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先月、消費者庁がある企業に対して景品表示法違反による措置命令を行いました。
株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
景品表示法とは正式には不当景品類及び不当表示防止法と言います。景品表示法は俗称、略称になります。
どのようなものかというと法律を抜粋すると
『
第一条(目的)
この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
』
とあります。消費者を守る為に不当な“表示”を防止するためのものです。ここで言う“表示”は宣伝材料であり広告全般を指します。
本法律において“不当な表示”を禁止しております。具体的なことは以下の通り。法律を抜粋します。
『
第五条(不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
』
このように3項目挙げられており、第一号は優良誤認表示といわれるもの、第二号は有利誤認表示、第三号はその他内閣総理大臣が指定するものとなっています。
優良誤認表示は商品・サービスの品質や価格、内容について本来のものよりも著しく優秀・優良なものだと宣伝すること。誇大広告というもので、具体的には効果が大して無いのにあたかも絶大な効果があるかのように見せることがそうです。
有利誤認表示は商品・サービスの価格、その他の取引条件を他よりも著しく有利に見せて宣伝すること。具体的にはタイムセールスを守らないことが挙げられて、本当は期間を延長して値引きセールをしているのにこの期間内に買わないと損しますよといった宣伝文句を使うことです。
3つ目はそれ以外のもの。
これらに違反した場合、措置命令という、表示(広告)を停止し事業者に防止策を講じるようにさせる命令を出すことができます。
『
第七条 (措置命令)
内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。
一 当該違反行為をした事業者
二 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
三 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
四 当該違反行為をした事業者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者
』
例え不当表示をしなくなっていても措置命令は出せますし、その事業を継承する、譲り受けるなどした事業者も該当します。
措置命令はいわば指導だけですが、不当表示による売上が一定金額を越えて多額な場合は罰金納付命令にもなります。
優良誤認表示に関しては宣伝内容を裏付ける資料を一定期間を設けて提出させることができます。この資料から表示内容が合理的であると判断されれば違反とはなりません。また期間内に資料を提出しなかった場合は優良誤認表示とみなされます。このことが法律で規定されています。
上に出した第七条の続きです。
『
2 内閣総理大臣は、前項の規定による命令に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす
』
景品表示法違反による措置命令自体は以前から数多くありました。重要なことはインスタグラムの投稿内容が景品表示法違反(優良誤認表示)と判断されたことです。
本件は、摂取するとバストアップできるというサプリメントに関する広告に対してのもの。コンプレックス商材と言われているものでたくさんの関連商品が存在しています。消費者庁は広告内容ほどの豊胸効果が得られるのかを疑問視し、裏付けとなる資料を提出するように指示。期間内に資料提出がなされなかったので措置命令を行ったわけです。
ただ背景は単純ではなさそうです。
通販新聞 消費者庁 「インスタ投稿」に措置命令、アクガレージなど投稿内容を指示
この記事によると、製造元と販売業務を行っていた2社に対して措置命令が出ているのですが、消費者庁は実質同じ会社だと判断したといいます。景品表示法は主に広告に関するものであり、製造元だけでなく広告を出していた会社も摘発対象になります。言いかえると製品そのものの問題ではなく、売り方(広告の仕方)が問題であるということ。そして、これまではネット広告やチラシ、看板などが対象だったのですが、InstagramというSNSの投稿内容を対象にしたことが重要です。上記の報道によると初めてのInstagram投稿を対象にした措置命令だそう。
SNSは個人が繋がるためのツールでありますが、広告宣伝効果が大きいことは周知の事実です。今ではホームページを持たずSNSだけでしかないというお店もあるほどです。特に今回対象となった女性向けコンプレックス商材はInstagramと相性がよく(Instagramは女性ユーザーが多く、ハッシュタグという検索しやすい機能もあり商品検索の主流になっていると言われている)、同様の商品やサービスを宣伝する投稿は多数みられます。
これまではSNSは“個人の意見”という面が強かったと思います。公共性よりも個人のものという。消費者庁の出す資料にはSNS投稿内容も表示とみなすとありましたが、本当に措置命令対象になったことに時代を感じてしまいます。
そして記事によれば措置命令が下った2社がインスタグラマー(Instagramに投稿する人)に投稿内容を指示していたとあります。一見メーカーと関係のない人が商品の良さをSNSに投稿したり発言したりすることをステマ(ステルスマーケティング)といいます。メーカーと関係のない人が言うのなら効果があるのだろう、知っているあの人が勧めるのなら信頼できる、という心理が生まれます。しかし裏では結託していたと。報道によれば指示書を作成し、商品パッケージが映るように顔や胸の近くに持つようにさせ、広告と分からないようにするようにさせていたといいます。消費者庁の公表した文書にはInstagramのアカウント名、投稿内容は黒く消されていました。Instagramに投稿したインスタグラマーには罪が無いと非公表としたのでしょう。
今回の措置命令はInstagramの投稿内容とアフィリエイトサイトが対象になりました。アフェリエイトサイトよりもInstagramの方が先に書かれていたことも気になります。どこか今後はInstagramもチェックしていくという意志を感じるのです。ネット広告の専門家に数年前に聞いた話ですが、Facebook、Instagramは比較的摘発しにくいため内容が際どい広告が多数あるとのことでした。それが今回の措置命令でInstagram投稿が対象になりました。Instagram上の広告ではなく投稿内容に。これは結構重要なことだと感じています。
開業鍼灸マッサージ師としてはこれまでの考え、常識を書き換えないといけないと思っています。
甲野 功
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