開院時間
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支持基底面という言葉をご存知でしょうか?支持基底面とは体重を支えるために必要な床面積のことです。どういうことかというと、床に接する足の裏部分を外周としたそれらに囲まれた面になります。
(※凸凹した床だと条件が変わるので、ここでは水平な一様な固い床に立っているということにします。)
具体的に言うと両足を揃えて立っているときは左右の足の裏で床に接している部分によって囲まれた面です。踵から足の指まで床に触れている部分があれば全て。かつそこに囲まれた面も支持基底面に入るので床に触れていない土踏まずの部分も支持基底面の中に入ります。
もしも足の指を反らせて床から離れているとしたら支持基底面の面積は狭くなります。
よって、足を広げて立てば支持基底面の面積は大きくなります。それは床に触れている部分を外周とするためです。左右に足を広げれば広げるほど支持基底面の面積は広くなります。
同じように前後に足を広げた場合も支持基底面は広がります。ただし平均台の上を歩くように左右の足が一直線上に出る場合と斜め前に出す場合では支持基底面の面積は違いが出ます。例え同じ分だけ足を出したとしても一直線上に出した方が斜め前に出したときよりも支持基底面の面積は狭くなります。
もしも片足で立ったとしたら支持基底面は立っている足の裏分しかないので両足で立つときよりも狭くなります。
両足で立っていたとしてもつま先立ちをすれば踵側の足の裏が床に接触していないので支持基底面の面積はつま先立ちをしないときよりも狭くなります。
そして片足でつま先立ちをしたら支持基底面の面積はより狭くなります。
当然ジャンプしている瞬間、雲梯などにぶら下がって足が地面についていないとき、支持基底面はゼロになります。
この支持基底面の中に重心があるとき人は立っていることができるのです。
話を簡単にするために姿勢の良い立位の条件で考えてみましょう。
重心とは正確には身体重心で第2仙椎の少し前、成人であれば地面から身長の55%くらいの高さにある(便宜上の)点のことです。骨盤の中にあり、武道の世界では丹田と言われたりします。この重心を真下に下げた位置、重心線が地面に通るところが支持基底面の中にあるとき立っていられます。言い換えると支持基底面外に重心があれば立っていられません。
支持基底面が狭くなればなるほど立ちづらくなります。両足を広げて立っている方が足を揃えているときより立ちやすいです。普通の状況では差がわからないかもしれませんが、揺れる電車の中ならば納得できるのではないでしょうか。立っている床が揺れるときは自然と足を広げて転ばないように耐えるでしょう。
つま先立ちになればより立っているのが困難になります。それは支持基底面が狭くなるので重心を支持基底面内に保つことが難しくなるからです。
転ばぬ先の杖、という言葉がありますが杖を使うのは支持基底面を広くするためです。一本の杖を使う場合、杖が床に付いた部分と両足でできる範囲が支持基底面となります。当然ですが両手に杖を持った場合は2本の杖が付いている部分と両足なのでもっと支持基底面が広くなります。また杖が一本だけでも先が4つ足になっているタイプの杖であれば支持基底面がより広くなります。手押し車や歩行器になればもっと支持基底面は広くなるのです。転倒しないようにするために杖や手押し車などを用いるのは支持基底面をより広くして重心が逸脱しないようにするためです。
これらの理屈でいうと足が大きければ大きいほど立っていられると言えます。支持基底面は(地面に触れている)足の大きさに比例して広くなるからです。立っている状態を保つのであれば足が大きい方が有利でしょう。
重心を主体に考えると背が高い方が立っている状態を保つのは不利になります。背が高いということは(立位における)重心の位置も高いということ。地面から距離があればあるほど重心の揺れは大きくなります。地震が起きたときにビルの高層階の方が1階より揺れるのと同じ理屈です。
なお歩くという動作は重心をこの支持基底面から離れた状況にします。重心が支持基底面から外れることで体が倒れそうになり、それを一方の足で支えることで始まります。二足歩行はこの一連の動作になります。人間の赤ちゃんが這い這いをしているのは両手両足で広い支持基底面を保っている状況です。そこから立つには這い這いよりもずっと狭くなった支持基底面内に重心を入れた状態を保たないといけません。そのためには体の発達が必要です。立ってから歩くには更に重心のコントロールが必要になります。そこまで身体能力が発達するに数ヶ月から1年の時間を必要とします。この過程を人工的に再現まで人類は多大な時間がかかりました。二足歩行ロボットが開発されたのは原子爆弾の発明や月に到達することよりもずっと後のことでした。
支持基底面と重心の関係を理解すると歩行、ひいては運動を理解することに繋がります。
バランスが良いというのは(立位で動いている状況において)重心を支持基底面内に保つ能力が高いということです。バレリーナは片足でわずかな支持基底面の中に重心を入れて回転を繰り返すことができます。
足の大きさ大きい方がバランスを取りやすいわけです。
背が高い方が重心を支持基底面から外しやすいので大きく動くことが容易になります。
杖を床についたり、手で床を支えたりすることで支持基底面が広がるので倒れにくくなります。
この理屈を頭に入れておくとスポーツや歩行に対して理解が深まるのではないでしょうか。私は特に競技ダンス選手が来院すると重心の位置がどのように移動あるいは保持しているのかを観察sるうようにしています。
甲野 功
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