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2014年末の時点の累計発行部数により「1人の作者が描いたコミック最多」としてギネス認定されている日本の少年マンガ、ワンピース。連載中でまだ完結しておりません。たくさんのエピソードと何年も何十年もかけて伏線を回収する緻密な設定に世界中のファンが考察を重ねています。
練った物語であるのですが、現実世界の不条理や真理を少年マンガを通して描いているところも魅力です。少年ジャンプという業界ナンバーワンの少年マンガ誌に掲載されて絵柄も少年誌らしいので印象がマイルドになりますが実はかなりえげつない内容を描いているところもあります。だからこそ世界中の大人たちも夢中にするのでしょう。何せ小学生の頃に読み始めた読者も今やいい大人。それくらい連載期間が長いのです。大人になって社会のことが分かってくるとまた面白くなるという仕掛けがあるとみています。
さて第37巻で船大工の話が出てきます。ワンピースは海賊の話なので船は必須。その船を作る職人にもスポットがあたります。作中ではウォーターセブン編と言われる、主人公たち新しい船を手に入れるエピソード。そこでのちの仲間になるフランキーと出会うのです。フランキーはトムさんという人から船大工の技術を学ぶのですが兵器を作ることも好きで戦艦を作って巨大な海の怪物を倒すことに腐心していました。兄弟子のアイスバーグは危険だから戦艦作りを止めるように注意します。二人の師匠であるトムさんは笑うだけ咎めることをしません。
トムさんとは海賊王と言われたゴールド・ロジャーの船を造った人物。ロジャーは大犯罪者として処刑されており、後にロジャーの海賊船を製造した罪でトムさんも捕まることになります。トムさんは海難事故の連続で疲弊したウォーターセブンを立て直すために海を走る海列車の製造をはじめ、海列車を完成させて島を救うことを条件に恩赦を得ようとするのです。
トムさんは弟子のフランキーにこのように話します。
『
乗り込んだ船乗りが海賊旗を掲げれば“海賊船”
海軍旗を掲げれば“海軍船”だ
―何を造りたがろうと構わねェがフランキー
造った船に男はドンと胸をはれ!!!!
』
10年後海列車を完成させたトムさんと弟子のアイスバーグ、フランキー。これで無罪放免となるはずだったところに、有罪にしておきたい政府秘密組織がフランキーの作った戦艦を使って砲撃をします。それによってやはり危険分子だと判断されてトムさん達は逮捕されることになります。その時に自ら造った戦艦を悪用されたことを嘆いてフランキーは泣いて後悔します。そして裁判であの襲った戦艦はおれの船ではないとフランキーは叫びます。するとトムさんは激怒してフランキーを殴るのです。常に笑っていたトムさんが初めてフランキーを殴ります。
『
それだけは・・・言っちゃいけねエ・・・!!!
・・・・・・・・
・・・・・・・・
どんな船でも
・・・・・・・・
造り出す事に“善”も“悪”もねェもんだ・・・・・・!!
』
このように言うのです。
この場面を読んだときにとても思うことがありました。
生み出した技術や製品は使うものによって良くも悪くもなります。
科学の進歩がまさにそうです。ノーベルはダイナマイトを発明しました。工事現場で使われるのか戦争に使われるのかは使う人次第です。ノーベルは大富豪になりますが兵器になるものを生み出したことが心苦しくノーベル賞を制定しました。
天才物理学者アインシュタインは原子爆弾の理論を発見し、同朋たるユダヤ人を守る為にナチスより先に原子爆弾を完成するように亡命先のアメリカで大統領に進言します。結果、アメリカは原子爆弾を完成させて日本に使いました。そのことを知った親日家のアインシュタインは頭を抱えたと言います。
これらのような文明や科学の発展が良い面だけでなく悪しき面も生み出すこと、そのことに苦悩する人がいたことを思い出させました。自動車も効率よく人や物を運べる文明の利器ですが使い方を誤れば人を殺害する凶器になり得るわけです。だからといって自動車そのものに罪はあるのでしょうか。自動車を製造したメーカーは悪いのでしょうか。トムさんの言葉を借りれば自動車そのものに“善”も“悪”もないでしょう。
私の仕事に目を移すと鍼灸術があります。落ち着いて考えると人体に鍼を刺す、皮膚の上に艾(ヨモギを乾燥させて精製したもの)を乗せて線香で火をつけるというのは危険極まりません。それを体に良いことがあるとリスク以上のメリットが期待できるから(免許を持つという条件で)他人に行うのです。例えば鍼によって傷害が起きたり灸によって火傷をおったりしてしても“鍼灸の技術そのもの”に罪はないはずです。
他で言えばSNS上で問題発言をして大問題になり、そのSNSを使用することを止めてしまうというケースがあります。最近多いです。だからといってSNSが悪い、利用することが問題であるという意見は筋違いだと考えています。SNSというツールにより問題行動が可視化されて周囲に認められやすくなっただけであり、以前だったら指摘されず問題であったことが指摘されなかっただけではないかと思うのです。
人が便利になるだろうと生み出した技術、ツール、製品など。それらそのものに罪はないはずです。それをどのように活用するか。悪用するかは使う人次第。そのようなことを考える出来事がありました。
甲野 功
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