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これからの世界はどうなっていくでしょうか。一つの意志を述べている人がいます。山口周氏。
彼の著書「NEWTYPE ニュータイプの時代」に続いてこちらも読みました。
<ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す 山口周 プレジデント社>
どちらも参考にさせてもらっています。
書いてある内容全てに納得しているわけではありませんが、確かに今の社会を鋭く指摘しこれからの姿を提案していると思います。
前作「ニュータイプの時代」からそうですが山口氏の主張は、
現在多くの問題は解決されて問題自体が枯渇している状況、
”高原社会”と称する人類史上初のユートピアに近づいている、
今後は大きな経済発展は見込めず文明的発展から文化的発展に移行しないといけない、
ということが述べられています。前作で特に私が注目したことが“価値がある、から、意味がある、への移行”というもの。飢餓、疾病といった有史以来苦しめられてきた問題を人類はほぼ解決し問題不足に陥った今価値がある(利便性を求める)ことは限界が生じており、意味がある(感情や情緒に訴える)ことが求められているというのです。具体例として山口氏は乗用車を挙げました。燃費のよい車は価値があるけれど価格は頭打ち。超高級車は確かに馬力がありますが公道で時速200kmなど出すことはできずそこまでの価値があるかは疑問でありますが、所有している・乗っていることに価値があります。高価格なのはもちろん後者です。
このように利便性を追求する文明的な発展は頭打ちで、もっと個人の情動に訴えた文化的な発展に世界はシフトしていくし、そうあるべきだと山口氏は主張していると感じました。多くのデータを提示し新型コロナと関係なく世界のGDPは右肩下がりで経済発展は衰退傾向にあると説明します。
私はそうは言っても世界にも日本にも問題は山積みであると感じていて、決して氏の表現する“解決する問題が枯渇した高原社会”とは思えません。解決していない大きな問題は経済合理性限界曲線の外側にあるということです。経済合理性限界曲線については話が逸れるので別の機会に触れることにします。
本書で私が最も納得できた部分は、世界を変えるのは個人の衝動ともいう行動だ、という点です。これは世界を変えよう、社会を良くしよう、といった崇高な理念よりも、個々人の湧き上がる情熱により行動した方が効果があるという話です。山口氏は世界に影響を及ぼすイノベーションを起こした人物を取材したところ、誰一人として世界を動かしてやろうと思った人はいなかったと本書で書いています。そんなことよりも、自分がこうしたいのだ!という衝動に駆られてやった結果に過ぎない、のだと。
私は確かにそのような気がしました。令和時代最初の大ヒットコンテンツといわれる『鬼滅の刃』。作者の吾峠呼世晴先生はとにかく自分の描きたいマンガを描いたのだと思うのです。心の片隅には売れたいという願いはあったでしょうし、少年ジャンプという商業誌で連載する以上売れなければいけません(編集部の課す水準は越えないといけません)。だからといってやりたいことを断念したことは決してなく、元となった作品からその方針は変わっていません。また主人公やメインキャラが修業するシーンが数多く描かれているのですが、編集者に本編と関係がないから省いたらどうかと言われるも「ひとは簡単に強くなりません」と修行シーンを省略しなかったといいます。『鬼滅の刃』はかなりテンポよく話が進む作品でこれまでのジャンプ作品ならば2倍くらい時間をかけてもおかしくないくらい早く物語が進みます。なので連載期間を延ばしたいというような意図は全くなく、必要だから描いたと思われます。
アニメから火がついた『鬼滅の刃』は大がいくつもつくヒットとなりまさに社会現象となりました。おそらく吾峠呼世晴先生はそれを狙ったとは思えません。未だに顔を公表せずメディアに出ることもほとんどなく、性別すらも非公開。お金が欲しかったらもっと連載を続けていたことでしょう。
個人の衝動が社会を動かす世界を変える。そこまで大きな話にならなくとも、大切なことは一人一人の情熱である。それが大事なのだと思いました。何より、他人を、社会を、世界を、変えようと考えること自体が愚かなこと。好きだからやるしかない、どうしてもやってします、寝食を忘れて没頭する、という情熱に駆られた行動でしか変わらないのでしょう。
過去と他人は変えられない、変えられるのは未来と自分だ。
ありきたりな言葉ですが真理でしょう。他人(社会)をどうこうできることはほとんどなく、自分を変えることが合理的な判断なのです。お笑い芸人(というよりもはや実業家の)キングコング西野氏は「業界を変えたいという若者の相談にまずあなたが圧倒的成功をおさめなさい、そうすれば勝手に業界が変わるから」というアドバイスを送りました。個人が圧倒的な存在になれば周りは無視できなくなり影響力を持つことになります。他力本願ではなく自らを変えろと。
山口氏は本書のタイトルに“エコノミーにヒューマニティを取り戻す”というサブタイトルを入れています。全編を通して、感情に素直にあれ、と言っている気がしました。自分自身がこうしたいといういわば損得勘定抜きの情熱が大きな力になるのだと。誰でもできること、面倒くさいことは今後どんどんAIや機械に置き換わっていくでしょう。ロボットになくて人間にあるものが人間性(ヒューマニティ)ですから。
好きで始めたこの仕事、立場。ちょっと惰性になってきたと反省しました。もっと情熱を持って取り組もうと考えるようになりました。
甲野 功
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