～数字で見る２０２２年あん摩マッサージ指圧師国家試験～

 

 

今年２月末に行われた第３０回あん摩マッサージ指圧師国家試験が行われました。国家試験の結果がデータとして出たので昨年と同様に結果を見ていきたいと思います。

 

公益財団法人東洋療法研修試験財団ホームページ　ホーム > 国家試験の実施 > 過去の受験者数

 

こちらのデータから今年の３０回あん摩マッサージ指圧師国家試では受験者数1,278名、合格者数1,082名で合格率84.7％であることが分かります。

 

一覧にしてみましょう。

１回　　受験者数1,883名　合格者数1,726名　合格率91.7%

２回　　受験者数2,018名　合格者数1,713名　合格率84.9%

３回　　受験者数2,128名　合格者数1,849名　合格率86.9%

４回　　受験者数2,119名　合格者数1,880名　合格率88.7%

５回　　受験者数2,115名　合格者数1,877名　合格率88.7%

６回　　受験者数2,115名　合格者数1,867名　合格率88.3%

７回　　受験者数2,103名　合格者数1,902名　合格率90.4%

８回　　受験者数2,083名　合格者数1,841名　合格率88.4%

９回　　受験者数2,119名　合格者数1,855名　合格率87.5%

１０回　受験者数2,145名　合格者数1,796名　合格率83.7%

１１回　受験者数2,184名　合格者数1,903名　合格率87.1%

１２回　受験者数2,108名　合格者数1,767名　合格率83.8%

１３回　受験者数2,055名　合格者数1,750名　合格率85.2%

１４回　受験者数2,088名　合格者数1,781名　合格率85.3%

１５回　受験者数2,078名　合格者数1,774名　合格率85.4%

１６回　受験者数2,020名　合格者数1,772名　合格率87.7%

１７回　受験者数1,854名　合格者数1,565名　合格率84.4%

１８回　受験者数1,839名　合格者数1,563名　合格率85.0%

１９回　受験者数1,849名　合格者数1,609名　合格率87.0%

２０回　受験者数1,777名　合格者数1,495名　合格率84.1%

２１回　受験者数1,835名　合格者数1,584名　合格率86.3%

２２回　受験者数1,747名　合格者数1,466名　合格率83.9%

２３回　受験者数1,792名　合格者数1,549名　合格率86.4%

２４回　受験者数1,687名　合格者数1,422名　合格率84.3%

２５回　受験者数1,601名　合格者数1,354名　合格率84.6%

２６回　受験者数1,584名　合格者数1,315名　合格率83.0%

２７回　受験者数1,498名　合格者数1,300名　合格率86.8%

２８回　受験者数1,432名　合格者数1,213名　合格率84.7%

２９回　受験者数1,295名　合格者数1,089名　合格率84.1%

３０回　受験者数1,278名　合格者数1,082名　合格率84.7%

 

合計　　受験者数56,429名　合格者数48,659名　合格率86.2%

 

１回から今年３０回の受験者数、合格者数、合格率の推移をグラフ化してみましょう。

 

２４回以降見事に受験者数は右肩下がりとなっています。グラフでは受験者数を８００名以上にしていますから減少傾向が強調されていることはご了承ください。合格率もグラフにすると大きく変動をしているように見えますが概ね８０％半ばで推移しています。はり師、きゅう師、柔道整復師に比べて国家試験の合格率は高めに推移しています。これは、あん摩マッサージ指圧師は視覚障害者が受験するという事情が関係しているでしょう。古来より按摩師として視覚障害者の生業としてあり、近代になり国家資格にする際にマッサージと指圧を合わせてあん摩マッサージ指圧師として一つになった経緯があります。そのためあん摩マッサージ指圧師国家試験受験者には晴眼者（視覚障害のない健常者）と視覚障害者が受験していて一緒になっています。内訳をみてみましょう。

 

３０回あん摩マッサージ指圧師国家試験。

盲学校、視覚支援学校からの受験者

受験者数275名　合格者数181名　合格率65.8%

 

専門学校からの受験者

受験者数1,003名　合格者数901名　合格率89.8%

 

このような違いがあります。視覚障害者の受験者数は晴眼者に比べて数が少なくなっています。合格率も比較しても低く、今年新規のあん摩マッサージ指圧師なったのは181名。晴眼者の５分の１です。分かる範囲で視覚障害者の人数がどうなっているのか書いていきましょう。

 

盲学校、視覚支援学校

１７回　受験者数644名　合格者数409名

１８回　受験者数639名　合格者数424名

１９回　受験者数614名　合格者数430名

２０回　受験者数543名　合格者数430名

２１回　受験者数618名　合格者数433名

２２回　受験者数558名　合格者数369名

２３回　受験者数555名　合格者数391名

２４回　受験者数485名　合格者数307名

２５回　受験者数428名　合格者数275名

２６回　受験者数408名　合格者数252名

２７回　受験者数393名　合格者数282名

２８回　受験者数345名　合格者数235名

２９回　受験者数326名　合格者数230名

３０回　受験者数275名　合格者数181名

 

このように減少の一途をたどり１０年前の２０回に比べて半分の受験者数になっています。合格者も200名を割ってしまいました。これをどう考えるか。視覚障害者自体が減っているか、あん摩マッサージ指圧師以外の道も進めるようになったのか。盲学校、視覚支援学校であん摩マッサージ指圧師になるための教育が実施されているのは社会福祉、職業訓練の意味合いが強くなります。かつては視覚障害者をしめす言葉として「あんま」が使われていました。今は差別用語として認識されていますが。受験者数の減少は何を示すのか計りかねます。

 

対して晴眼者、つまり専門学校の受験者数をみてみましょう。当然専門学校の受験者は自らあん摩マッサージ指圧師を目指した人数です。多くの専門学校は鍼灸と併設にしているので鍼灸師をとる上で副次的に取得するケースも多いはずですが。

 

専門学校

１７回　受験者数1,210名　合格者数1,156名

１８回　受験者数1,200名　合格者数1,139名

１９回　受験者数1,235名　合格者数1,179名

２０回　受験者数1,234名　合格者数1,155名

２１回　受験者数1,217名　合格者数1,151名

２２回　受験者数1,189名　合格者数1,097名

２３回　受験者数1,237名　合格者数1,158名

２４回　受験者数1,204名　合格者数1,115名

２５回　受験者数1,175名　合格者数1,079名

２６回　受験者数1,179名　合格者数1,063名

２７回　受験者数1,105名　合格者数1,018名

２８回　受験者数1,087名　合格者数980名

２９回　受験者数924名　　合格者数819名

３０回　受験者数1,003名　合格者数901名

 

こちらもじわじわと受験者数を減らしており、コロナ禍後初の国家試験となった２９回では1000名を切りましたが今年３０回で増加してまた1000名を上回りました。今年最高裁判決が出て、あん摩マッサージ指圧師専門学校の新設解禁にはなりませんでした。つまり定数上限が決まっている状況で受験者数が減っていることは大きなポイントです。状況としてはあん摩マッサージ指圧師免許を持たずにいわゆるマッサージ行為を勝手に行っていることが影響しているものと当事者としては感じています。

 

とかく専門学校などは合格率を強調しますが受験者数はより重要だと考えています。受験者数はその資格に対する期待、人気であると言えるからです。そして受験するためには最低３年間の時間と授業料が必要です。専門学校は決して安い金額ではありません。そのハードルを越えて国家試験受験までたどり着いた数です。受験者数の減少は資格そのものの衰退に繋がることでしょう。

さて来年は３１回。入学時点で緊急事態宣言が出ていた最もコロナ禍の影響を受けた世代はどうなるでしょうか。

 

甲野　功

 

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