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~PEST分析~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 PEST分析
PEST分析について

 

 

開業権のある私の仕事だと永遠のテーマかもしれない話題に経営手法があります。

実力があればどこでもやっていける

技術があったところで経営能力がなれければいけない

だいたいこの2つの対立があります。

 

しっかり治療できれば患者さんは自然と付くから問題ない、と語るベテラン。いやいやそんな時代ではない、集客やブランディングができなれければ今は生き残れない、と語る若手経営者。

具体的に誰とは言いませんがこのような状況を見てきました。おそらく鍼灸、マッサージの業界以外でも同じようなことがあると思います。

 

自営業となって10年目の私の意見としては、どちらも大事、という結論です。結局“実力”という中には治療技術、知識、接遇、経営などありとあらゆる能力を包括していると考えていて、主張している当人が何に重きを置いているかの違いではないでしょうか。

 

自分は治療技術があったからうまくいった、と自覚している人。

集客や接遇が良かったから繁盛している、と認識している人。

その違いだと推測しています。

 

何故ならどれだけ技術に長けていても最低限の経営要素は必要なはずだからです。極端な話、南極で開業して繁盛するでしょうか?南極に行くまでの手間とリスクを乗り越えて通院するような患者は皆無だと思います。それならば近場でそれなりの所を探した方が現実的です。反対に、経営能力には次につなげる(リピートさせる)力が含まれていて、来院してもひどい目にあったと思わせたら次はありません。最低限の技術がなければ経営は成り立ちません。

 

技術か経営か?これはマーケティングの話に置き換えると内部環境外部環境に置き換えることができそうです。

内部環境とは企業の商品開発力や営業力といった企業自体が持つ要素に注目するもの。外部環境は社会情勢や文化、競合などの企業が置かれている状況に注目するもの。

 

内部環境に目を向ければ技術、知識、接遇、営業など自力の能力を課題にしますし、外部環境に目を向ければ立地や価格帯、宣伝方法などに重きを置きます。当然どちらも大切で時期や状況によって重きを置く方が変わることはあるでしょう。しかし内部環境だけを充実させても、有利な外部環境を求めるだけのことをしても、片落ちになることでしょう。

 

鍼灸師なりあん摩マッサージ指圧師なり開業権があり独立して業務をするならば内部環境、外部環境の双方をチェックしておかないとなりません。どれだけスポーツ外傷に優れた鍼灸師でも老人ホームの訪問では力を発揮できないでしょう。実力を発揮できる場所にいること。それを周知する努力は大小あるでしょうが必要なのです。

 

鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師は技術職なのでついつい高い技術習得に注力し、他の事は二の次になりがちです。国家試験に経営関連は出ないので専門学校では基本的に教えることがありません(必須科目ではない)。しかし自分の実力(内部環境)だけに目を向けてばかりではいけなくて、置かれている状況(外部環境)も踏まえる必要に迫られます。

内部環境、外部環境をプラス面マイナス面でチェックするフレームワークとしてSWOT分析があります。それを用いることで自身を客観的にみることができます。それに対して外部環境だけをみる『PEST分析』というものがあります。

 

前置きが長くなりましたがPEST分析について書いていきます。

 

PEST分析のP、E、S、Tはそれぞれ政治、経済、社会、技術に対応します。

 

P:Politics(政治)

E:Economy(経済)

S:Society(社会)

T:Technology(技術)

 

この4項目から置かれている環境を整理して自分の業務に影響を及ぼすかを分析していきます。一つ一つみていきましょう。

 

P:政治的要因

政治がこの仕事にどのように介入するのか。具体的には法律やガイドラインが当てはまります。国家資格免許である以上、法律によって身分が守られまた規制がかかっています。違法行為をすれば処罰がくだるわけです。法改正には時間がかかりますが、ガイドラインや省令・命令など比較的簡単に改訂できるものも業務に影響することを忘れてはいけません。現状は見過ごされていても取締りが厳しくなって今まで通りにいかなくなることもあります。反対に有利に働くこともあります。最近でいえば東京都は新型コロナ感染防止のため多くの業種に休業要請を出しましたが鍼灸院、マッサージ院といった保健所が管轄する施術所は要請対象外になりました。

 

E:経済的要因

経済環境の影響を考えます。具体的には景気。景気が悪くなって患者さんの可処分所得が減り、鍼灸やマッサージに費やせるお金が無くなれば我々の仕事は厳しくなります。反面、だからこそ健康であるために投資する方に考えが変われば繁盛するかもしれません。また立地も影響して、その土地の経済活動が縮小すると鍼灸院も影響を受けることになります。地域産業が衰退し住民がいなくなれば鍼灸院を利用する人もいなくなることになるからです。経済状況をみて景気の良い地域に移ること、あるいは敢えて競合がいない状況に身を置いて寡占するという手も考えられます。

 

S:社会的要因

社会環境によってこの仕事も意義が変わることがあります。かつて鍼灸は農家の人たちに根付いていたといいます。収穫期に病気にならないよう養生の一環として鍼灸をしてきたと。現代では肉体労働よりオフィスワークが圧倒的に増えてVDT症候群に代表される事務仕事特有の疾患に対応するニーズが高まっています。また健康寿命や健康経営といった用語が生まれ健康であることが経済的損失を軽減できるとして、鍼灸やマッサージが注目されることも。少子高齢化は避けて通れない社会的課題ですが、それらに対応できることをすれば仕事が成り立つと考えられます。社会に必要とされるものでなければ仕事は成立しないので、いま何が求められるのか読み取ることが大切です。

 

T:技術的要因

技術革新(イノベーション)によって何が起きるのかを注意深く観察しないといけません。前に~テクノロジー~というテーマでブログを書きましたが、技術が発達することで我々の仕事が必要なくなる可能性があります。例えば疾病、疾患自体が医療技術の発達によってほぼ無くなるとしたらどうでしょう。医療そのものが大きく変わるはずです。そうなった場合に“治療ができれば食っている”という主張は意味を成しません。あるいは超高性能かつ安価な美容技術が開発されたらどうでしょう。美容鍼という分野は衰退するのではないでしょうか。人類は少し前までは信じられないような技術を生み出してきました。そして加速して技術が向上しています。最先端技術の情報をみておかないと気が付いたら、必要のないこと、に自分の技術が変わっているかもしれません。

 

PEST分析の応用でL:法律、E:環境、D:人口統計学、R:規制といったものを加える方法もあるようです。P:政治やS:社会をより細かく項目分けしたということでしょう。

 

いずれにせよ私たちが置かれている環境、社会背景などを観察してどう関係してくるか常日頃から考える癖は必要でしょう。大学を卒業して一般企業に就職する際に、新聞を読め、特に政治と経済は密接に関わるから、と会社の人に言われたものです。当時は面倒くさいと疎んでいましたが今になると正にその通りだと納得です。PEST分析の4項目に分けてこのニュースはどう関係してくるか考えておくようにしています。PEST分析の結果、今後求められる必要とされる技術が変わってくることもあるはずです。

 

甲野 功

 

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