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~ゆ・め・“は”・か・な・う~

KAMINOGE121号表紙 玄文社
KAMINOGE121号表紙 玄文社

 

 

私が現在唯一定期購読している雑誌が『KAMINOGE』です。

 

これは主にプロレスラーや格闘家のインタビューを中心とした月刊誌です。『KAMINOGE』の名前は新日本プロレスの道場がある上野毛(かみのげ)が由来の一つ。また『紙のプロレス』という雑誌がかつて存在し、それが紆余曲折を経て『kamipro』となり休刊。その流れを継承した雑誌であるためアルファベットで記載されていると思われます。

『KAMINOGE』のベースはプロレス・格闘技に携わる人を取り上げるのですがそれ以外にも縁のある人、愛好家、単純に編集部が面白いと取り上げたい人も登場します。その人選とインタビュー内容、編集構成などが秀逸でずっと買い続けています。

 

創刊は10年前。創刊号の表紙は甲本ヒロト氏でした。最新号121号ではまた甲本ヒロト氏です。

 

甲本ヒロト氏。THE BLUE HEARTS(ブルーハーツ)のメンバーとして非常に有名なロックミュージシャンで現在はザ・クロマニヨンズとして活動しています。

甲本ヒロト氏のことはもちろん知ってはいますが、特に思い入れがあるわけではありません。私よりもう少し上の世代ではブルーハーツはカリスマバンドで信奉者が多いようですが。彼の記事も『KAMINOGE』以外で読んだことがありません。それくらいの距離感なのですが今号のインタビューは非常に感銘を受けました。

 

甲本ヒロト氏はこのように述べます。

「もしも 『生活のことがあるので夢をあきらめました』っていう人がいたとしたら、 あなたはもともと夢を見ていません。だってあきらめることができたじゃないか。どうしてもあきらめられないのが夢だから」

巻頭記事で最初のページにこのような見出しが躍っています。

 

夢について話す個所があります。

インタビュアーがこのように切り出します。

最後に、創刊号のときにヒロトさんが「夢はかならず叶う。100パーセント、誰の夢も叶います」ということをおっしゃっていたんですけど、そのときボクはなぜかスルーしちゃって、この10年ずっとその言葉が引っかかっていたんです。「どういう意味なんだろう」と。そうしたらこないだ別のメディアでその答えを話されているのを見つけて、「うわっ、そういうことか」ってなったんですよね。

 

夢は叶う。必ず叶う。誰の夢でも叶う。

一見無責任な文字通り夢物語のようなコメント。10年前のそれについて、甲本ヒロト氏にぶつけるのです。

 

甲本ヒロト氏は補足します。

ほう。ええっとね、「ゆ・め・は・か・な・う」って6文字あるじゃない?この中でもっとも重要な1文字があるんです。それは3番目です。

 

どういうことでしょうか。

これは言いかえると「夢だけは叶う」ということ。甲本ヒロト氏の言い分は、「夢は叶う」というのは、夢は叶うかもしれないがその代わり他のことはどうなるか定かではないということであり、救いのない話である。夢を叶えたから幸せかどうかは分からないし、夢が叶うことイコール幸せになるということでもない。そして冒頭の言葉に繋がります。夢とはどうしても諦めきれないもの、それが夢だから。だから夢“”叶う、だからといって幸せかは分からない。生活のために諦める夢はそもそも夢ではないのだよ、と。

 

甲本ヒロト氏はこのように言います。

「夢は」なんです。それをほんわか考えて、気分よくなっているのは夢見心地ってことで、夢見心地では夢は叶わないんです。「夢は叶う」って、カッコつけて言ってるんじゃないんだよ。褒められるもんでもないんだよ。とても殺伐とした気分でこの言葉をいつも吐いているんです(笑)。救いも何もないから。でも言い続ける。「夢は絶対に叶います」ってね。

 

正直、ロックとはどのようなものか分かりませんし知ろうともしませんでしたが、この夢は叶うに関する言葉は痺れました。こういうのがロックというのかなと。この巻頭記事を読んで初めて表紙の「ゆ・め・は・か・な・う」と平仮名6文字が書かれている意図を理解しました。

 

今年のあじさい鍼灸マッサージ治療院のテーマを「衝動を生む」にしましたが、それを決めるのにこの記事は大いに影響を受けました。

何となく実現したらいいかな(という夢見心地で)という願望は夢とは呼ばない(少なくとも甲本ヒロト氏は定義していない)。もう狂信的に夢中になって取り組むことが夢。だから誰でも必ず夢は叶う。そう夢“は”。夢をみるということは強い気持ち、情熱が必要であること。それが伴わなければ夢ではない。

肝に銘じて今年1年を過ごしていこうと思いました。

 

甲野 功

 

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