～浅草神社～

東京の観光地で特に有名なエリアが浅草。東京というより江戸と言いますか。世界的な大都市東京でも歴史や情緒、地域を感じさせる場所が浅草です。新型コロナが流行する前は大勢の外国人観光客、そして国内でも地方からの修学旅行学生で混雑していました。

浅草と言えば浅草寺、仲見世通り、雷門ではないでしょうか。浅草のランドマークであり中心が浅草寺と言って過言ではないでしょう。その浅草寺の隣に浅草“神社”があるのをご存知でしょうか。

浅草神社　三社様

大きな浅草寺のすぐ横に浅草神社があります。浅草寺はもちろんお寺。その隣に同じ浅草の名が付いた神社があります。私は本当につい最近まで浅草神社の存在を知りませんでした。過去に幾度も浅草寺を訪れていたにも関わらず。なお私は生まれも育ちも東京都新宿区。決して遠い場所ではありません。ふとしたことから浅草神社のことを知り行ってみました。なお同じく東京都出身東京都在住の父親もその存在を知りませんでした。非常に博識である父も知らない。浅草寺のイメージが強すぎるのでしょうか。過日、浅草神社を訪れてみました。まさに浅草寺の隣に鎮座しています。これまで気に留めなかったのは浅草寺の境内にある何かの関連建築物と認識していたのかもしれません。１０年くらい前は神社とお寺の区別がつかなかったわけですし。

行ってみるとかなり大きな鳥居があり、立派な神社でした。

由緒をホームページで調べてみました。すると浅草観音様の逸話が出てきます。漁をしていて網に引っかかったのが観音様であり、それを祀ったのが浅草寺のはじまりだと。このことは何となく父親から聞いたことがありました。しかし観音様の話は“浅草寺の由緒”で浅草神社とは異なります。その先を読むと、時代が進んだあるときにその観音様（聖観世音菩薩）が、観音堂の隣に親たちを神として鎮守すれば子孫も土地も繁栄すると、浅草寺を創建した者の子孫に夢でお告げをしたそうです。そして名前を三社権現とせよと。

なかなか興味深い由緒です。仏様が祖先を神様として祀るよう指示したという。そもそも仏教と神道は別の宗教です。仏教は仏を祀り偶像（仏像）が置かれます。神道は神様を祀り偶像を拝殿に置くことはせず多くは鏡を置きます。大日如来像はあっても天照大神像は無いのです。このような違いがあるのですが神仏習合によって一緒にしてきた歴史があります。ホームページにある解説によれば、仏教普及の一つの方便である「仏が本であり、神は仏が権りに姿を現じた」とする権現思想というものがあるそうで。権現思想という言葉を初めて知りましたが納得できます。そこで浅草神社の御祭神はというと、浅草寺の創建に関わった土師真中知（はじのまなかち）、檜前浜成（ひのくまのはまなり）、檜前武成（ひのくまのたけなり）の三柱を主祭神としています。この３名の霊をもって三社権現と称するのだとか。境内にはそれを示す碑があります。

神仏習合と書きましたが対になる言葉として神仏分離があります。これは仏様と神様は別のものでる、お寺と神社を別にするというもの。明治時代に政府が神仏分離令を発し分離が推し進められました。このときに浅草寺から分かれるように三社明神社という社名を経て明治６年に現在の浅草神社になったそうです。その名残で浅草神社を三社様と呼ぶようです。 

そこで繋がるのが三社祭。浅草で行われる日本全国でも有名なお祭りです。三社祭は浅草神社が関係しているのでした。ここでも改めて気づきましたがお祭りは神社のもの。神輿とは移動型の神様のお家。仏教にはありません。

当たり前ですが三社祭は浅草寺ではないのです。このことに今の今まで気づかず、三社祭を仕切っているのはどこなのか気に留めていませんでした。あれだけの大きなお祭りですからそれなりの神社があるはずで、それがどこなのか考えていなかったのでした。浅草神社と三社祭が繋がると見る目が変わりました。とても重要な神社ではないですか。

その社殿は美しい色彩を誇っていました。ホームページによるとなんと慶安２年（１６４９年）に第３代将軍徳川家光により建立寄進されたといいます。あの徳川家光。しかも関東大震災や東京大空襲などの被害を免れ当時の建物だと。日光東照宮並の歴史があるのですね。国の重要文化財です。平成に補修を行って全体を塗りなおしたので今でも美しいわけです。

都内で最も古いお寺と言われる浅草寺。浅草寺に付随するような形で生まれ後に独立した浅草神社。三社祭の神社。これまで知らなかったことが恥ずかしいくらい歴史、由緒、影響力のある神社だと思いました。

甲野　功

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