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~女性プロゲーマー契約解除にみる社会の陰陽転化~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 女性プロゲーマ―炎上
プロゲーマ―契約解除の報道

 

 

先月のことですが、このようなニュースを目にしました。

 

プロゲーマーたぬかな氏、所属チームとの契約を解除。配信中の身長に関する発言を受けて

 

知っている方もいるかと思います。どのようなことかと説明すると、女性プロゲーマー(プロゲーマーとはテレビゲームを競技にしたeスポーツにおけるプロ選手のこと)が2月15日に配信したストリーミング(配信)で「身長170cm以下の男性に人権ない」「骨延長の手術を検討しろ」などの発言をし、その内容が不適切であると所属チームやスポンサーが契約を解除したというものです。プロゲーマーというとピンとこないかもしれませんが、別に例えると、プロ野球選手が生配信で暴言を吐いて所属野球チームから契約解除をされたようなもの。チームを去るだけでなくCM契約をしていた企業からも解除されたという。

 

当事者の女性プロゲーマーは20代でeスポーツのトップ選手だそうです。もちろん実績を残しています。その女性がどのような経緯で発言したのかを調べてみると、自宅に頼んだUber Eatsの配達員が男性で荷物を受け取るときに連絡先を聞かれて怖かったので、そのエピソードを話しているうちにエスカレートしたということだそうです。20代の女性からすれば自宅が判明してしまった状況で男性に連絡先を教えてくれと言われたら確かに怖いでしょう。不快感から、その男性配達員の身長が低かったことにふれて「身長170cm以下の男性に人権ない」というコメントに繋がったようです。

 

この発言をそのまま受け取れば人権侵害となるでしょう。ところがゲーム業界の隠語(スラング)で「人権ない」というものがあるそうです。そこで言われる“人権”とは“ゲームで必要最小限として持っておきたいキャラクターや能力”という意味になるそうです。よって例の発言は「身長170cm以下の男性は私の好みではない」というニュアンスであろうという意見もありました。ただ実際の発言は続いており、文章におこすのも控えるような内容でありました。ヘイトスピーチだという意見もありました。更に「骨延長の手術」というあまり知られていない知識を出しているところをみると本気で低身長が嫌いなのかと伺えます。

骨延長手術とはイリザロフ法といわれるもので、足の骨を意図的に骨折させてすき間を作ります。骨折の治癒過程ですき間を再生した骨で埋まるので長くなり身長が高くなります。本来は骨腫瘍に用いられる術式です。医療関係者でないのに手術を知っていたことに個人的な驚きがありました

 

その後女性は自身のTwitterで「高身長が好きって言いたいだけでした」として弁明し、あくまで身内の空気感で言動が粗暴になってしまったことを認め、「ごめんなさい」と投稿しました。しかし批判は消えずこの投稿も削除してしまいます。

 

そして騒動を受けて、スポンサー契約していた企業から名前が消え、所属チームから契約解除が発表されたのでした。プロとしてとても重たい処遇です。本当にあっという間に(配信から数日間)決まりました。

 

この一連の騒動をみて社会環境の変化を東洋医学的に考えることになりました。

 

ヘイトスピーチ、人権を蔑ろにする行為はもちろんやってはいけません。問題発言だったことは紛れもない事実でしょう。ただ今回のニュースを知って私が感じた事は、ついに若い女性が加害者となり男性が被害者になるという図式が現れた、ということです。

 

昨年、東京オリンピックに関連して多くの失言、不適切発言による問題がありました。女性蔑視と思われる発言で役職を退いた人。過去のいじめを行っていたことやホロコーストをネタにした作品を作ったとして降板したさせられた人達。了承もなく金メダルを噛んだ人。女子ボクシングをバカにしていると受け取られる発言をした人。その全ては男性で年齢もある程度重ねていました。つまりオッサン。反対に、過去に若い男性選手に酔ってセクハラまがいの事をしたとされる女性大臣はそのまま要職を全うしました。男女の差を感じます。

それが今回の件は20代という(世間的にみれば)若い女性が相当な社会的制裁を受けましたこれまでは男性、それも特に中高年男性が対象になることばかりだったのに。そのような感想です。

 

件の発言を男女逆にしたとします。例えば、20代男性が配信で「バストDカップない女性は人権ない」「豊胸手術を検討しろ」と言ったとします(あくまで容姿に関することを置き換えた仮定です)。これはもう間違いなくダメでしょう。完全にセクハラ、女性差別と言われてしまうわけです。ところがこれまでは女性だとそうはならなかったよねという感覚が私にはありました。

正直な話、私は身長のコンプレックスが全くなく170cmないからそれがどうしたのという気持ちです。私は小学生でもう170cmあり、むしろ背が高すぎて女子から高すぎて気持ち悪いと陰で言われ嫌な気持ちをしていました。人からすれば贅沢な不満だと非難されるので黙っていましたが、幼少期はかなり気にしていていつも猫背で、なるべく身長を低く見せていました。

 

また私が思春期だった1990年代初めは女性が好む男性で「3高」なるものがありました。高学歴、高収入、高身長。つまり頭が良くて、お金が稼げて、背が高い(カッコいい)男性がいいという事です。テレビでも雑誌でも当たり前のように出てきて、今思うと男性を堂々と品定めしているわけです。そんな言葉に対してもほとんどの男性はなにくそと思い勉強するなり稼ぐなりシークレットブーツを買ったりぶら下ったり怪しいサプリメントを通販で買ったりして努力していました。

ですから私からすると低身長を言われて気になるという気持ちが分からない上に、言われても黙って違う面をアピールすればいいのではと思ってしまうのです。もちろんそう感じない方がいるからこのような騒動になったことは理解しています。

 

今回の件を取り上げたワイドショー番組でジャニーズ事務所のタレントが、「僕は公称身長170cmとしているのですが本当は168cmしかありません。ですからこの発言は傷つきます」という発言をしていました。このことについても私は驚きました。日本一の男性アイドルグループのジャニーズがこのような発言をするようになったとはと。この事務所には身長が高くない人気タレントが多いことは公然の事実。それを表に出さないようにしてきました。平成中期までだったらまずこのような発言はしなかったと思うのです。ファンの夢を守るために。おそらく身長が170cmない男性視聴者の気持ちを代弁する意図があったと想像できるのですが、時代が変わったと思いました。

 

人権に限らず権利を主張する場合、その多くは立場が弱い者がします。立場が強ければ押し通せるわけで、そうでない者のために基本的人権として法や社会通念などで守る必要があります。

今回の件は、もう若い女性プロゲーマーが一般男性よりも強くなったことを表しているのではないでしょうか。

昭和の中頃までは男女雇用機会均等法もなく、女性が社会で男性並みに収入を得て社会的地位を得ることはほとんど不可能でした。医師、弁護士、タレント、教師など限られた職種や世界でないと男性と同じ舞台で競うことはならなかったと言います。だからこそ女性の権利を守ろうという動きがずっとありました。特に先進国で日本は男尊女卑が激しいと言われてきました。

それが女性が男性の容姿(身長)を悪くいった発言により社会的制裁を受ける時代になったのだと。これも問題かもしれませんが、10年前なら「若い女の子の言ってたことくらい大目に見ろよ」「チビをバカにされたことを気にするなんて器が小さい男だな」「プロなんだから結果を出していればいいでしょ」といった意見で大事にならなかったのではないでしょうか。

 

企業も所属チームも世間的な風当たりを気にし、現金な話をすれば売上が落ちるから、契約解除に至った事情はあるはずです。この発言に傷つき商品を買わなくなる消費者、応援しなくなるユーザーがいるから。厳重に注意して反省を促し一定期間謹慎させます、といった策も取れたはずなのに一発で契約解除までしてしまう時代になったのだと。相対的に女性が社会的に強くなったと言えますし、相対的に男性が弱くなったとも言えると思うのです

 

この社会的変化を東洋医学の基本である陰陽論で考えると、陰陽転化というものに一致すると考えました。万物は陰と陽に分けられるという考えが陰陽論です。陰陽論では男性が陽、女性が陰になります。ただし陰陽の関係は相対的で男性の中にも陰陽がありますし、陰と陽のバランスが変わることもあります。陰陽転化とは陰陽のバランスが逆転する状態です。陰極まれば陽となす、という言葉があり陰が陽に置き換わることがあるのです。

 

長らく男性優位社会だった日本でもどんどん女性の社会進出がおき、段々と要職に女性が就くようになってきました。世界的に見れば政治も企業も重要ポストに就く女性は非常に少ないでしょうが確実に増えています。また男性も、家事育児は妻に任せて一切しないという考えはもう皆無でやるのが当たり前になっています。女子学生が就職するのが当たり前になったように。

そしてもう女性の方が男性よりも立場が上で、女性がハラスメント加害者に男性が被害者になる、という事態が現実になってきました。前々から気にしていましたが、今回の女性プロゲーマー騒動ははっきりと顕在化したような気がしました。

 

男女の社会的環境における陰陽転化。そのようなことを考えてしまうのでした。

 

甲野 功

 

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