ情報に気をつけてくださいと警告するような事態に。

 

さてこのような何が本当の事なのか分からない時代。そうなるずっと前からこの手の話題を取り上げ続けた媒体があります。それが老舗オカルト雑誌「ムー」です。オカルト系の話題を取り扱いながらこの出版不況の中生き残っている老舗雑誌。なんとあの学研から創刊されました(現在は別の出版社が発行)。昭和54年(1979年)創刊ですから40年以上続いているのです。

 

私は小中学生くらいの頃からムー関連の本を読んできていて、都市伝説・陰謀論に免疫がつきました。世紀のオカルト雑誌ムーと読むことで得たことを書いていきます。

「ムー」という雑誌は結構有名なので存在を知っている人は少なくないのではないでしょうか。ムー編集部では、愛読者、投稿者を「ムー民(むーみん)」と呼んでいます。そのため分かる人はムー民で通じます。

 

有名人にも結構ムー民はいて、最も有名な人はアニメ映画監督の新海誠氏ではないでしょう。大ヒットした「君の名は。」では登場人物にムー愛読者がいる設定ですし、次回作「天気の子」ではムーに寄稿するライターが登場します(声は小栗旬氏が担当)。細かいところまで写実的に描く監督は2作品ともしっかりとムーの表紙を作中に描いています。

 

私が結婚したとき、家にムーがあるのを見た妻は「実際にムーを買っている人を初めて見た」と言いました。知る人ぞ知る雑誌。扱うことはUFO、宇宙人、心霊、超能力、古代、オーパーツ、予言、都市伝説、陰謀論などなど。いわゆる胡散臭いと思われているジャンルはほぼ網羅していることでしょう。このような雑誌が40年も継続している事実がすごいことです。出版不況で多くの雑誌が休刊廃刊に追い込まれているのに。

 

この謎の雑誌ムーですが、中身は意外と学術的な一面があります。巻頭の総力特集はかなりのページ数を割き詳細なレポート。それも現代科学や情報を元に検証することが多く、内容は論文に近いのです。

現在の編集長は三上丈晴氏で筑波大学自然学類を卒業している理科系。5代目の編集長として2005年から現在までムーの顔として各種メディアに登場します。編集長の意向が反映しているのでしょうが、ムーはかなり現代科学での考察を加えて記事にします。ときに応用物理学科を卒業した私でも読んでいて理解できない最先端物理学が登場します。加えて歴史、民俗、文化など多岐にわたる学問を引き合いに出して検証することがあり、読むのに幅広い教養を求められるのです。

 

そして現実がムーの記事に追いつてくるということもあります。

 

例えばエリア51。アメリカには50か所の軍事基地がありエリア1~50までナンバーリングされています。実はネバダ州に秘密の51番目の軍事基地エリア51が存在していると数十年前からムーでは紹介されていました。主にUFO関連に関わるので非公表にしているという理由で。ムー民には常識でしたがアメリカはその存在を認めないので都市伝説、でっち上げと言われてきました。ところが2013年にCIAは公式にエリア51があることを認めたのです。

私はこのニュースを知って本当に認めるのか、と驚きました。

 

他にはNSA。NSA(National Security Agency)とはアメリカ国家安全保障局のことでアメリカ国防総省の情報機関です。1952年に設立されましたが近年までその存在は非公表でした。昔からよくムー関連の本に出てきて裏工作をしているという話でしたがアメリカはその存在を認めなかったのでNo such Agency(そんな組織は存在しないよ、という意味)の略だと言われていました。エリア51同様NSAの存在を認めたニュースも驚きました。

 

アメリカの組織以外では恐竜に毛が生えているという説。今では常識となりました。恐竜には体毛があったと考えられるようになりました。今でこそ定説ですが、30年前恐竜は爬虫類で鱗に覆われて体毛など生えていないというのが常識。図鑑に毛が生えている恐竜などいませんでした。始祖鳥と言われる鳥の仲間は別です。しかし私は中学生の頃ムー関連の本で既に恐竜には毛が生えていたという説を目にしていました。それもある程度納得のいく根拠説明を提示されていたもの。当時はバカにされるので他人には言いませんでしたが、数十年の年月をかけて現実がムーの説に近づいていることを実感しました。

 

ムーはオカルト業界における学術誌のような役割があり、多くの都市伝説は「こういうことが噂されている、そうらしいよ」という程度が多いのですが、本当にそうなのか?という検証をしっかりと行います(全てとは言いませんが)。しかもそれは現代科学に則って行われます。

 

このようなエピソードは一部です。ただし全てムーが正しいとはもちろん言いません。中にはさすがにそれはデマだろうと思うものがあります。いや結構あります。悪ノリしているものもありますし。超能力系の話は検証のしようがなく、能力者には見えているだからそうだ、といった記事は鵜吞みにできません。

ムー及び関連の本を読んでいると、都市伝説や陰謀論の裏側というかからくりが何となく見えてきます。一から十まで嘘(虚偽)のものもあれば、ごく一部本当で大半が嘘というパターン、そして実際にあること、など複雑です。

 

往々にして本当のことで世間に隠されたものほど信じられないことがあります。例えばムーでは何十年も前からUFOを特集していますがつい最近アメリカ国防総省が正式にUFO(正式にはUAP=未確認航空現象)の存在を公式に認めました。NHKでもUFOについて番組を放送する時代です。反対にあたかも本当ぽいものはデマであることが少なくありません。一番厄介なのは一部真実が混じっていて大元はデマというもの

 

私がムー、あるいはオカルトに興味を持ったのは小学生の頃。当時は「矢追純一のUFO特集」が流行っていて定期的にUFOに乗った宇宙人が地球人をさらうという内容のテレビ番組が放送されていました。子ども心に本当なのか、可能なのか、メリットはなるのか、といった疑問がありました。

・はるか遠くの星から高度な文明を持つ宇宙人がいたとしてわざわざ地球まで来るのか?

・来たとして隠れて地球人を誘拐する必要があるのか?

・もし実際にあったとしてそれがテレビ番組になるほどわきが甘いのはなぜ?

・そして日本テレビと矢追純一はなぜ始末されないのか?

などなど。宇宙人は非常に高度な文明を持ち地球人には理解しがたい考えだからだ、と言われればそれまでですが釈然としませんでした。そのような疑問に真っ向から検証していたのがムーと関連本だったのでした。

 

長くムー民であることにより都市伝説や陰謀論に対して

科学的検証がされているか

資金や権利の動きはどうか

隠さないといけない理由は何か

誰が広めているのか、誰が否定しているのか

などを考えてみるような考えになります。

 

例えばUFOとは元々未確認飛行物体のことで、確証が取れない飛行物体は全てUFOでした。宇宙人の乗り物というのは後からの認識。聖書に出てくる謎の星だってUFOになってしまうのです。秘密裏に開発しているドローンだって世間に公表されていなければUFOでしょう。なぜ宇宙人の乗り物になっているのか。アメリカ国防総省は謎の飛行物体の存在を認めましたがそれが宇宙人の乗り物とは言っていません。そもそも宇宙人とは?という話もされていません。果たしてその発表の裏は何の意図があるのか。そう考えます。

 

このような見方はとても実生活で役立っています。目に見える現象だけでなくその裏、背景や人間の利益不利益まで頭に入れて物事を見る。臨床でも活用できますし誇大広告に対しても。究極に胡散臭いムーを読むことで培われた力だと思っています。

 

甲野 功

 

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