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成長曲線という言葉をご存知でしょうか。子どもを育てた経験がある方はよく知っているのではないでしょうか。多くの子どもの各年齢の身長・体重の平均値をもとに作ったものです。目安として標準的な各月齢、各年齢の身長・体重がどこにあるかを視覚的にみるものです。子どもの発育に関する成長曲線とは別にビジネスや学習、運動などに関する成長曲線という概念があります。こちらは具体的な数字が出しにくいので抽象的なものになります。こちらの方の成長曲線の存在を知ることで、苦難を乗り越えたり、不都合な判断を下さないようにしたりすることができると考えています。
以前~効果は福利で出てくる~で書いた内容ですが、努力した時間に比例して成果が出るとは限りません。努力した分だけ、練習した時間分だけ、勉強した時間に比例して、成果が伸びることはまずありません。そのような時期があることもあるでしょうが、最初のうちはかけた時間に対してなかなか成果が出ないものです。
この場合の成長曲線は成功曲線とか学習曲線とも言われるものです。“成果”の縦軸・“時間”の横軸で表されるグラフにした場合、直線にはならないことを示します。数学の話になりますが、直線のグラフは比例しているという状態を意味します(なお傾きが0であれば数値が一定で固定、傾きがマイナス(右肩下がり)であれば負の比例)。比例とは時間をかければかけた分だけ常に同じ割合で成果が出ることです。直線でなければ曲線ということで、現実には時間と成果の関係は直線で描けるものではありません。紆余曲折を経るものです。色々な曲線モデルが提唱されているのですが、シンプルな指数関数的な成長曲線で考えてみましょう。
指数関数は同じ数字をどんどん掛けていくものです。最初を1で始めた場合、2を掛け続けたとします。
1,2,4,8,16,32,64,128,256・・・
このようになるのが指数関数の例です。数式にするとy=x²(xは自然数)。グラフにすると最初の内は数字が大きくならないのですが、ある時期を超えるとどんどん大きくなりいわゆる“雪だるま式に”増えていきます。
比例で考えてみましょう。最初を3で始めて、3を足し続けます。これが比例です。
3,6,9,12,15,18,21,24、27・・・
こちらは比例の例です。数式にするとy=3x(xは自然数)。グラフにすると傾きが3で(横軸1目盛り増えると縦軸が3目盛り増えるという割合)最初から最後までずっと同じ割合で増えていきます。
何が言いたいかというと最初の内は比例の方が増えていきますが、ある段階で指数関数に追い抜かれて差が開く一方ということです。入力する数字によって変わりますが一般的にはこうなります(極端な例えにすると比例の傾きを1,000とかにすれば2を掛け続ける二乗の指数関数では追いつくのにかなり時間がかかります)。
成長曲線は実体験が元になっているでしょう。例えば勉強。最初は勉強してもテストの点数が上がらないことはないでしょうか。先生の言っていること、教科書に書いていることの意味が分からない。丸暗記しても応用問題が出されるとお手上げ。それが地道に勉強を続けていると勉強の仕方が分かる、知識の蓄積ができる、テスト慣れしてくる、といったことで点数が上がってくる。そして短い時間の勉強で大きく点数が伸びてくるという。運動や仕事もどうでしょう。運動であれば基礎が固まってくると成績が飛躍的に伸びてくるようになる。仕事も基本を覚えると効率が上がってくる。
どれも最初は大変だけれどある時期を超えると成果が出てきて楽しくなる。このような経験はないでしょうか。
これは
始めた当初は苦しくて成果も出ない、だからといって諦めて止めてしまっては勿体ない。
継続は力なり。
成果は福利で出るので長く続けた方が有利。
これらのことを示唆していると言えるでしょう。現在東京オリンピックの終盤ですが日本人選手の大活躍も昨日今日の努力でメダルを取れるはずもありません。地道な長年の努力と鍛錬の賜物です。
この成長曲線ですが、最初はマイナスの成果になる可能性もあるのです。成果の縦軸が0より下、マイナスのところに行くことも考えられます。スポーツには成績が停滞するプラトーや悪化するスランプという時期があることが有名です。突如不振となるイップスというものもあります。このような練習を重ねてある時期の停滞、不調とは別に、始めてすぐに悪い結果が出てしまうこと。
例えば仕事。新しい事業部を立ち上げたところ、最初は利益を出すどころか他部署にまで負担をかけてしまって全体の業績を悪くしてしまう。新規のバイトを雇っても最初は仕事を教えないといけない、管理しないといけないため、時給を払いながら他のスタッフの仕事が増えて人出が足りないから新規で雇ったのにお店がより回らなくなる。このようなことです。
新しいこと、特に仕事は、最初は苦労するしうまくいかないことが多い。けれどそこを乗り越えれば大きな成果が生まれる可能性がある。そのことを成長曲線という概念は示唆しています。
このことを知らないと短絡的な判断をしてしまいがちだと思うのです。新しい試みを始めました→成果がすぐに出ない、むしろ足を引っ張っている→だから失敗したと結論つける。このような事が周りで多いなと感じています。変化の激しい時代です。判断は早い方がいいでしょう。しかし批判することが先走って悪い評価を下すのが早いなと思うことが増えました。やはり新型コロナウィルス感染が影響しているのでしょう。始めて1日や2日で不備や不具合を指摘することが多い様に思うのです。また当初は成果が出なかったとしても続けることで経験値が積み重なり作業効率が上がっていることを知らない、考慮していないということもまま目につきます。新型コロナウィルスが流行し出したときは誰もがどうしたらよいのか分からず右往左往しました。1年半経過して色々な経験を積んで対応能力は上がっているとおもうのです。しかし過去の対応能力を基準にして話をしているようなところを感じます。
新しく始めてみたことを粗探しするように成果が出ないことを叩く。時間が経過して大きな成果が出ていることを知らずに(調べずに)、始めた当初の状況で物事を考えて批判する。このような時系列で物事を見ない・見えないような事例を多数みてきました。今がダメだから将来もダメということはありません。もちろん将来もダメなままということはあるでしょうが。今回の東京オリンピックにおいて卓球男女混合種目で日本は中国を破り金メダルを獲得しました。5年、10年前なら想像できなかったことです。
人のやる事は何が起きるかわかりません。成長曲線という概念を知っておいて新しい取り組みをみることが大切だと考えています。
甲野 功
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