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~研究デザイン~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 研究デザインの種類
研究デザインの種類

 

 

私の職業は国家資格免許を取得していることが前提です。それはあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師。柔道整復師の免許もありますが施術所として接骨院を運営していないので主にあん摩マッサージ指圧師・鍼灸師、まとめて「あはき師」が大きく関わっています。個人事業主ですから経営者の一面もありますが肩書(資格)がそのまま職業を表していると言えるでしょう。

 

あはき師が活躍するのは主に3つの分野と言われています。臨床研究教育の3つです。

臨床とは患者さんの体調をよくするために施術することを主として患者さんと向き合うことです。ベッド(床)に臨むと書いて臨床です。開業あはき師が一番やることこと、そして求められることです。

研究はそのまま技術や知識(文献含む)の研究です。鍼灸の効果、古典文献の調査、論文を読むなど。大学や研究機関が主に行う分野です。専門学校の教員や学生でも研究発表をする機会がありますし、学術団体や学会は研究を目的としています。

教育は後進の育成です。専門学校が担う主たる業務。技術を教えて知識を学ばせます。誰でも最初は素人。プロのあはき師になるよう指導を受けて免許を得ます。現場に出ても日々の研鑽は終わらないので卒後研修や外部セミナーなどで学ぶ場合が多いのです。そこには教育という分野があります。

 

どの分野で活躍するのか、すなわち、どの分野に進むのかは各自の判断です。専門学校専任教員に就けば教育がメインになりますし、大学の研究員になって臨床を一番にしたいというのは矛盾していると思われます。見方を変えると3つの分野のどれかに集中するので他の2つの事がよく分からないという状況になりやすいのです。同じ資格を持つのに開業鍼灸師が、専門学校の教育が悪い、基礎研究など現場で役に立たない、と発言するような。それぞれの立場で求められる(優先順位の高い)項目が変わってくるので、自分の土俵で相手を判断するのは失礼な話です。

 

あはき師全体からみると臨床分野に進む割合が最も高く、研究分野に進む割合が最も低いでしょう。研究、臨床、教育を全てカバーする人も稀にいますが、研究のことが一番知らないように思います。私は鍼灸マッサージ専門学校の教員免許を持っていますし学生を経験しているので教育分野はある程度知識があります。教壇に立ったこともありますし、現役の専任教員のお話も耳にする機会が無いわけではありません。ただ研究に関しては学生時代(教員養成科を含む)に3つ研究発表をしていますが、あくまで学生レベルのこと。大学院レベルの研究は経験がありません。外部の学会発表もしたことがありません。研究に関しては経験値が足りないのです。

 

先日学生向けセミナーを開催するにあたり“研究デザイン”について調査しました。

研究方法にはいくつか種類、分類があります。それまで漠然と教員養成科で習って知っていたつもりでした。症例発表より実験をした方がいいと。何が良いのかをはっきりと認識しないまま卒業しました。

今回、きちんと調査しこれまでの経験と照らし合わせることで頭が整理されました。元々東京理科大学を卒業した理系脳。実験することは日常的なことでしたし4年生では研究室にも入りました。改めて研究デザインの種類について書いていきます。

 

研究デザインには大きく3種類あります。①観察研究②介入研究③データ統合型研究です。それぞれみていきましょう。

 

①観察研究

これは何か外的要因を加えることなく状態を観察する研究です。外的要因というのは、例えば腰痛を実感している人に腰痛に効くとされる経穴(ツボ)へ鍼を刺すといったもの。鍼を刺すことで痛みの自覚症状に変化があるのかを研究できます。このような外から意図したことを行うことを研究では“介入”と言います。研究する対象に対して良い刺激、悪い刺激とありますが総じて介入と言います。観察研究は介入を加えずに研究対象の状態を観察する研究です。介入を加えないことが特徴です。実験ではなく“調査”になります。

 

観察研究には2種類あります。状況の記述にとどまる「記述的研究」と、要因間の因果関係や相関関係等を分析する「分析的研究」です。

 

記述的研究の具体例は症例報告があります。症例報告とは基本的にある1例の患者さんの症例に対してどのような経過をたどったのか形式に則って記載するものです。あはき師の症例報告では当然鍼灸やマッサージを患者さんに行います。どのような施術をしてどのような結果(患者さんの主観的な感想や可動域などの客観的な数値など)が得られたのかをある程度時間をかけて記録していきます。このときの鍼灸やマッサージは研究における介入とは意味合いが異なります。

 

分析的研究にはコホート研究症例対照研究横断研究の3つがあります。

 

コホート研究

コホートとは“ある特定の集団”という意味。そのコホートを対象とし2つに分けます。解明したい要因がある集団(暴露群・介入群)とない集団(対照群)の2つです。この2つの群を一定期間観察し、その要因の有無と病気の発症などの結果との関連を分析する研究になります。対照群の対照は比較する基準のような意味です。

 

例えば、その集団で起こっている健康に関連がありそうな要因(喫煙、運動習慣、食生活、ストレス、職業、人間関係など)を事前に調べておき、それらの各要因が暴露群の健康状態にどのような影響が出るのか経過を見ていくといったやり方。長期間に渡って調べる必要があります。そのため途中で脱落したり生活や価値観、医療水準、診断方法などが変化したりする影響が避けられません。どういうことかいうと、かつては不治の病だったものが治療法の確立により治るようになった、大規模な災害が起きて暴露群、対象群ともに死亡したり非難したりすることを余儀なくされてしまい研究対象から外れてしまう、など。

 

ある時点から将来に向けてこれから起こる事象を調査するので前向き研究といいます(対となる言葉が後ろ向き研究)。研究するには時間と手間がかかるので大きな組織が行うことが多いです。

 

症例対照研究

ケースコントロール研究ともいいます。研究の対象とする病気や状態の患者群とそうではない対照群を設定して、それぞれについて危険因子と思われる要因への暴露の状況を、過去に振り返って調べ比較する研究です。集団を2つの群に分けて調査するのはコホート研究と同じですが、既に病気となっている患者群とそうでない対象群に分けること、そして過去に遡って調査することがコホート研究と異なる点です。コホート研究はまだ何も起きていない(病気になっていない)集団を、健康を害するかもしれない要因で分けて将来どうなるかをみていく前向き研究です。対して症例対照研究は既に起きたことを原因を追究するためにその過去を調べます。そのため後ろ向き研究と言われています。

コホート研究よりも調査しやすいのです。

 

横断研究

特定の対象に対して、評価や介入効果などをある一時点において測定し検討を行う研究です。特徴はコホート研究のように将来にわたって調査や、症例対照研究のように過去に遡って調査をしたりしないこと。時間的にある部分を切り取って調査を行います。コホート研究や症例対照研究が動画だとすると横断研究は写真のようなものになります。

時間的・経費的な効率が良く、いくつかの要因に着目して比較できる。また様々な要因を一度に測定し検討できるメリットがあります。しかしバイアスの影響が入りやすく、本当にそれが原因なのか明確にできないなどの欠点が挙げられます。

 

②介入研究

これは研究するために研究対象者に何かしらの介入を行って研究する方法です。観察研究との違いは研究側からの介入の有無にあります。実験研究になります。実験対象を介入を加える“介入群”と介入を加えない“対照群”に分けてそのデータを比較し、介入の効果を検討するものです。NRCTRCTがあります。

 

NRCT

Non Randomized Controlled Trial:非無作為(ランダム)化比較試験のこと。介入を行う“介入群”とそうでない“対象群”(コントロール群)を比較するために実験を行う研究方法です。意図的に介入を加えて、その効果に違いがあるか比較検討するわけです。群を分ける際に研究者が意図的分けることがRCTと異なるところ。

 

介入群と対象群は介入の有無以外は同じ条件に設定できれば、バイアスが少ない研究になり得るのです。私も含めて、教員養成科で行わる実験研究の多くはこれに該当します。あはきの分野で比較的研究しやすい研究デザインとなります。その理由として研究者は介入を加えている(施術をする)自覚を、被験者は介入されている(施術を受けている)実感を消すことがほぼ不可能であり、介入群と対象群を当人の自覚抜きに分けることができないからです。何が言いたいかというと次のRCTに関わることです。

 

RCT

無作為(ランダム化)化比較試験:Randomized Controlled Trialのこと。介入を加えること以外は公平となるように対象を無作為(ランダム)に“介入群”と“対照群”に分けて実験を行い、その影響を分析する研究方法です。この場合の無作為とは、人間(研究者及び被験者)の意思が反映されないという意味であり、群を分ける場合は乱数表やくじなどを用います。被験者は自分が介入を受けるのか否かを知らされません。また介入を加える研究者も自ら介入をしているのかどうか分かりません。

 

具体例にいうと、ある被験者群を乱数表を用いて介入群と対照群にあらかじめ分けます。被験者当人はどちらに分けられたか分かりません。介入群には薬を、対照群には薬に似せた無害のもの(ブドウ糖など)を投与します。投与する研究者もその薬が本物か偽物か知りません(見た目で判断できないように作ってある)。このような条件での実験研究です。

NRCTの違いはもちろん無作為に群を選びそれが当事者も知らないということ。薬を飲んだから効くに違いないというプラセボ効果を消すために行います。

 

③データ統合型研究

これは複数の研究データを統合して分析する研究方法です。きちんと精査された研究データを複数持ちより分析します。その手法はメタ分析システマティックレビューがあります。

 

メタ分析

メタアナリシスとも言います。一定の基準を満たした質の高い臨床研究論文を集め、それらのデータを統合して統計学的に意味のある結果が得られているかどうか分析する過程のこと。

 

システマティックレビュー

ある課題やテーマに関して、一定の基準を満たした質の高い臨床研究論文を集め、それらのデータを統合してまとめた論文のこと。一定水準を越えた研究や論文を複数照らし合わせて研究することでより質の高いものになります。

 

どちらも元となる研究データが必要でありいわば集合知といえるでしょう。2つを比較すると

・メタ分析→データを統合して統計学的に意味のある結果が得られているかどうか分析する過程

・システマティックレビュー→ある課題やテーマに関して、質の高い臨床研究論文を集め、それらのデータを統合してまとめた論文

となります。システマティックレビューが統合された論文となり、その過程で各種データをまとめて解析するのがメタ分析。

 

 

これらの研究デザインにはエビデンスレベルがあります。つまりどれだけ信頼できる研究なのか、確かであるとされるのか。教員養成科で文研研究や症例報告より実験研究の方がいいと言われたのはこのエビデンスレベルによるものだったのでしょう。研究としてレベルが高いのは実験研究という意味で。

 

エビデンスレベルが高い順に下に向かって書いていくと

・メタ分析、システマティックレビュー

・RCT

・NRCT

・コホート研究、症例対照研究

・横断研究

・症例報告

となります。その下に「専門家の意見」や「臨床家の実感」、「長年の勘」などがあります。これらは研究に該当しません。

 

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院 研究デザインによるエビデンスレベル
研究デザインによるエビデンスレベル

 

 

 

今回学生向けセミナーを開催するにあたって研究デザインについて知ることができました。元々調べる予定ではなかった項目でした。研究の仕方を理解することで論文、記事、データなどを読んだときに解析度が変わることでしょう。よい副産物だったと思います。

 

甲野 功

 

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