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若い女性ならば(どこまでを若い女性とするかは意見が分かれると思いますが)“かっさ”と聞けばどのようなものか頭に浮かぶかと思います。
日本では美容分野で取り扱われることが多く、婦人雑誌の付録になっていることもあります。私がかっさを知ったのは鍼灸マッサージ専門学校を卒業した後だったと思います。美容分野でかっさという中国の民間療法があるということを何かの機会に知りました。なお母校の専門学校で習った記憶はありません。おそらくテレビ番組とか雑誌から知ったのでしょう。婦人雑誌の付録についているとのことで飯田橋にある大きめの本屋で探して購入しました。たしか2007~2008年の頃だと思います。
その頃から身近に置いてあるかっさという道具。あじさい鍼灸マッサージ治療院を開業したときからかっさは使っており、今では種類も増えました。美容の施術をするときはほぼ使うアイテムになっています。
使い始めて時間が経っていますが、これまでかっさについてしっかりと調べたことがありませんでした。10数年前に買った婦人雑誌に付いていた説明書を読んだだけで、臨床で覚えていったもの。誰かに習ったこともきちんと学習したこともありません。患者さんに使用しているのにそれはまずいと思いちょくちょくと調べていました。
今回は調査結果の発表を踏まえて、かっさについて紹介します。
かっさとは元々「刮痧」と表記し、発音はグアシャというそうです。中国の民間療法で東洋医学の一部に入ります。刮痧を日本に導入したのは鍼灸師の島田淑子氏で2004年のこと。島田淑子氏は「日本かっさ協会」の会長で、その経緯はホームページに詳しく掲載されています。
きっかけは鍼灸専門学校の教員をしているご主人の北京出張(専門学校の研修旅行の下見)に同行したときに書店でテキストと出会ったことがきっかけでした。帰国してからしばらくし、島田淑子氏は単身北京へ刮痧の勉強をしに行き、日本に技術や理論を持ち帰ったと言います。そしてグアシャという発音を日本人に分かりやすくするために「かっさ」と呼ぶようにしました。
調べるまで島田淑子氏のことを存じ上げなかったですし、かっさという言葉は造語(?)だったことや、2004年という比較的最近日本に入ってきたものだということも知りませんでした。
同ホームページによれば、「刮(かつ)」はけずるという意味で「痧(さ)」は動けなくなって滞っている血液のことをさします、とのこと。痧は東洋医学での瘀血(おけつ)と同意ということでしょうか。皮膚表面を刺激して経絡の流れをよくする働きがあるとされており、これは鍼灸に通じます。また同じくホームページには刮痧(グアシャ)特有の赤い跡を「痧(サ)」と称しています。実際にかっさで皮膚を強く擦ると赤い跡ができます。これは吸玉の溢血斑に似ていて、確かに瘀血に通じるものだと鍼灸師の私には納得できます。
ちなみに検索していると『ザ・トリートメント』(原題『刮痧』、英題『Gua Sha Treatment』)とという中国映画が出てきました。凄いですよね、そのまんまのタイトル。英題では本来の発音でGua Shaと表現していて、邦題では民間療法を強調してトリートメントを採用しています。
内容はというとアメリカで暮らす中国人家族でおじいちゃんが孫にかっさをして孫の体に跡が残り、その様子をみたアメリカ児童保護協会は虐待だと勘違いして孫を親から引き離してしまうというもの。実話だそうで、中国文化を知らないアメリカで起きた悲劇を描いているといいます。
かっさの素材は元々水牛の角で作られていたようですが今は色々な素材のものが生まれています。ネットショップで美容コーナーを見ればたくさんのかっさが出てきます。形、素材で種類があります。いまやダイソーでも売っているほど。私が最初に婦人雑誌の付録として手に入れたかっさは水晶だったと思います。それから手触りや形を求めて蜜蠟のものやホットストーン型のものを手に入れました。今は蜜蠟のものを主に使っています。
なお最初のかっさは美容に興味が出てきた長女にあげてしまいました。それくらいもう日本では美容関連グッズとして定着した感じがあります。TikTokで流行ったり世界的女優のミランダ・カーもファンだと公表したりと美容面で一人歩きしている感があります。確かに間違いではないのですがかっさは本来全身治療に用いられていることも伝えておきましょう。
中国では日本と違い、刺激が強いものが好まれます。かっさも内出血のような跡ができるくらい強く擦ることがあります。これは余計な血を出すためという意図があり、吸玉でもそうですが、跡の色の濃さで状態をみている面があります。以前、かっさを活用している鍼灸師さんと話をしたときも、本来は体に使うことが多く跡がかなり残る(残す)ものだと仰っていました。もちろんずっと残るものではなく数日から1週間で焼失しますが。
また別のエピソードで、私は以前から立場を明かさずに巷にあるリラクゼーション店に入って体を休めるのと勉強(偵察も兼ねるかな)するのですが、あるお店の中国人らしき定員につい鍼灸師だと漏らしたことがありました。そうしたらとても喜んでくれてかっさを知っているのか?と聞いてきました。もちろん知っていると答えるとその店員さんはかっさは熱を取るから、暑い日本ではやった方がいいと熱く語りました。熱中症に効果があるからと。当時某タレントのプロモーションビデオを屋外で撮影する際にエキストラの若い女性が炎天下でバタバタと倒れたというニュースがあり、あれだってかっさをすれば防げたのよ、と主張していました。これは東洋医学でいう瀉法で熱をさばくことと一緒なのでしょう。本家(中国)はやはり違うなと思ったことと本当に民間に浸透しているのだと感心したものでした。
日本では強すぎる刺激は好まれません。治療効果(メリット)があるといっても痛みや跡が残る(デメリット)があるのは好ましくないと考えることが多いです。そのため、かっさ以外もそうですが、ソフトな刺激にすることがほとんどです。私も主に顔のリフトアップに使用しています。あとはオイルマッサージでスリムにしたい場所に用います。全身治療という観点ではかっさを使用していなくて専ら美容目的。かっさ以外にも按摩指圧、鍼灸など手段を持っているのでそうしています。
日本では誰でも使えるお手軽美容グッズという位置づけのかっさ。しかし中国でもそれだけではありません。ある意味日本に入って独自の進化をしたのかもしれません。かっさをどのようなものとして捉えるのかは意見が分かれるかもしれません。調べてみるとなかなか奥の深いものでした。
甲野 功
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