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12月10日に総務省から
『
消費者事故対策に関する行政評価・監視―医業類似行為等による事故の対策を中心として―<勧告に対する改善措置状況(1回目のフォローアップ)の概要>
』
という長いタイトルの発表がありました。
総務省ホームページ
これは何を示しているのでしょうか。その経緯についてホームページの文言を抜粋します。
『
<経緯>
総務省では、消費者の安全・安心を図る観点から、医業類似行為(注)等による事故について、関係府省における被害防止対策の実施状況等を調査し、令和2年11月に消費者庁及び厚生労働省に対して勧告しました。
<改善措置状況>
今回、改善措置状況をフォローアップしたところ、
(1)消費者庁は、都道府県等、関係省庁に通知制度の周知を依頼するとともに、各都道府県等内での消費者庁への通知手順の整理・確認結果を公表
(2)厚生労働省は、都道府県、保健所設置市及び特別区に対し、事業者等への指導徹底を要請
など、勧告した事項については、現時点で必要な改善措置が講じられています。
(注)医業類似行為には、「あん摩マッサージ指圧」や「柔道整復」といった国家資格が必要な施術のほか、これら以外の手技、温熱等による療術行為であって、人体に危害を及ぼすおそれのあるものが含まれる。
』
総務省は昨年11月まで数年に渡り医業類似行為等による健康被害について調査をしていました。
具体的には平成30年(2018年)3月~令和2年(2020年)11月までの期間。調査対象機関は消費者庁、厚生労働省、国家公安委員会(警察庁)、総務省。さらに関連調査対象機関には独立行政法人国民生活センター、12の都道府県、19の都道府県公安委員会(都道府県警察)、24の市町村、4つの特別区、一部事務組合、5つの医業類似行為等を業とする民間事業者という大規模なものでした。
なぜこのような調査を行ったかというと「あん摩マッサージ指圧」、「柔道整復」等の施術や「エステティック」などによる健康被害が生じたと、都道府県及び市区町村に相談が寄せられている背景があります。しかしこれら医業類似行為等に係る健康被害については対人サービスであるため個別性が高く、本当に施術が原因で起きたのか判断することが難しいとされ、医業類似行為等による利用者の事故に対する関係行政機関の対応状況の実態が不明でした。
そこで総務省は消費者の安全・安心を図る観点から、医業類似行為等による事故に対する関係府省の対策や都道府県等の取組状況等を調査して、改善を促すために調査を実施したのでした。
それを踏まえて昨年(令和2年:2020年)の11月17日に消費者庁と厚生労働省に対して総務省が勧告を出しました。その勧告に対して今年(令和3年:2021年)11月25日に消費者庁が、同11月26日に厚生労働省がそれぞれ回答を出しました。そのことを総務省が発表したのです。
厚生労働省に関しては、総務省が出した勧告を受けて今年(令和3年:2021年)3月15日付で各都道府県、保健所を設置する市、特別区の衛生担当部(局)に向けて「医業類似行為業等に関する指導について」と題する通知を出しています。医業類似行為に関する指導を徹底するように通知しました。
勧告を出した以上、総務省はその後の状況を把握する責任があるでしょう。第一階フォローアップとして実態確認をしてその状況を発表しました。
まず消費者庁に対して。消費者庁に対する勧告事項を抜粋します。
『
1.医業類似行為等に係る事故情報の消費者庁への通知状況
(勧告要旨)
消費者庁は、厚生労働省、警察庁及び消防庁の協力を得つつ、通知制度の実効性を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
① 都道府県等に対し、通知制度の意義等について改めて周知徹底すること。その際、衛生担当部局及び消防本部に対し確実に周知が図られるようにすること。
② 事故情報の円滑な提供が行われていない現状に鑑み、都道府県等における情報の収集の実情を踏まえ、既存の通知制度の枠組みの見直しを含め、それを的確に運用するための取組方策について検討すること。
』
この2つ対して消費者庁が講じた改善措置状況が以下の通り。同じく抜粋します。
『
〔各省庁が講じた改善措置状況〕(消費者庁)
①について
次のとおり厚生労働省等に依頼し、その対応を把握した。
(1)厚生労働省に対して、「消費者事故等に関する情報の通知について(依頼)」(令和2年11月24日付け消安全第406号消費者庁消費者安全課長通知)により、保健所等に対する通知制度の周知を依頼した。厚生労働省は、都道府県等の衛生担当部局に対し、「消費者安全法に基づく消費者事故等に関する情報の通知について(周知)」(令和3年9月30日付け事務連絡)を発出し、通知制度の関係法令や運用マニュアル等を示しつつ、通知
制度に基づく、適切な対応の徹底を依頼した。
(2)警察庁に対して、「消費者事故等に関する情報の通知について(依頼)」(令和2年11月24日付け消安全第406号消費者庁消費者安全課長通知)により、警察機関に対する通知制度の周知を依頼した。警察庁は、各都道府県警察に対し、「生活経済分野における消費者事故等の報告について」(令和2年12月3日付け事務連絡)及び「消費者事故等の発生に関する情報を認知した場合の報告について(通達)」(令和3年2月19日付け警察
庁丁捜一発第17号)を発出し、医業類似行為等役務分野に係る犯罪被害の相談等を受けた場合においては、消費者事故等に該当するか否かを問わず、警察庁に報告することなどを指示した。
(3)総務省消防庁に対して、「消費者事故等に関する情報の通知について(依頼)」(令和2年11月18日付け消安全第399号消費者庁消費者安全課長通知)により、消費者事故等に関する情報の通知が迅速かつ適切に行われるよう、具体的な改善策の検討を依頼した。総務省消防庁は、各都道府県消防防災主管部局等に対し、消費者庁と連名で、「医業類似行為等に係る消費者事故等の通知について」(令和3年11月8日付け消安全第346号消防総第664号)を発出し、具体的な報告基準や4種類の具体的な記載例を示すとともに、消防機関に特化した研修資料を提供することにより、消費者事故等の通知の適切な運用を行うよう依頼した。
消費者庁は、都道府県及び政令指定都市に対して、「消費者事故等(生命・身体被害分野)の通知手順について(周知・依頼)」(令和2年12月22日付け消安全第434号消費者庁消費者安全課長通知)により、消費者行政担当部局に周知を行うとともに、関係部局(特に衛生担当部局)に対して幅広く通知制度の周知を図るよう依頼した。あわせて、通知手順の確認及び整理を依頼し、その結果を取りまとめ、消費者庁ウェブサイトに公表した。
また、令和3年度都道府県等消費者行政担当課長会議(令和3年4月23日開催)において、「消費者安全法の事故情報の通知制度等について」(消費者庁消費者安全課)により、通知制度の周知徹底を図った。
さらに、「「令和3年度地方消費者行政の現況調査」の実施について(依頼)」(令和3年6月2日付け消地協第161号)により、通知手順を新規調査項目として追加するとともに、今後、毎年度勧告事項等 各省庁が講じた改善措置状況の調査により通知手順を把握することで、都道府県等に対して通知制度の意識付けを図ることとする。
②について
令和3年度都道府県等消費者行政担当課長会議において、他の地方公共団体の参考となり得る取組事例(新潟県、和歌山県、仙台市)を紹介した。
今後、地方公共団体への訪問ヒアリング等を通じて、工夫して取り組んでいる方策等を調査し、例えば会議やウェブサイト等を通じて、その知見や課題を取りまとめ還元することで、事故情報の円滑な提供により、通知制度が的確に運用できる
』
この報告を読むとかなり具体的に行動していることがわかります。
続いて厚生労働省に対して。厚生労働省に出した勧告内容について。
『
2.医業類似行為等に係る健康被害に関する苦情等への対応状況
(勧告要旨)
厚生労働省は、医業類似行為による健康被害及びエステサロン等における無資格者による医療行為に対する指導等を推進する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
医業類似行為による健康被害及びエステサロン等における無資格者による医療行為ついて、都道府県、保健所を設置する市及び特別区に対し、関係法令に基づく指導の権限を示した上で、事業者等に対する必要な指導の徹底を要請すること。
(説明)
<制度の概要等>
〇厚生労働省は、無資格者の施術により健康被害が生じた場合、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号。以下「あはき法」という。)等に規定する禁止処罰の対象となるため、保健所等関係機関と連携した指導の徹底を都道府県、保健所を設置する市及び特別区に要請。また、有資格者の施術により健康被害が生じた場合であっても、あはき法等の規定に基づき行政指導の対象とすることは可能であると認識
〇また、エステサロン等に対して立入検査や指導を実施する法令上の根拠はないものの、医師法(昭和23年法律第201号)の規定(医師でない者の医業禁止)等違反のおそれのある情報を把握した場合には、事業者等に対する指導等の徹底を都道府県、保健所を設置する市及び特別区に要請
<調査結果>
〇資格が必要な医業類似行為を無資格者が行ったとする相談については事実確認が行われているが、有資格者の施術により健康被害が生じたとする相談などの多くに対しては、あはき法等の規定に基づく行政指導の対象になると周知されていなかったため、事実確認を行わず、弁護士等への相談の案内のみ実施
〇エステサロン等における無資格者によるアートメイク(医療行為) に関する相談に対して、多くは事実確認を行わず、警察機関の案内のみ実施
』
繰り返しになりますが、総務省は国家資格を持たない無資格者の施術によって健康被害が起きた場合でも「あはき法」等が規定する禁止処罰対象になるので自治体や特別区に要請しています。同様にエステサロン等においても医師法違反のおそれがある場合は指導を徹底せよとしています。それが、調査した結果、適切な対応を取っていなかったとしています。
そのことを踏まえて厚生労働省が行った改善状況です。
『
〔各省庁が講じた改善措置状況〕(厚生労働省)
医業類似行為による健康被害及びエステサロン等における無資格者による医療行為については、都道府県、保健所を設置する市及び特別区の衛生担当部局に対し、「医業類似行為等に関する指導について」(令和3年3月15 日付け医政医発0315第1号厚生労働省医政局医事課長通知)により、
・医業類似行為によって健康被害が生じた場合、あはき法や柔道整復師法(昭和45年法律第19号)に規定する行政指導の対象となること。
・エステサロン等における無資格者による医療行為が、医師法違反に該当すること。
などを示し、法令上指導権限を有することを明示し、事業者に対する指導の徹底を図った。
さらに、同月、都道府県担当者会議の場で同通知の紹介を行い、重ねて指導の徹底を図った。
』
とあります。
“指導の徹底を図った”とするだけであまり具体的にどうしたのか(誰に対して何をしたのか)は書かれていないように思います。そもそもあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師が開設する「施術所」には保健所への届出義務があり職員の立ち入り検査があります。対して無資格者の店舗やエステサロンにはその義務がなく把握するシステムが無かったはず。どのように店舗や状況を把握するのでしょうか。管轄税務署の開業届を参照するくらいしか方法が無いように思います。
また該当する総務省ホームページには注意書きとして
『
(注)医業類似行為には、「あん摩マッサージ指圧」や「柔道整復」といった国家資格が必要な施術のほか、これら以外の手技、温熱等による療術行為であって、人体に危害を及ぼすおそれのあるものが含まれる。
』
とあります。
これまで保健所は国家資格持ち(具体的にはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師免許を持つ者)を対象にしていて、いわゆる整体師、エステティシャンは眼中になかったように感じています。そのため対応が消費者庁よりも遅れているのかと予想しています。
何はともあれ、総務省から勧告を受けたことで厚生労働省も対応を迫られているようだと考えています。来年はまた動きがあるのでしょうか。
甲野 功
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