開院時間
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私の業界には“あはき”という言葉あります。業界用語といってよく、一般には通用しない用語でしょう。
・あ→あん摩マッサージ指圧師
・は→はり師
・き→きゅう師
という3つの厚生労働省管轄の国家資格免許を意味します。
何かとややこしい話ですが、よく鍼灸師という名称を出しますが、資格免許としては「はり師」(鍼師)と「きゅう師」(灸師)で別々なのです。ほぼ全員がはり師、きゅう師の両方を所得しているので鍼灸師とまとめていますが、国家試験も資格免許も別々なので(といってもほとんどが共通問題で個別問題はわずかです)はり師のみ、きゅう師のみ取得という場合もあります。そして「あん摩マッサージ指圧師」という免許は名前の通りあん摩(按摩)、マッサージ、指圧の3種類の技術を有した者が持つもの。按摩もマッサージも指圧も発祥した国や時代、なにより技術が異なります。それら3つをどれも手で行うものだからという感じで国家資格免許としてまとめてしまいました。
よって“あはき”というと3つの免許、5つの技術の総称になります。ちなみに鍼灸のみの場合、“あはき”に対応する意味で“はき”という言い回しがあります。鍼灸と書いてもいいのでしょうが。“あはき”や“はき”という用語は厚生労働省の資料に用いられることがあります。
さて“あはき”の“あ”だけで使用されることはほぼなく、(“あ”一文字ではまず意味が分からないでしょう)、この場合は“あまし”という言葉になります。もちろんこれは「あん摩マッサージ指圧師」における3つの技術の頭文字を取ったもので正確には“あマ指”となります。このように表記すると平仮名、カタカナ、漢字が並び誤変換したかのように見えるの個人的に私は全て平仮名にするようにしています。
“あまし”の中でマッサージは他の按摩と指圧の2つとは異なる点が多いのです。
按摩、指圧は薄い衣服の上から押します。また遠心性といって体の中心から末端に向けて押して行くことが基本です。
マッサージは皮膚を直接触り、求心性すなわち末端から中心に向けて行います。
これらの違いは主に作用させる身体の個所が異なるためであり、あん摩マッサージ指圧師は明確に分けて考えます。ときに敢えて混ぜてみることもします。世間的にはどれも“(いわゆる)マッサージ”と認識していて違いは分からないと思いますが。
素人でもはっきり分かる違いが一つあります。
それはマッサージでは滑剤を用いること。
滑剤とは皮膚の滑りをよくするために皮膚に付けるもののこと。オイルやタルク(パウダー状の粉)のことです。マッサージは皮膚に直接触れて、軽擦という擦る技術が基本になります。そのため摩擦を軽減させるために滑剤を用いることになります。按摩、指圧は衣服の上から触ることが基本なので滑剤を用いることはありません。この違いは分かりやすいと思います。
術者の視点でいうとマッサージは滑剤を用いるため按摩、指圧に比べて“相手の体に与えるための要素”が増えるのです。つまり“どのような滑剤を用いるか”という視点が加わるのです。これは術者側も受け手側も決して小さくない要素になります。
私が学んだ東京医療専門学校ではマッサージ実技授業の初期はタルクを用います。タルクは粉なので巻き散りやすいし、滑りはオイルよりもいいとは言えません。終われば自分の手も相手の体も粉まみれになります。はっきり言えば扱いが難しく何かと面倒なのです。私は開業してからはもちろん、臨床現場でタルクを使ったことは一度もありません。技術的にも管理する意味でも面倒なことが多いからです。
ではなぜそのようなものを使って授業をするのかといえば基本を身につけるためでしょう。オイルを用いた方が滑りがよいのでやりやすく上手くできてしまう。最初は扱いつらいタルクでしっかりと基礎を磨いた方が好ましいということだと推測します。私が学生のときは夏休み前の1期のマッサージ実技授業は、ずっとタルクを用いた前腕(肘から先)だけでした。そこで基本手技や姿勢、体の動かし方をみっちりと学びました。
このように器材を用いることが(按摩、指圧に対する)マッサージの特徴になります。どの滑剤を採用するかでかなり変わります。何を選ぶかは一長一短。状態や状況に合わせて選択します。
今回新しくマッサージクリームを導入しました。
これまではオイルを使っていましたがマッサージクリームも選択肢に入れました。どのような違いがあるか説明します。
まず根本的な用途として皮膚の摩擦を軽減するためにオイルを用います。それも普段使っているのは水溶性オイル。油であるはずなのに水溶性というのは矛盾があるような気がしますが、水で落ちるのは非常に便利で使っています。院の器材にダメージがとても少なくなります。また成分として痩せやすくなるというスリムタイプの水溶性オイルを使っています。本当に痩せるのかはメーカーの謳い文句を信用するしかありませんが。
水溶性オイルの前は通常の脂溶性オイルを使っていました。このオイルは粘り気が長時間継続するのですが服やタオルにつくとなかなか落ちず、洗濯機に入れる前にしっかりと手洗いをしないといけませんでした。洗濯機で落ちきれないと日の光で変色することもあります。そのため水溶性オイルに利用を変えたのでした。
水溶性オイルとは別に保湿クリームやハンドクリームを用いることもあります。マッサージ用ではないので皮膚に吸収されていき短時間で滑らなくなります。その代わり施術後にしっかりと拭き取る必要が無く、手間が大きく省けます。また保湿効果はオイルよりもずっと高く(そのためのものですから)皮膚のケアを考えると有効です。時間をかけてしっかりとマッサージするのには向いていませんがピンポイントさっとマッサージしたいときに重宝します。
さてオイルとクリームの中間のようなものがマッサージクリームです。マッサージをするためのクリーム。良いとこ取りと言いますか。御徒町にある「セブンビューティー」さんでカタログと実物を見ながら手触りを確認しつつ2種類選びました。コラーゲンとデトックス。正直なところコラーゲン配合、デトックス効果あり、という謳い文句は実際に効果があるのかはよく分かりません。使いながら検証していくくらいの気持ちで期待を込めて選びました。
それよりもマッサージにおける感触が変わります。オイルに比べてマッサージクリームは滑りが少し落ちます。手に引っ掛かる感触があります。そのため圧をしっかりと入れたいときに有利です。リンパや静脈に対して行うことが基本ですが筋肉をしっかり揉みたいときにはマッサージクリームは有効でした。軽い圧で軽擦をする場合はオイルよりも繊細な力加減が必要です。そのため技術を磨けるとも言えますし、負担があるとも言えます。
保湿クリームに比べてマッサージクリームは滑る効果が持続します。乾かず皮膚に吸収されづらいので時間をかけてしっかりとマッサージするのに有利です。その分終わった後にクリームを拭き取ることが必要ではあります。またクリーム自体に効果が期待できる成分があることは保湿クリームと同様です。手技による刺激とクリーム自体の成分の効果が期待できます。
使い勝手にも違いがあります。オイルは液体ですので垂れることがあります。手からこぼれたり撒き散ったり。マッサージクリームは粘度があるので手に付けて垂れる心配がかなり少ないのです。その意味で扱いがオイルよりも楽です。ただ水溶性オイルとは異なり拭き取ったタオルはしっかりと手洗いしてクリームを落としておかないといけません。
このように水溶性オイル、保湿クリーム、マッサージクリームと長所短所があります。どのような状況で器材を選択するかは按摩、指圧にないもの。臨機応変に使い分けたいと考えています。最初に挙げたタルクも、普段使うことはありまえんが屋外のスポーツ選手に使用する場合はとても有効だそうです。すぐに払えますし。適材適所ですね。
技術ではなく器材を変えることで可能性を広げることができます。新しいマッサージクリームを試しながら最適解を求めていきます。
甲野 功
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