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先週、東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科で担当した特別授業。私は「開業鍼灸師のSNS活用」というタイトルで話をしました。毎年1年をかけて作るのですが、言い換えるとこれまで調べてきたこと、実際にあった出来事などを元に内容をまとめています。これまでやってきたことを切り貼りしているわけです。
ただし今回授業で話した内容の一部は、初めて触れるものでした。その部分を切り抜いてより詳しく文章に残しておこうと思います。ここに至る流れは、SNSが実社会に及ぼした影響、また開業鍼灸師の立場からSNSとどのように向き合って本業に活かしてきたかを説明しました。それを踏まえ読んでください。
情報の発信の仕方には2種類あると考えています。それはフロー型とストック型の発信方法に2つです。
フロー(Flow)とは流れるというニュアンスで使用しています。フロー型の情報発信とは時間軸でどんどん流れていくもの。具体的にはTwitterやFacebook、Instagramなどによる情報発信。これらはタイムラインに乗ってどんどん情報が更新されていきます。軽い挨拶からイベント告知まで毎日膨大な量の情報がタイムラインに流れています。
フロー型の情報発信は瞬発力があります。瞬発力とは拡散されやすいという意味で一気に熱しやすいといいますか。特にTwitterでは(閲覧者を限定している場合を除きますが)情報が指数関数的に広がることがよくあります。情報を広げるにはフロー型の発信方法が有効です。反面、どんどん他にも情報が流れてくるので時間経過とともにその情報は埋もれていきます。数日間大いに盛り上がり3日経てば他の話題に乗り移っているということがよくあること。瞬発力がある(短期的な拡散されやすい)が、持続力が無い(消費されやすく長期間残らない)のがフロー型情報発信の特徴です。極め付きは24時間で投稿内容が消えるストーリー(投稿)でしょう。
対してストック型。ストック(Stock)とは蓄積されるというニュアンスで使用しています。ストック型の情報発信はSNSのタイムラインに流すのではなくブログや動画、HPなど決まった場所(URLがある)にコンテンツを置くやり方です。ものによりますが、制作するのに比較的時間がかかりますが一度作ってしまえばずっと残りどんどん蓄積されていきます。ネット環境に限らず論文発表や書籍の執筆などもストック型の情報発信といえるでしょう。
ストック型の特徴はコンテンツ一つ一つに個別アクセスができること。ブログなり動画なりにはそのURL(ネット上の識別番号および住所のようなもの)が割り当てられるので探すのが容易になります。フロー型の場合、過去の投稿を調べるときにタイムラインを遡らないといけないことがあり手間になります。なによりURLがつきません。
このフロー型とストック型というのは経営における利益を得る分類に用いられるものです。例えば商品を売って得る対価はフロー型収入、店舗を貸して毎月入る家賃はストック型収入といったように。フロー型の収入は幅があり大儲けできることもありますがゼロになる可能性もあります。ストック型の収入は決まった期間毎に一定額が入り続けます。経営を安定させるならばストック型の収入を確保しておくことが大切になります。なお株式会社の“株”は英語では“Stock”となります。
収入方法にフロー型とストック型があることから、情報発信にも同様に分類分けできると考えました。そしてこの2種類を組み合わせることが重要だとも。
ブログでも動画でも何かコンテンツを作ったとしても、それがすぐに注目を浴びるとは限りません。膨大な時間と手間を掛けて作ったもののアクセス数や閲覧数が伸びないという現実がままあります。私も日々かなりの量の文章を書き、資料を作っていますが大半は日の目を見ないものです。それでも続けて当院のブログは現時点で1000件以上になっています。
こつこつとコンテンツを作ってストック型の情報発信を続けながら、それらをタイミングを計ってSNSで周知させるやり方をします(フロー型の情報発信)。過去に作っておいてホームページに載せておいたブログをあるタイミングで紹介すると非常に注目されるということがあります。それが信用や興味に繋がるのです。
日々フロー型の情報発信をして受け取って欲しい層に対して存在をアピールしておき、コンテンツを作っておく。いざという時にそれらを紹介する。このようなことを私は何年も続けてきました。個人的な考えや理想、持っている技術や知識など伝えたいことをコンテンツにしておき、分類分けし整理してホームページに掲載しています。同時にSNSを使ってホームページ及びそれらのコンテンツに誘導する導線を作るのです。フロー型とストック型の情報発信を組み合わせているわけです。
そしてどちらの方法でも発信された情報に誰か(患者さんなり同業者なりたまたま目にした人なり)がいいね!を押したりコメントをしたりシェアしたりすると、それがUGC(ユーザーが作ったコンテンツ)になり得るわけで、制作した私以外の人の手が加わりより信頼度が上がります。口コミと同じでサービス提供する側が自ら良さをアピールするよりも他人が推薦した方が信憑性が増すということ。UGCを起点とするSNSを背景とした消費者心理を説明したものを“ULSSAS”といいますが、UGCが無ければ始まりません。情報発信をすることでUGCが生まれやすくなり結果的に利用者に選ばれやすくなるのです。
他にフロー型とストック型の情報発信の具体例を挙げましょう。
日本が誇る世界的大企業TOYOTA。TOYOTAのテレビCMを見たことがありますか。歌舞伎役者でもある一流芸俳優を起用してCMを流しています。これはフロー型の情報発信です。テレビ番組を視聴していると目にする限られた秒数のCM。注目するのはこのCMで自社製品を宣伝することなく、会社の取り組みや社長の考えを紹介し、詳しくは自社サイト『トヨタイムズ』をご覧くださいと誘引しているのです。『トヨタイムズ』はTOYOTAが作るサイトで、放送時間もデータ量にも制限がありません。その気になれば100時間の動画だって載せることが可能です。『トヨタイムズ』がストック型の情報発信であり、テレビCMというフロー型の情報発信を用いて導いています。
もう少し踏み込むと情報発信の方法だけでなく情報自体もフロー型とストック型に分けることができるでしょう。
単発イベントやキャンペーンの告知、あるいは時事ネタなどはフロー型の情報といえるでしょう。その時期が大切でそれを過ぎたら価値が大きく下がるもの。3年前の2週間限定値引きキャンペーンに関する情報を今知ってもほとんど意味がありません。しかし明日から始まる2週間限定値引きキャンペーンの情報はこの2週間の間は非常に価値があるのではないでしょうか。
技術や知識のノウハウ、本人のポリシーといった情報はストック型の情報。時期を問わずほぼ不変の価値です。万人に刺さることはないかもしれませんが特定の人には大いに参考になるかもしれません。
発信する情報(あるいはコンテンツ)にもフロー型とストック型がありどちらも出すことが大切だと思います。ストック型の情報はやはり作ることが大変ですが一度できてしまうと長く使えます。私は学生さんや同業者からの質問に対して、過去に作ったブログのURLを貼って回答することがよくあり、手間が省ける利点もあります。対して毎年開催しているチャリティーマッサージの告知は日付が変わるので使いまわすことはできず、毎年作り替えないといけません。
以上のように情報発信の仕方、更には発信する情報そのものも2つに分けて考えると整理されて扱いやすいと思います。授業のテーマを「開業鍼灸師のSNS活用」としましたが、SNSを使って何をどのように伝えたいかはツールの特性を理解しておいた方がいいということ。SNSだけ使っていても十分ではないと考えています。
甲野 功
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