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先週末は連日、講義を行いました。主催した「鍼灸業界の広告事情」、灸法臨床研究会に依頼された「鍼灸院経営におけるSNSの活用」。どちらも共通することはネットに関係すること。今や広告と言えばインターネットが一番の媒体になりました。個人でもウェブ広告をうたないとしてもSNSへの投稿やホームページを作成(あるいは更新)することは鍼灸院を行うには必須といえるでしょう。
そのネットに関して数年前から厚生労働省が実施している施策があります。それは「医業等に係るウェブサイトの監視指導体制強化」です。正式名称だと堅苦しいのですが、ウェブサイトをしっかりとチェックしていこうということです。
以前にも書きましたが、かつては医療広告にホームページ(ウェブサイト)は該当しませんでした。
広告の定義は、
①誘因性(患者を誘因する意図があること)
②特定性(氏名・名称が特定可能であること)
③認知性(一般人が認知できる状態にあること)
の3つ全てを兼ね備えたものという判断でした。ホームページはアクセスしにいかないと閲覧できないので③認知性を満たさないということでホームページは医療広告に該当しないと。それが個人のアクセス履歴などからAIが判断し自動で表示されるウェブ広告が増えてきたこともあり、③認知性を除外し①誘因性と②特定性を満たせば広告に該当するものと変更。ホームページも医療広告であり規制対象になることになりました。
この「ウェブサイトの監視指導強化」を行う背景には、医療機関のホームページに起因する美容医療サービスに関する消費者トラブルが発生し続けており、2015年7月に消費者委員会より「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」がなされたことなども踏まえ、2017年度より医療機関ネットパトロールを実施することになったのです。医療機関ネットパトロールとはどのようなものでしょうか。
医療機関ネットパトロールとは医療機関のウェブサイトにうそや大げさな表示がないかどうかを監視する機能です。一般の人が違反の疑いがある、不適切な表示・表現がある医療関連のウェブサイトを見つけたら通報、情報提供を行えるサイトなのです。
この医療機関ネットパトロールというサイトが存在することを私はつい最近知りました。セミナーの準備をしているときに見つけ調べてみて、なかなか驚きました。
医療広告ガイドラインや景品表示法違反をはじめ、この新型コロナが始まってからより一層医療広告、特にホームページやウェブ広告を厳しく監視するようになったと認識していました。医療機関と言えば病院・クリニックといった医師が働く機関という認識で、このネットパトロールもそれらが対象だと思っていたのです。
ところがサイトの通報フォームをみるとカテゴリー・ジャンルには「整骨院・整体・鍼灸等」とあり、柔道整復師、鍼灸師などの施術所が含まれるだけでなく整体という(どこまで正確にこの言葉を把握しているのか定かではありませんが)医療系国家資格の有無を問わず通報できる仕様になっています。
注意:一般人向けのサイトであるため、あん摩マッサージ指圧師、理学療法士、整体師、カイロプラクティックなど区別なく(あるいは区別がよく分からない)、取り敢えず「整体」という言葉でまとめている可能性があります。カテゴリー・ジャンルは他に「医療機関(美容)」、「医療機関(歯科)」、「医療機関(ガン)」、「医療機関(医療その他)」とあり鍼灸院や整骨院は医療機関(医療その他)に入らないのか?という疑問も当事者としてはあるのですが、一般の方々向けに分類しているのだと私はみています。
更に媒体の種類も挙げており、「口コミサイト・ランキングサイト・まとめサイト等」、「ブログ・SNS」もカテゴリー・ジャンルの選択肢にあるため、医療機関や鍼灸院といった施設のホームページだけでなく口コミサイトやランキングサイトといった第三者のものやブログ、SNSといった個人が発信するものまで通報できるようになっています(通報してもいいですよと言っているに等しい)。
医療機関ネットパトロールはここまで範囲を広げて情報を得る(通報を受け付ける)姿勢があるのだと知りました。厚生労働省はネットパトロール事業について2回報告を出しています。新しい報告が以下にあります。
厚生労働省ホームページ ネットパトロール事業について(令和2年度)
ネットパトロール事業についてその内容が4項目挙げられています。
①広告等の監視
医業等に係るウェブサイトが医療広告規制等に違反していないかを監視
※医療広告規制等とは医療法、医療法施行令、医療法施行規則、医業、歯科医業若しくは助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項、医療広告ガイドライン
②規制の周知等
不適切な記載を認めた場合、当該医療機関等に対し規制を周知し、自主的な見直しを図る
③情報提供・指導等
改善が認められない医療機関を所管する自治体に情報提供を行う。(自治体は指導等を行う)
④追跡調査の実施
自治体に対する情報提供の後の改善状況等の調査を行う
かなり厳しく取り締まるという印象です。監視し、違反した場合規制があることを周知、指導を行う自治体に情報提供を行い、その後も追跡調査をするという。自治体代表・団体代表と厚生労働省で医療広告協議会を作り、その協議結果は必要に応じ厚生労働省から通知・事務連絡等によって全国の都道府県等に周知することにより、全国的な統一を図るといいます。
このネットパトロール事業により期待される効果として『ウェブサイトの監視指導体制の強化により、自由診療を提供する医療機関等のウェブサイトの適正化につなげ、消費者トラブルの減少を目指す。』としています。
報告資料にはネットパトロール事業の実績が掲載されています。2021年3月31日時点の通報受付状況です。
通報受付数は2017年度が1,612サイト、2018年度が8,358サイト、2019年度が10,300サイト、2020年度が9,472サイトでした。この通報されたサイトのうち医療広告関係の審査対象(重複除外後件数)となったのは2017年度が569サイト、2018年度が1,525サイト、2019年度が1,044サイト、2020年度が1,796サイトとなっています。
巷のサイトの数からすれば微々たるもののように感じますが審査対象としてしっかりとチェックすると考えれば2020年度で1,796サイトは相当な数だと感じます。また通報された医療広告以外のサイトは2020年度で1,566サイトにもなり幅広く通報されているように感じます。
そしてネットパトロール事業者からの注意喚起で改善に至らない場合は自治体へ情報提供を行っており、その数字も発表されています。自治体へ情報提供後の医療機関の対応状況は2021年3月31日時点で情報提供件数(サイト数)は合計341サイト。そのうち対応完了したものが178サイトで継続対応中が163サイトです。対応完了した178サイト中、改善されたのが163サイト、広告中止になったのが15サイトです。
この数が少ないととるか多いととるかは判断が難しいですが、ネットパトロール事業者の注意喚起が効果なく、自治体が介入した数となるとなかなかの数なのではないでしょうか。発表されている段階で15のサイトが広告中止ですから。資料にも『医療機関の対応までに期間を要する事案は存在するものの、多くは改善や広告中止等の対応が行われている』とあります。
このような医療機関ネットパトロール事業を厚生労働省が行っていることを初めて知りました。消費者庁ばかりが頑張っている印象があったのですが、厚生労働省も監視をしている。そしてその範囲は健康被害が起きうるものは全て、としていて病院・クリニックだけではない。やはり医療機関の自由診療にトラブルが多く、美容分野、歯科、がん治療、サプリメントといったところが挙げられていますがそれらだけではなく、私の関係する鍼灸などもチェックしていると思われます。当たり前のことですが誇大広告はいけません。政府は書いたもの勝ち、やったもの勝ち、みたいな状況を野放しにしていると思うこともありますが、私が知らない所で動いているものがある。そう感じました。
よい勉強になりました。今後3回目のネットパトロール事業報告が出たらまた内容をチェックします。
甲野 功
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